OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

3枚目の快演

2007-08-30 15:22:26 | Weblog

仕事場のファックスに、所謂「怪文書」ってやつが入ってきました。

しかし全く心当たりが無いので、いろいろと調べたら、送信ミスらしいです。

妙なスキャンダルめいた文章が、世の中では飛び交っているんですねぇ。あらためて人生ドロドロを痛感!

ということで、本日は――

Curtis Fuller Volume 3 (Blue Note)

どこの世界にも憎めない人は居るもんですが、カーティス・フラーもそんなひとりじゃないでしょうか。

ハスキーな音色を活かしたファンキーなフィーリングは、ハードバップのトロンボーン奏者としては超一流で、ジャズは決してテクニック偏重の音楽ではない事実を痛感させてくれます。

これはもちろん、カーティス・フラーがヘタウマという意味ではなく、メカニカルなフレーズよりはヒューマンなフィーリングを全面に出した、所謂ソウルトロンボーンの第一人者だと、私は思っています。

その実力は大変なもので、なにしろ1957年春頃にニューヨークへ出て来た直後から、ブレスティッジ、サボイ、そしてブルーノートという名門レーベルからお呼びがかかり、この年だけで7枚のリーダー盤を作っています。この時、カーティス・フラーは若干23歳!

さて、このアルバムはタイトルどおり、ブルーノートでは3枚目のリーダー盤です。

録音は1957年12月1日、メンバーはカーティス・フラー(tb)、アート・ファーマー(tp)、ソニー・クラーク(p)、ジョージ・タッカー(b)、ルイス・ヘイズ(ds) という今では夢のオールスタアズ! 特にリズム隊が魅力的ですねぇ――

A-1 Little Messenger
 ラテンリズムと4ビートが烈しく交錯するテーマからして魅力的なハードバップの快演です。初っ端から鋭くアドリプに突入していくソニー・クラークもファンキーにスイングしまくって、これがゴキゲン♪
 続くアート・ファーマーは何時もの安定感が崩れそうになるほどに熱が入っているところも珍しく、カーティス・フラーはアドリブの中に「ジェリコの戦い」のメロディを完全引用するという、憎めない十八番を披露しています。
 また重量感満点のベースで煽るジョージ・タッカーや歯切れの良いルイス・ヘイズの存在感も強く、些か荒っぽい演奏をガッチリ引き締めています。
 ちなみにこの曲はカーティス・フラーのオリジナルですが、タイトルからしてジャズメッセンジャーズへの憧れを表現しているのでしょうか? だとすれば大成功の名演だと思います。

A-2 Quantrale
 これもラテンリズムを上手く使ったカーティス・フラーのオリジナルで、哀愁と楽しさが両立したテーマメロディが、なんとも素敵です♪
 このあたりはホレス・シルバーの作風にも通じたフィーリングですから、当時、そのバンドに在籍していたアート・ファーマーがツボを押えた好演を聞かせてくれます。
 また、こういう曲調なら、俺に任せろ! というソニー・クラークが哀愁の「ソニクラ節」です♪
 そしてカーティス・フラーがハスキーな音色の魅力で迫ってきますからねぇ~♪ 全体にレイドバックな雰囲気が横溢していますが、こういうのもハードバップの魅力かと思います。
 後半で再度登場するアート・ファーマーは気合の名演!

A-3 Jeanie
 これまたカーティス・フラーのオリジナルですが、おぉ、これは明らかに有名スタンダード曲「But Not For Me」の改作じゃ~ぁ♪ こういう事を堂々とやってしまうところが憎めないんですよ。実際、大らかなテーマ吹奏だけで最高ですが、アドリブも実に朗々とした歌心の「フラー節」が全開しています。和みますねぇ~♪
 またアート・ファーマーも穏やかなジャズ魂を発揮した名演で、全てが「歌」のアドリブは見事! 何度聞いてもグッときます。
 そしてリズム隊の伴奏も素晴らしく、淡々した中にも強烈なグルーヴが感じられますし、ソニー・クラークは粘りのビアノタッチでファンキーな気分と歌心を両立させています。続くジョージ・タッカーの強靭なベースソロも良いですねぇ~~♪ これぞモダンジャズだと思います。

B-1 Carvon
 B面もカーティス・フラーのオリジナル曲でスタートしますが、アルコ弾きのベースとハスキーなトロンボーンだけで演奏される、些か陰鬱なテーマメロディは、ちょっと場の雰囲気にそぐわない感じです。う~ん、重し苦しいぞ……。
 しかしそれが終わると、ジョージ・タッカーのグイノリ4ビートウォーキングからリズム隊が入って、後はもう、カーティス・フラーが堂々のアドリブを披露していきます。
 このあたりの厳しい雰囲気は、ハードバップの新しい展開を予感させるものですし、続くアート・ファーマーがクールで熱い十八番の展開で、たまりません。
 リズム隊ではルイス・ヘイズのシンバルに緊張感が強く、ソニー・クラークはちょっと迷ったかもしれませんが、すぐにファンキーな己の道を切り開いていきます。

B-2 Two Quarters Of A Mile
 前曲とは一転して、軽やかで粋なモダンジャズの楽しさが提供されています。ミディアムテンポでスイングするリズム隊がグルーヴィ♪
 アドリブパートではカーティス・フラーが手馴れた雰囲気ですし、アート・ファーマーはミュートの妙技で和みます。
 そしてソニー・クラークが持ち前のマイナー調に粋なフィーリングを交えた快演で、最後にはちゃ~んとファンキーフレーズを聞かせてくれるあたりが、ニクイですねぇ~♪

B-3 It's Too Late Now
 オーラスはあまり有名でないスタンダード曲ですが、カーティス・フラーがリードするテーマメロディには「泣き」がたっぷり含まれ、グッと惹きつけられます。スロー&メローな雰囲気がたまりません♪
 続くソニー・クラークも情感たっぷりですし、最後を締めるアート・ファーマーは、もう薬籠中の名演でしょう♪
 メンバー全員が、しっとりとした中にも丁寧なプレイを心がけているのが伝わってくるのでした。素敵です♪

ということで、それほどの人気盤ではないかもしれませんが、聴けば納得の1枚かと思います。

メンバーの中では特にソニー・クラークが好調で、なにしろ、このセッションの1週間後には、あの超人気名盤「クール・ストラッティン(Blue Note)」を吹き込むのですから! その黒くて粋なフィーリングが存分に楽しめるのです。また同時に、そこに参加するアート・ファーマーも高得点!

ただし個人的には、このセッションにアルトかテナーのサックス奏者が加わっていたらなぁ……、なんて夢を見てしまうのも事実です。それはカーティス・フラーが後年、ベニー・ゴルソンと組んだ所謂「ゴルソンハーモニー」サウンドを知っているからでしょうか。その時、一緒にジャズテットを組んだアート・ファーマーが、ここに参加しているだけに、一層、夢の見心地が良いのでした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする