OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

エバンス流ハードバップ

2007-08-14 19:53:35 | Weblog

今日も暑くて、ぐったりでした……。毎日、こんな話題しか出ませんねぇ……。

ということで、本日は名盤の中の大名盤を聴いてみました――

Interplay / Bill Evans (Riverside)

天才ベース奏者のスコット・ラファロを交通事故で失って後、やや行詰っていたビル・エバンスが敢然とハードバップに挑戦した名盤!

――と、まあ、今日的には、そう定義されるアルバムかもしれませんが、往年のジャズ喫茶では、このA面が良いか、あるいはB面が好きか? なんて論争もあったと言われる充実した作品です。

いずれにせよ、ロック系キーボード奏者にも、これが好きという人が多いですから、非常に影響力が大きい演奏集だと思われます。

録音は1962年7月16&17日、メンバーはフレディ・ハバード(tp)、ジム・ホール(g)、ビル・エバンス(p)、パーシー・ヒース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) というオールスタアズです――

A-1 You And The Night And The Music / あなたと夜と音楽と
 今やビル・エバンスの代名詞的なヒット曲ですが、もちろん素材はスタンダードですから、やっぱりビル・エバンスにはぴったりの選曲としか言えません。
 一応、我国でCMに使われたのはトリオ演奏のバージョンですが、ここではバリバリのハードバップが展開され、それが実に気持ちよい仕上がりになっています。
 そのキモは、ズパリ、フィリー・ジョーの弾みまくったドラミング♪ ちょっとイメージ的にはミスマッチかと思いきや、ビル・エバンスとの相性の良さには、心底、シビレてしまいます。
 それとアレンジが抜群です! ちょっと不安感が漂う思わせぶりのイントロから一転して痛快なテーマ演奏、そしてアドリブパートに受け渡される時のブレイクの仕掛けとか、もう最高ですねぇ~♪ もちろんアドリブ先発のビル・エバンスは緊張感溢れる展開で、甘さに流れていませんから、フレディ・ハバードも溌剌と吹きまくりです。
 それとジム・ホールが温もりの感じられる音色で厳しいフレーズを弾くという、なかなか新感覚のアドリブを聞かせてくれます。「間」の取り方も絶妙で、刺激的なドラミングのフィリー・ジョーを相手にしながら、非常にテンションの高い演奏だと思います。
 ラストテーマも爽快ですねぇ~~♪

A-2 When You Wish Upon A Star / 星に願いを
 これもビル・エバンスが演奏してくれるだけで幸せな気分になれるという有名スタンダード♪ ここでは絶妙なイントロから控えめなフレディ・ハバードとジム・ホールによってテーマメロディが奏でられるというニクイアレンジが、秀逸です。
 地味ながらビートの芯がしっかりしたフィリー・ジョーのドラムスとパーシー・ヒースのベースによるサポートも素晴らしく、ゆったりしたグルーヴの中で各人のアドリブが充実していくのでした。
 う~ん、やっぱりビル・エバンスが一番、夢見心地♪ 3分25秒目あたりからの十八番のフレーズには、ニヤリさせられてしまいます。

A-3 I'll Never Smile Again
 フィリー・ジョーの溌剌としたシンバルワークをイントロに、フレディ・ハバードがミュートで軽快にテーマを吹奏してくれますから、たまりません。マイルス・デイビスとは明らかに異なった個性が丸出しになっています。
 そしてアドリブパートでは、先発のジム・ホールが熱い歌心を披露すれば、フレディ・ハバードも歌心優先モードです。バックでカッコ良すぎる合の手を入れるビル・エバンスは、もちろんアドリブも素晴らし過ぎ♪
 またフィリー・ジョーのドラミングも最高ですねぇ~♪ 唯我独尊のパーシー・ヒースさえも、実は緻密な協調性に立脚した演奏をしているんでしょう。
 クライマックスではアドリブソロの交換が、実にスリリングに展開され、ひとつの方向に収斂していくというモダンジャズの黄金律が気持ち良いところです。

B-1 Interplay
 アルバムタイトル曲はビル・エバンスが書いたクールなブルース! ちょっと突き放したような雰囲気でありながら、実はミステリアスで、しかも人情が滲む名曲・名演だと思います。
 ちなみに、このテーマメロディはEL&Pのキース・エマーソンが大好きらしく、自分のキーボードソロには度々引用していますね。
 肝心のここでの演奏は、沈んだ雰囲気のテーマからジム・ホールが非常にテンションの高いアドリブを紡ぎだした畢生の出来栄え♪ じっくりと構えたパーシー・ヒースとフィリー・ジョーの伴奏も密度が濃くて、思わず惹きこまれてしまいます。
 またビル・エバンスが独自のノリでクールなアドリブに撤していく様は、マイルス・デイビスのバンドに在籍していた頃を彷彿させてくれますが、当時よりは尚一層、内側に向かった表現になっているようです。
 そしてフレディ・ハバードが、そのマイルス・デイビスに対抗したようなミュートプレイを披露すれば、パーシー・ヒースは落ち着いたベースソロで場を収めるという、適材適所の感覚が冴えているのでした。

B-2 You Go To My Head
 通常は緩やかなテンポで演奏されることが多いスタンダード曲ですが、ここでは勢いのあるハードバップ仕立てになっています。
 と言っても、決して暴走気味の演奏では無く、思索的なイントロからテーマメロディの小粋な変奏、そしてアドリブパートの充実度が最高潮! まずジム・ホールが抑えた中にも、どうやって弾いているから分からないようなフレーズを交えて好演ですし、フレディ・ハバードは温か味のある音色で吹きまくりです。
 そしてビル・エバンスが実に素晴らしいです! このアルバムの中では一番「らしい」アドリブを聞かせてくれるんですが、その背後で躍動するフィリー・ジョーとの相性の良さも、たまりません。

B-3 Wrap Your Troubles In Dreams
 これもフィリー・ジョーのシンバルワークが冴えたイントロから、フレディ・ハバードが溌剌とテーマを吹奏したスタンダード曲の見事な解釈が楽しめます。
 もろちんビル・エバンスにとっては、こういう歌物が十八番とあって、薬籠中の大名演! エバンス風歌心の見本市のようなアドリブには心底、酔わされてしまいます。得意技が頻発しているんですねぇ~~♪
 そしてフレディ・ハバードが、バリバリと吹き飛ばしながらも、実は歌心を大切した名演だと思います。またジム・ホールがジャズギターのお手本のようなテクニックとフレーズの妙技を聞かせてくれるのでした。

ということで、捨て曲無しの大名盤だと思います。

で、最初の話題に戻ってみれば、個人的にはB面を良く聴いているのですが、ジャズ喫茶では圧倒的にA面でしょうか。躍動的なフィリー・ジョーのドラムス中心に聴いて快感があるのは、大音量のジャズ喫茶ならではの楽しみかもしれませんね。

さらに言わせていただければ、私はジム・ホール中心に聴いています。

コメント
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