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OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

逆療法

2006-04-17 16:52:09 | Weblog

疲れた時は、かえって疲れきるまで疲れたほうが良いということで、起き抜けにこれを聴きました。

おぉ、本当にスカッとしましたぜっ――

John Coltrane Live At Antibes (BYG / Norima)

ジャズ喫茶の神様はジョン・コルトレーンです。まあ、ジャズ喫茶というのは日本独自の文化ですから、するとコルトレーンは日本限定の神様なのか? という疑問も生じるのですが、その答えは、否です。

おそらくここまで自己を恣意的にジャズという世界に追い込んで演奏していたミュージシャンはいないと思われます。つまりコルトレーンは天才ではなく、あくまでも人間が修行し、ジャズに命を捧げて神になったという人だと思います。

ですから、聴き手はコルトレーンの苦行に敬意をはらい、その演奏を謹聴することによって神と同化することを願うのですが……。

しかし、そんなことは全てのジャズ者がやっているわけではなく、実は聴いていて、うぁ~ぁぁぁぁ~、すげぇ~~~、とカタルシスを与えられることに満足しているものと思われます。

そのあたりが一番強烈に出ていたのが、1965年前後のコルトレーンの演奏で、激烈さが行くところまで行って、フリーに突入するギリギリの部分で危ういバランスを保っていたそれは、本当に圧倒的な恐ろしさでした。

このアルバムに収められた演奏は、その当時のライブをフランス国営放送が録音していたテープから作られたもので、初出は1973年、「ライブ・イン・パリ」と題された2枚組LPとして、日本の東宝レコードから発売されたものです。

その内容は、コルトレーンがレギュラー・バンドを率いて、1965年7月にフランスのアンチープ・ジャズ祭に出演した音源を中心にしていましたが、実はこの時の演奏は7月26日~28日の3日分のテープが残されており、前述のアルバムが発売されて以降、その音源は様々に分散して公表されたのが現状でした。

しかし近年になって、ようやく出演日毎に整理された形で編集がなされ、このアルバムには1965年7月27日のライブが収録されています。メンバーはジョン・コルトレーン(ts,ss)、マッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という、所謂黄金のカルテットです――

01 Naima
 フランス語によるメンバー紹介に続いて、静謐なムードが漂うコルトレーンの代表的なオリジナルが始まります。スローな展開で美しいテーマが清々と演奏されるのですが、実はもう、そこからバックのリズム隊が混濁の様相を呈しており、コルトレーンも徐々にその瀬戸際に追いつめられた挙句、本音を吐露するがごとき音符の羅列と積み重ねを繰り返していくのです。
 それにしても空間を埋め尽くさなければ気がすまない、とでも言いたげなコルトレーンの強迫観念的吹奏は圧巻です! もちろんそこには痙攣的なフリーキー・トーンの爆発があり、それに反して、なんとなくエルビン・ジョーンズが投げやりな叩き方をしているのには、訳があるのですが……。

02 Blue Valse
 如何にも新曲のようにタイトルされていますが、実はコルトレーンが思いっきりフリーに走って賛否両論だったアルバム「アセンション」からの一部をモチーフにした演奏です。
 もちろんここでも最初っからバンド全員によるフリーな腹の探り合いが展開され、その重苦しい空気は、その場に居たたまれないほどです。
 しかし2分過ぎからはテンポが上がり、まずマッコイ・タイナーが主導してリズム隊だけの4ビート演奏に進み、ここは執拗なモードの探求があるのですが、実はホッとする展開です。エルビン・ジョーンズも本領発揮の蛸足ドラミングが全開♪
 そして5分45秒目あたりから、いよいよコルトレーンが現場に介入し、怖ろしいばかりに激情を爆発させていきます。もちろんそれに対してリズム隊も容赦なく応戦するのですが、ここは完全に押され気味……! 往年のジャズ喫茶では、このあたりは頭を垂れて聴き入るしかない! というのが礼儀でしたねぇ♪ 本当に聴いていて、こちらも痙攣しそうです。
 演奏は続いてエルビン・ジョーンズの怒りの大車輪ドラムソロが出ますが、なんかヤケクソ気味です。

03 My Favorite Things
 前曲のドラムソロの最後に被せて吹奏されるのは、これが出なければ納得出来ないという、コルトレーンの人気演目! もちろんソプラノサックスを吹きまくりますが、何時聴いても、やっぱり虜になるシビレ演奏です♪ しかもエルビン・ジョーンズが前曲での怒りを持ち込んで、最初から叩きまくり!
 マッコイ・タイナーも自己のペースを守り通そうとするのですが、エルビン・ジョーンズの煽りに、つい、ノセられて暴走していきます。
 そして後半、いよいよコルトレーンの唯我独尊的演奏が大噴火! しかもそれににキレたエルビン・ジョーンズとの喧嘩が展開されるのですから、たまりません♪
 実はこの当時のバンドは、闇雲にフリーに走るコルトレーンと暗黙の了解でビートを刻みたいエルビン・ジョーンズが対立しており、実際のステージでは毎度、演奏上で激烈な取っ組合いがあったと言われています。
 もちろんそれは、ここでもクッキリと浮き彫りになっており、激烈な演奏が出来上がっていくのですが、軍配はコルトレーンに上がっていると思います。

04 Impressions
 コルトレーン・モードと言えば、この曲です! もちろんアップテンポで強烈な意地の張り合い的な演奏が展開されるのですが、この日のステージでは、まずジミー・ギャリソンが導入部分で全く自己のペースを守り抜くベースソロを、じっくりと聞かせます。
 そしてようやく、9分30秒目からエルビン・ジョーンズが痛烈なシンバルでそこに斬り込み、コルトレーンがお馴染みのテーマを吹奏、マッコイ・タイナーの白熱のピアノソロに受け渡します。ただしここは、残念ながら音のバランスがイマイチ……。
 しかし続くコルトレーンは、もちろん爆裂です。一切の妥協が無いというか、とにかく凄みしかありません。エルビン・ジョーンズもそれには烈しく抵抗し、山場では2人だけの対決さえあるのですが、結局、コルトレーンに捻じ伏せられてしまうのでした。

ということで、この日はコルトレーンの勝ちという判定ですが、翌日、つまり7月28日の演奏ではエルビン・ジョーンズが、名誉回復の大暴れを演じていますので、いずれ取上げたいと思います。

それと、この日の演奏は録画もされており、「Naima」と「Blue Valse」は公式発表されていますので、機会があれば、ぜひともご覧下さいませ

コメント
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