■The Captain And Me / The Doobie Brothers (Warner Bros.)
1973年春に発売されたドゥーピー・ブラザーズの3枚目のアルバムは、グループの人気を確立させた人気盤にして、初期の代表作!
ダブルドラムスとツインギターによる豪快なドライヴ感、爽やかなコーラス、そしてキャッチーな曲メロと和みのフォークパラードの混在は、まさにウエストコーストロックのひとつの典型♪♪~♪
というのが今では常識になっているのですが……。
しかし天の邪鬼なサイケおやじには、ちょいと歯がゆい1枚でした。
A-1 Natural Thing
A-2 Long Train Running
A-3 China Grove
A-4 Dark Eyed Cajun Woman
A-5 Clear As The Driven Snow
B-1 Without You
B-2 South City Midnight Lady
B-3 Evil Woman
B-4 Busted Down Around O'connelly
B-5 Ukiah
B-6 The Captain And Me
まず、なんといっても「Long Train Running」と「China Grove」という決定的な大ヒット曲の存在感が圧倒的! 他にも「China Grove part 2」的な「Without You」やストリングスまで入れたベタベタのブルースロックっぽい「Dark Eyed Cajun Woman」あたりは、まさに当時の王道を行く痛快さに満ちています。
と、同時に魅力的なのが、ドゥーピー・ブラザーズの個性を特徴づけるコーラスワークを活かしたアコースティック系の楽曲で、恐らくは変則チューニングを用いたギターワークが印象的な「Clear As The Driven Snow」、とろけるような刹那の中庸性がニクイばかりの「South City Midnight Lady」は、このバンドの永劫性を示しているように思います。
当時のメンバーは前作同様、トム・ジョンストン(vo,g)、パット・シモンズ(vo,g)、タイラン・ポーター(b,vo)、ジョン・ハートマン(ds,per,vo)、マイケル・ボザック(ds,per,vo) という5人組でしたが、あきらかにR&Bやハードロックにルーツを持つトム・ジョンストンが全面に出ることが多くなっています。
それは、一方の主役としてフォークやブルースに拘りを持つパット・シモンズが作った「Evil Woman」を、矢鱈にハードな方向で処理したというあたりにも表れている気がするのですが、前述した「Clear As The Driven Snow」と「South City Midnight Lady」がパット・シモンズのオリジナルだったことを思えば、複雑な心境です。
そしてそんなミスマッチ感覚の突出は、リトル・フィートから助っ人参加したビル・ペインのシンセサイザーに導かれたA面ド頭の「Natural Thing」、さらにオーラスにしては煮え切らないアルバムタイトル曲の「The Captain And Me」じゃないでしょうか?
だいたいA面トップは絶対に痛快なギターカッティング冴えまくりの「China Grove」が常道でしょう。
まあ、このあたりは如何にも保守的なサイケおやじだけの気分かもしれませんが、後の産業ロックの臭いさえ感じる「Natural Thing」が初っ端に置かれている所為で、ど~してもこのアルバムA面の流れに馴染めないのが本音です。
そしてついに「China Grove」をトップに置き、「Natural Thing」から「Long Train Running」へと続く流れを「Clear As The Driven Snow」の後に入れるという我儘編集のカセットを作り、楽しんでいたのですねぇ~♪
まあ、当時は曲順プログラムを簡単に操作出来るCDなんてものはありませんでしたし、それゆえに今でも耳には自作カセットの流れが染み込んでいるわけですが、そんな不遜なことをやってしまうほど、各々の楽曲の完成度は高いのです。
もちろんお好みのベストカセットを作る時には、このアルバムからの選曲が一番多かったんですよっ!
時代は既にLPで音楽を楽しむのが主流となり、シングルヒットはそのきっかけの一助に過ぎないという風潮が強くなっていましたから、そこにリスナー其々の思惑が入り込むのは当然の帰結だとしても、アルバム丸ごとが最高っ! なんていう名盤に出会うことは稀でした。
その中で、この「キャプテン・アンド・ミー」は九分九厘まで完成度が高かったと思いますし、実際、良く売れたはずです。
実は前述した我儘自作カセットの曲順だと、B面のトップがこれまた強烈なギターカッティングをウリにした「Without You」ということで、レコードをひっくり返して針を落とすという儀式の意味合いが薄れる危惧が確かにあります。
そのあたりを練りに練った結果が、このアルバムの曲順構成なんでしょうが、そこにLP単位で音楽を楽しむ時代の難問が潜んでいるんでしょうねぇ……。ちなみにアルバムのプロデュースは当時のバーバンク~ワーナー系列で幾多の注目作に携わっていたテッド・テンプルマンでした。
ということで、まちがいなくドゥービー・ブラザーズの代表作だと思いますが、以降の活動も鑑みて、このバンドには常にアルバムの絶対的な完成度がイマイチの不足を感じてしまいます。
それゆえに自選ベストカセットの需要やコンサートライプの盛況があって、つまりは全ての作品を揃えたくなるバンドなんですねぇ。
そんなところが憎たらしくなるほどなんですが、さりとて以前に出たボックス物は、さらに物足りないという罪作り……。
いやはや、なんとも我儘を言いたくなるのですが、それだけドゥービー・ブラザーズは魅力の存在なのでした。