アルトサックスの人気者、ジャッキー・マクリーンの訃報に接しました。どちらかというと短命の人が多いモダンジャズ全盛期の名プレイヤーの中では長生きでしたが、やはり哀しみにたえません。
ジャッキー・マクリーンは俳優に例えて言うと、二枚目では無く、個性派・性格俳優というの感じでしょうか、アクが強くて、その場に登場しただけで周囲を自分色に染上げてしまう、そんなプレイヤーだったと思います。
実際、あのギスギスした音色とフレーズは如何にもモダンジャズ♪ マイルス・デイビスやチャーリー・ミンガス、そしてアート・ブレイキーなんていう恐いボスに雇われた録音でも、ちゃんと自己主張を押し通していますし、喧嘩別れも多かったらしいです。そのあたりは若干18歳にして初録音、第一線で活躍し続けた若気の至りでは片付けられない、ジャッキー・マクリーンだけの個性と解釈するべきでしょうか……。
で、本日は追悼の意をこめて、何を聴こうかと迷ったあげく、やっぱりこれでした――
■Left Alone / Mal Waldron (Bethlehem)
我国では絶大な人気盤ですが、本国ではどうなんでしょう……?
その秘密はもちろん、ジャッキー・マクリーンが哀切感たっぷりに吹くタイトル曲でしょう。とにかく、グッとくる演奏です。
この曲はリーダーのマル・ウォルドロンが伴奏を努めた晩年のビリー・ホリディの死を悼んで吹き込んだと言われていますが、やはりマクリーンのアルトサックスの泣きに尽きます。なにしろアドリブ・パートがほとんどなく、ただメロディを吹いているだけなのに、これ以上無いほどのジャズになっているのですから!
そのあたりは現にジャズ喫茶の人気盤として、あるいはジャズ蒐集の定番として我国で認められていることに顕著ですし、なんと1980年代には日本映画のテーマとして使われたこともありました。もちろんそれはオリジナル音源ではなく、某若手俳優が演じたサックス奏者の、そのまた吹替えでしたが、結果はほとんど顰蹙に近いものでした。というか、はっきり言って噴飯物……。
と、まあ、そのくらい、ジャッキー・マクリーンの「Left Alone」は有名です。ちなみに、このアルバムでのマクリーンの参加は、この1曲だけというのも、強烈な印象に繋がっているのです。
う~ん、それにしてもマクリーンの訃報でこの曲を聴こうとは、ねぇ……。なんだか虚しさが募る思いの春の雪、というのが本音です。合掌。