OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ローランド・カークと美しきエディス

2008-09-29 14:40:13 | Jazz

Now Pleade Don't You Cry, Beautiful Edith / Roland Kirk (Verve)

ただレコードを聴いているだけでは盲目というハンディを感じさせず、また複数管楽器同時吹きや息継ぎ無し吹奏という超人技を披露するローランド・カークは、その実演の場での独特の佇まいもあって、ちょっとキワモノ扱いされる事もしばしばですが、ジャズの伝統を大切にしながらも、その幅広い音楽性の虜になったが最後、全てを楽しまざるをえないのがジャズ者の習性じゃないでしょうか。

しかし今でこそローランド・カークの残した音源はほとんどがCD化されていますが、1980年代初め頃までの我が国では、中古盤屋の隠れ目玉商品として人気を集めていたのです。

さて、本日の1枚は、その中でも特に人気の高いアルバムで、録音は1967年5月2日、メンバーはローランド・カーク(ts,fl,manzello,stritch,vo)、ロニー・スミス(p)、ロナルド・ボイキンス(b)、グラディ・テイト(ds) という比較的オーソドックスな編成になっていますが、その演奏は多彩で楽しいものばかり♪ ちなみにプロデューサーが、あのクリード・テイラーというのもポイントでしょうか――

A-1 Blue Rol
 典型的なジャズブルースというスローでグルーヴィな演奏ですが、原盤解説にも記載されているように、ローランド・カークは複数管楽器同時吹きを駆使して、ひとりデューク・エリントン楽団の趣に挑戦しています。
 しかもそれが全く憎めないんですねぇ~♪ アドリブソロでも自らの信じるブルース魂を臆することなく披露し、特にテナーサックスのパートはジャズの伝統に敬意を表した流石の名演だと思います。

A-2 Alfie
 「アルフィ」という名曲にはバート・バカラックとソニー・ロリンズの、どちらもヒットした同名異曲があって、もちろん両方とも魅惑的なメロディを持っていますからジャズ者だって大好きという気持ちを見事にくすぐられた演奏です。
 つまり両方のメロディが楽しめるんですねぇ~~~♪
 それは甘さを含んだ正統派テナーサックスを見事に吹奏するローランド・カークの素晴らしさでもあります。3分に満たない短い演奏ですが、これが至福の一時として、永遠の和みになっています。
 最後まで敢然することのない名演! と、断言させて下さい。

A-3 Why Don't They Know
 これは楽しいボサノバのローランド・カーク的展開♪
 グラディ・テイトのドラミングも快適ですし、これも3分に満たない短さが勿体無いほど、何時までも聴いていたいですねぇ~♪

A-4 Silverlization
 一転して真摯なというか、当時最先端のブルーノートっぽいモード系の演奏です。しかしそこには如何にもローランド・カークというユーモア精神と軽妙洒脱な稚気が含まれていて、流石の味わい! テナーサックス以外にマンゼロやストリッチという特殊楽器でのアドリブパートも入れて、ひとり3管編成をやっているんですねぇ~♪
 ちっとも深刻にならない新主流派ジャズには、ニンマリさせられます。ちなみにリズム隊のパターンはホレス・シルバーのバンド!? すると曲タイトルも意味深ですが……?

B-1 Fallout
 さてさて、これまた楽しいジャズロックで、グラディ・テイトのドラミングが実にタイトにキマッています♪ もちろんローランド・カークのダーティで熱っぽい吹きまわし、ロニー・スミスの安全第一というピアノにはウキウキさせられますよっ♪

B-2 Now Pleade Don't You Cry, Beautiful Edith
 物悲しくも美しいメロディが心に沁みるローランド・カークのオリジナル曲で、しかも情熱と愛情の心情吐露は感動的でもあります。
 一説にはローランド・カークが妻(?)のエディスに捧げた曲とも言われているようですね。う~ん、さもありなん……。ジャケットに写っている女性が、その人なんでしょうか?
 共演のリズム隊も真摯で静謐なサポートを聞かせ、好感が持てます。
 
B-3 Stompin' Ground
 如何にもジャズという4ビートが、逆に新鮮な気持ちにさせてくれる名演です。つまり伝統と革新が上手く合致したというか、複数管楽器同時吹きの個性も決してキワモノではなく、ジャズの本質に迫らんとする手段にすぎない感じです。
 そして結果はもちろん見事なモダンジャズ! グラディ・テイトのドラムスも激しくスイングしまくったポリリズムで快調です。

B-4 It's A Grand Night For Swinging
 私はローランド・カークのフルートが大好きですが、それが存分に楽しめる快演です。唸り声を活かした楽しいフレーズと音色の妙、超絶のアドリブ構成、もちろんリズム感の良さも特筆すべきでしょう。
 リズム隊の緊張感もほどほどで、イヤミになっていません。

ということで、ローランド・カークの魅力が軽いタッチで楽しめる名盤だと思います。いや、というよりも、人気盤でしょうかねぇ、やっぱり♪

ローランド・カークというと、なんとなく構えて聴いてしまうところも否定出来ないのは認めますが、例えばこのアルバム中では「Alfie」や「Why Don't They Know」が喫茶店あたりで流れてきたら、これは気持ち良くて♪♪~♪

現在はCD化もされているようですから、容易に聴けると思います。シビレますよ♪

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする