OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ソニー・レッドに片思い

2008-09-12 16:50:54 | Jazz

今日は出かけた先で局地的な集中豪雨! 全然、車が動かない渋滞に巻き込まれましたが、こんな時こそ車中でジャズ三昧をきめこみました。そこで聴いたのが――

Images / Sonny Red (Jazzland)

ソニー・レッドはチャーリー・パーカー直径のアルトサックス奏者で、知名度は決して高くありませんが、なかなか味わい深い存在だと思います。というよりも、こういう人がいるからこそ、モダンジャズ全盛期は深いということでしょう。実際、このあたりのポジションには隠れた人気盤やシブイ好盤がどっさりあって、ジャズ者を一喜一憂させるのです。

さて、このアルバムは、ちょっと知的な雰囲気も漂うデザインも印象的で、録音は1961年6月(A面)と12月(B面)、それゆえにメンバーも異なりますが、なかなか豪華な面々が参加しています。

まず6月のセッションは、ソニー・レッド(as) 以下、ブルー・ミッチェル(tp)、バリー・ハリス(p)、ジョージ・タッカー(b)、レックス・ハンフリーズ(ds) というバリバリのハードバッパーが集合し、息の合ったところを聞かせてくれます――

A-1 Images
 ソニー・レッドが書いたアルバムタイトル曲で、おぉ、これは有名スタンダード「Speak Low」のモード的展開というか、クールで熱い、カッコイイ演奏です。ジョージ・タッカーの淡々としたベースもエグイ存在感を示していますねぇ。
 アドリブに入っては先発のブルー・ミッチェルが戸惑いながらも「らしい」フレーズを聞かせてくれますし、バリー・ハリスは何を弾かせても全く上手く、ここではパド・パウエルがモードを演じたら!? という回答のひとつを披露しています。
 そして満を持して登場するソニー・レッドが、細い音色に静かな闘志を秘めて聞かせるアドリブは決して饒舌ではありませんが、新しい時代のジャズを演じているという自負が感じられます。それが例え、無理な背伸びだとしても、私には憎むことが出来ません。
 レックス・ハンフリーズのリムショットも、基本に忠実なモード演奏の手本という感じです。

A-2 Blues For Donna
 前曲とは一転、正統派ビバップの再現を狙った素直な演奏で、これこそがソニー・レッドの資質にはジャストミート! あぁ、この幾何学的なテーマメロディとテンションの高い4ビートの魅力♪ これがモダンジャズの基本という味わいが魅力です。
 もちろんソニー・レッドは本家チャーリー・パーカーのアドリブフレーズを借用しまくっていますが、ここまで徹底してくれると逆に潔い感じです。
 またブルー・ミッチェルは十八番の分かり易いアドリブフレーズ、バリー・ハリスは自然体でビバップの真髄を追求していきますが、ジョージ・タッカーだけがひとり、強靭過ぎるベースワークでファンキー&ハードバップに拘っているのが味わい深いと思います。

A-3 Dodes City
 これまたビバップ~ファンキー路線の演奏で、ソニー・レッドのオリジナルとされていますが、どっかで聴いたことがあるような……。
 まあ、それはそれとして、ソニー・レッドが生真面目にビバップを演じれば、ブルー・ミッチェルはリラックスして安直なフレーズに独特の味わいを滲ませているようです。
 そしてバリー・ハリスが素晴らしい快演! まさにこれがビバップだっ! と強烈な自己主張もありながら、実はソフトなスイング感もたまらないのでした。

さて、続く12月のセッションは、ドラムスがジミー・コブに交代し、さらにグラント・グリーン(g) が参加するという嬉しい顔ぶれになっています――

B-1 Blue Sonny
 ジョージ・タッカーの強靭なベースに導かれて始まる、スローテンポで蠢くブルース演奏です。じっくり構えたバリー・ハリスのピアノも良い感じ♪
 そして基本に忠実というか、シンプルなフレーズを積み重ねながらも時折ヒステリックに泣くソニー・レッド♪ これがまた、たまらん味わいなんですねぇ~。決して超一流とは言えませんが、実に好感の持てるジャズメンだと思います。
 気になる特別参加のグラント・グリーンは十八番の展開とあって余裕のフレーズを連発していますが、録音技師がヴァン・ゲルダーではないので音色が一連のブルーノートの諸作とは異なり、ちょっと細い感じで、違和感が……。 

B-2 The Rhythm Thing
 アップテンポで爽快なハードバップ! 熱血に吹きまくるソニー・レッドは些か時代錯誤のビバップ野郎という感じですが、それこそが実は何時までも古びないモダンジャズの真髄という感じで好ましいです。
 続くグラント・グリーンもビバップ系のフレーズを出して珍しく、バリー・ハリスは得意の絶頂というノリが最高です。
 そしてクライマックスはソニー・レッド対ジミー・コブという定番ですが、流石はジミー・コブという瞬発力が強烈に熱いです。
 ビバップ、万歳っ!!!

B-3 Bewitched, Botherde And Bewilderde
 さてオーラスは、このアルバムで唯一のスタンダード曲の演奏で、これが素晴らしいかぎり♪ ソニー・レッドが素直な心情吐露で畢生の名演を聞かせてくれます。
 そこには決して複雑なフレーズも、また抜群のメロディフェイクもありませんが、その感情表現の切々とした部分に強く惹きつけられるという、まさにジャズ者だけが個人的事情で好きになる片思いみたいなものです。ジャズ的な純愛物語……♪

ということで、これも名盤ガイド本には載ることがないアルバムでしょう。しかしジャズ者にとっては至福の一時を約束される地味な傑作じゃないでしょうか。

ちなみに私有のアナログ盤はモノラル仕様ですが、どうしてもステレオミックスが聴きたくなった私はCDも買ってしまったほどで、そこでは左チャンネルに定位したジョージ・タッカーのペースが快感を呼びます♪ もろちんそれゆえに、車の中でも愛聴覚しているというわけです。

コメント
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