■昭和ブルース / 天知茂 (ポリドール)
昨夜は忘年会でしたが、案の定、ここ数年来の仕来り(?)どうりに気勢もあがらず……。いけないとわかっていても、皆が愚痴のこぼし合いに終始する展開は情けなかったです。
まあ、こんな状況は何処も同じなんでしょうかねぇ~。
しかし同じ店に集っていた公務員さん達の宴会は、減額どころか増額となったボーナスの所為もあるんでしょうが、なかなか和やかに盛り上がっていましたから、自分達の置かれた立場をどうこう言うのは、単なる僻みと自覚するわけですが……。
で、そんな感じですから、カラオケ歌うにしても、ついついサイケおやじは本日ご紹介の「昭和ブルース」を選んでしまいましたよ。
うまれた時が 悪いのか
それとも俺が 悪いのか
何もしないで 生きてゆくなら
それはたやすい ことだけど
なぁ~んて、虚無の姿勢を綴った歌詞は、これがなかなか逆説的に「昭和」という「良い時代」を表わしていると思いますし、「何もしないで たやすく 生きていける」なんて事は、今の若い皆様からすれば噴飯物でしょう!
とても「ブルース」という嘆き節には似つかわしくないんですが、そうした山上路夫の作詞は既に述べたように逆説の極北であって、佐藤勝のマイナー調モロ出しの暗いメロディーがつけられているのは、そのあたりを汲み取った確信犯的意図でしょう。
ちなみに最初に「昭和ブルース」が流行ったのは昭和44(1969)年という昭和元禄ど真ん中の頃、ブルーベルシンガーズと名乗る歌謡フォーク系のコーラスグループが歌っていたものですが、昭和48(1973)年にスタートした天知茂主演のテレビサスペンスドラマ「非情のライセンス(NET)」の主題歌として本人が歌ったバージョンが、今となっては有名かもしれません。
本日掲載したシングル盤は、まさにそれなんですが、様々な社会的不条理を堂々と真正面から活写した「非情のライセンス」という刑事物ストーリーは、ハードボイルド作品特有の哀切感とエグ味の強い演出が冴えまくりでしたから、こうした繁栄の中の虚無を歌った「昭和ブルース」はジャストミートでした。
もちろん主人公・会田刑事の型破りなアクの強さを表出したキャラクター造形は、天知茂以外に演じられる役者は存在せず、もうひとつの当たりとなった「江戸川乱歩の美女シリーズ」における明智小五郎役共々、忘れられないという皆様も大勢いらっしゃるはずです。
ということで、結局はどんな時代でも、そこで満足出来ないのは「俺がわるい」という一言なのでしょうか……。
その意味で「昭和ブルース」は、まさに時代を超えて歌われる名曲なのかもしれませんし、現在の閉塞した社会状況からみれば狂騒的に盛り上がっていた「昭和」を懐かしむ事も含めて、少しでも前を向いていたいという気持の表れから、これを歌う事は許容されるものと思います。
バカばっかりやっている永田町の先生方の忘年会では、何が歌われるのか知る由もありませんが、翻って「昭和ブルース」を歌っている庶民が確かにいる事は覚えていてほしいものです。