OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

リック・ネルソンはカントリーロッカー

2012-06-05 15:28:24 | Rock

思い出のガーデン・パーティー / Rick Nelson (Decca / ビクター音楽産業)

1970年代ロック主流のひとつだった所謂ウエストコーストロックは、その本質における前段としてのカントリーロックが大きな要素となっていた点について、今更サイケおやじが稚拙な筆を弄するまでもないと思います。

しかし、その流れがすんなりと受け入れられていたかについては、諸説あるんじゃ~ないでしょうか?

例えば本日の主役たるリック・ネルソンは、リッキー・ネルソンと名乗っていた子役時代からアイドル歌手としてトップの存在だった1960年代前半まで、両親が共に芸能人だったこともあり、如何にも「七光り」が強い評価だったようです。

しかし本人の生真面目さは相当だったようで、今ではオールディズの範疇で楽しまれる当時のヒット曲の数々にしても、バックを務めていたジェームス・バートン(g)、ジョー・オズボーン(b)、ジミー・ハスケル(arr) 等々の超一流ミュージシャンと作り上げたレコードは謹聴する値が絶対的!

なにしろそこには既に後年のカントリーロックの萌芽がきっちりあって、しかもリック・ネルソンと改名していたとはいえ、決してアイドル歌手の産業ポップスとは言えないほどの充実度が高いんですねぇ~♪

例えば有名なところだけでも「Travelin' Man」「Hello Mary Lou」「Poor Little Fool」「Stood Up」「I'm Walkin'」「A Teenager's Romance」「Be Bop Baby」「Believe What You Say」「Never Be Anyone Else But You」等々、アイドルとしての本質的甘さの含んだ歌唱があればこそ、そこには過言ではなく、有能なバックミュージシャンとのコラポレーションが成立しています。

しかし時の流れは非情であって、リック・ネルソンもリアルタイムのアメリカの歌手同様、ビートルズの登場によって人気を失い……。

というあたりまでが、良く知られているリック・ネルソンの物語でしょう。

ところが本当に知れば知るほど深くなってくるのが、その落ち目の時期の活動で、実は告白すると、サイケおやじがリック・ネルソンに興味を抱いたのは、掲載したシングル盤A面曲「思い出のガーデン・パーティー / Garden Party」がヒットした1972年以降の事であり、既に述べた様なカントリーロック保守本流の味わいが色濃い歌と演奏からは、そのあたりの状況がジワジワと感じられたのです。

そこで遡ってリッキー・ネルソン時代をも包括したベスト盤を聞いてみると、前述した代表曲の他にも、まさにルーツ・オブ・カントリーロックがぎっしり!?!

また、もうひとつ告白しておけば、ちょうどサイケおやじの周囲に時代の巡り合わせが良かったというか、例のエルヴィス・プレスリーのライプ映画「エルヴィス・オン・ステージ」で強烈なエレキギターを堪能させてくれたジェームス・バートンが、実はリック・ネルソンのバックでも既にロックギターの基本とも言うべきスタイルを確立させていたという真実に触れた事が大きく、実はその偉人ギタリストの功績を知った相乗効果もありました。

さらに加えて、やはりこの「思い出のガーデン・パーティー / Garden Party」がヒットした同時期には、後のウエストコーストロックの代名詞的グループとなるイーグルスがデビューしており、そのオリジナルメンバーだったランディ・マイズナー(b,vo) が同様にカントリーロックの始祖的バンドだったポコからイーグルスへ至る過程に、なんとっ! リック・ネルソンが率いるストーン・キャニオン・バンドのリーダー格であったという衝撃(?)の事実!

そんなこんながゴッタ煮的な情報となって、尚更サイケおやじは当時興味を抱きはじめていたリック・ネルソンという歌手の深みにどっぷりになっていったんですねぇ~~♪

ただし、その頃の我国ではリック・ネルソンのレコードにしても、前述したベスト盤だって輸入の中古でやっと買えるほどの冷遇でしたし、結果的に日本では小ヒットに留まった「思い出のガーデン・パーティー / Garden Party」が入った同名LPも決して売れていたとは言えません。

ですから、リック・ネルソンが本国アメリカで出していたオリジナルアルバムを聴くには、なかなか時間が必要であり、しかしそれゆえに地道に接触して行った一連の作品には愛着があります。

そして親しむほどに、実は落目の1965年以降に制作発売されていたレコードには早すぎたカントリー&ウエストコーストロック風味が満点で、特に「カントリー・フォーエヴァー」や「ブライトライツ&カントリーミュージック」の2枚のLPが秀逸の極み♪♪~♪ バックで快演を披露するのは後にバーズに入り、これまた元祖カントリーロックの名盤「ロデオの恋人」等々で活躍するクラレンス・ホワイト(g) だった事も因縁を感じます。

今となっては、そのあたりの復刻状況がどうなっているのか不明ですが、機会があれば、ぜひとも楽しんでいただきたいのが、カントリーロック期のリック・ネルソンなのです。

ちなみにここで「カントリーロック期」と書いたのは、やはりリック・ネルソンにしても、1960年代末頃には流行のサイケデリック&ソフトロックに手を出していた現実があるからで、それはそれで悪く無いことも確かなんですよ……。

しかし、それでも本人の資質はやっぱりカントリーロックにある事は明白であって、とにかく久々のヒットになった「思い出のガーデン・パーティー / Garden Party」の穏やかな曲調と爽やかなハーモニー、些か意味不明の歌詞が???ではありますが、相反するような深みのある演奏とハートウォームな全篇の雰囲気の良さは最高♪♪~♪

ところが好事魔多しというか、この後にはさらに流行を率先するようにシンガーソングライター的な活動を開始するのですが、時代は同じくオールディズのリバイバルがブームとなり、そんな懐メロショウに出演を要請された本人が昔の歌よりも、現在の新曲をやっては浮いてしまったという悲惨(?)は哀しい現実だったようです。

そして1985年の大晦日、巡業中の飛行機事故により、リック・ネルソンはスタッフや友人と一緒に突然の悲報……。

う~ん、本当にせつないものを感じてしまいます。

最後になりましたが、1990年代前半にちょいと人気があったアイドルグループのネルソンは、リック・ネルソンの遺児となった双子の兄弟がメインのハードロックバンドで、その音楽性はハードロックとカントリーロックの巧みな折衷スタイル!?

サイケおやじは、そう思うことによって、リック・ネルソンの意思の継承を確認しているのでした。

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