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OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

また出たっ! ブラウニーの発掘音源

2009-06-10 11:43:57 | Jazz

The Complete Quebec Jam Session / Clifford Brown (RLR = CD)

本日も「ブートもどき」のご紹介となりますが、それがクリフォード・ブラウンとあっては、ご容赦願えるものと思います。

内容はクリフォード・ブラウン自らが録音したとされるプライベートなリハーサル音源をメインに、おまけとしてエアチェックされたブラウン&ローチのバンド演奏が収められていますが、「All Tracks Previously Unissued!!」とジャケットに記載されているのは、その真偽は別としても、やはり嬉しいものがあります。実際、先日発見して、迷わずにゲットさせられましたよ♪♪~♪

☆1955年7月28日、カナダのケベックで録音
 01 All The Things You Are
 02 Lady Be Good / Hackensack
 03 Strike Up The Band
 04 Ow!
 05 Sippin' At Bells
 06 Brownie Talks

 メンバーはクリフォード・ブラウン以下、Rob McConnell(tb)、そして多分、ハロルド・ランドと推測されるテナーサックスに正体不明のピアニストが加わった練習セッションですが、もちろんクリフォード・ブラウンは真摯に吹きまくりですし、その場の和んだ雰囲気もたまりません。
 まず冒頭、日常的な音出しチューニングから、お馴染みのスタンダード曲「All The Things You Are」へと入っていく流れが、如何にもです♪♪~♪ ドラムスやベースが入っていませんから、当然ながらビシバシのビート感は楽しめませんが、クリフォード・ブラウンのハートウォームなトランペットは流石の歌心で、思わずグッと惹きつけられますよ。
 気になる音質は、あくまでもプライベートな録音ですから、それなりですが、最新のリマスター技術によりノイズは極力抑えてありますし、音のメリハリも自然です。このあたりは入門者にはキツイかもしれませんが、ある程度ジャズに親しんだ皆様ならば、納得してお楽しみいただけると思います。
 それは後の演奏にも同じく言えることですが、その合間の会話等も興味深く、当時二十歳になったばかりだったというトロンボーン奏者の Rob McConnell も大健闘! またピアニストはパド・パウエル直系のスタイルで好感が持てます。
 ちなみに「Brownie Talks」では、録音年月日を吹き込むクリフォード・ブラウンのリアルな肉声が、なんとも貴重だと思います。

☆1955年11月、シカゴでの放送録音
 07 A Night In Tunisia
 08 Billei's Bounce
 09 A Night In Tunisia
(source 2)
 10 Billei's Bounce (source 2)
 11 Fine And Dandy
 続くパートはシカゴのクラブ「Bee- Hive」からのラジオ放送をエアチェックした音源で、メンバーはクリフォード・ブラウン(tp)、ソニー・ロリンズ(ts)、ニッキー・ヒル(ts)、ビリー・ウォレス(p)、Leo Blevins(g)、ジョージ・モロウ(b)、マックス・ローチ(ds) ということで、時期的なものも勘案すると、アナログ盤時代に「ロウ・ジニアス Vol.1 & 2」という日本盤オリジナルで発掘発売され、後に「Clifford Brown Live At The Bee Hive (Lonehill Jazz)」としてCD化された音源の頃の演奏でしょうが、このブツに収められた上記演目は、そこには入っていませんでしたから、これも嬉しい♪♪~♪
 まず「A Night In Tunisia」はクリフォード・ブラウンのトランペットが実に丁寧な、そして歌心いっぱいのアドリブで、もう最高です! 続くテナーサックスは多分、ニッキー・ヒルでしょうが、その古いタイプのスタイルが逆に良い感じですし、Leo Blevins のギターの音色にしても、その真空管の響きがたまりません。
 ちなみに音質は、これもそれなりですが、ちょうど歴史的名盤に選定されている、あの「ミントンズ」のジャムセッションと似たような味わいです。ただしバランスがエレキということもあるでしょうが、少しギターが大きめなんでねぇ。このあたりは賛否両論かもしれません。
 そして「Billei's Bounce」でのクリフォード・ブラウンが、これまた凄すぎます! 極めて自然体でありながら、全てが「歌」のアドリブフレーズが溢れて止まりませんよっ! あぁ、これを聴いたら、久しくジャズモードには疎遠となっていたサイケおやじも、見事にカムバックさせられましたですよ♪♪~♪
 そのあたりがさらに強調されているのが、トラック「09」と「10」で、これは「source 2」としてあるように、演奏そのものは同じみたいですが、クリフォード・ブラウンのソロパートをメインに短く編集され、また音質も軽めになっていますが、メリハリのある明るいものに変えられていますから、結果オーライでしょう。正直、こっちのほうが楽しめるかもしれません。
 また、「Fine And Dandy」は終盤のクライマックスのみの録音で、ドラムスとフロント陣のソロチェイス! 短いのが本当に残念ですが、ふっと気がつくと、このパートの音源にはソニー・ロリンズが入っているのか? これは疑問です。

☆1955年春、ボストンでの放送録音
 12 Gerkin' For Perkin'
 13 It Might As Well Be Spring

 これもエアチェック音源で、ボストンの有名店「Storyville Club」での演奏です。
 メンバーはクリフォード・ブラウン(tp)、ハロルド・ランド(ts)、リッチー・パウエル(p)、ジョージ・モロウ(b)、マックス・ローチ(ds) という当時のレギュラーバンドですから、名演は必定!
 まず「Gerkin' For Perkin'」は、テーマアンサンブルの荒っぽさがハードバップのど真ん中で、もちろんクリフォード・ブラウンのアドリブは素晴らしい限り♪♪~♪ 続くハロルド・ランドも熱演ですし、リズム隊の熱気はリアルタイムの勢いに満ちていると思います。
 そして「It Might As Well Be Spring」は説明不要、クリフォード・ブラウンの十八番ですから、その安らぎに満ちたトランペットの節回しと歌心が満喫出来ますよ♪♪~♪
 気になる音質は、もっさりしたオリジナルソースを最新の技術で聴き易くしてありますし、これだけの演奏に接する喜びからすれば、文句を言うのはバチあたりでしょう。サイケおやじは本当に、そう思います。

☆1956年初頭、ロスでのテレビ放送音源
 14 Lady Be Good
 15 Meomries Of You

 これはネットでも流れているクリフォード・ブラウンのテレビ出演映像から、音声だけを収録したパートです。
 一応、解説書に記載のデータによると、メンバーはリッチー・パウエル(p)、ジョージ・モロウ(b)、マックス・ローチ(ds) というリズム隊をバックにしたクリフォード・ブラウンのワンホーン演奏ですが、流石の完成度は圧巻!
 まず「Lady Be Good」での、流れるようなメロディフェイクとアドリブの歌心は素晴らしいとしか言えませんし、それが終わって、間髪を入れずに始まる「Meomries Of You」が、これまた絶品♪♪~♪ 2曲合わせても4分ほどの演奏時間ですが、最後には短いインタビューも聞けますし、これも世界遺産でしょうねぇ。
 願わくば、映像の完全復刻も実現しますようにっ!

ということで、音質やソースの出どころがどうであれ、やっぱりクリフォード・ブラウンは凄くて、しかもハートウォームな魅力がいっぱい♪♪~♪

決して万人向けではありませんが、やはり聴かずに死ねるかのブツだと思います。

そしてサイケおやじが、どうにかジャズモードへと気持ちが戻りつつあるのも、この天才のおかげなのでした。

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ダサ~いジャケットのペッパー名演集

2009-05-29 09:42:35 | Jazz

Omega Alpha / Art Pepper (Omega / Blue Note)

今日は久々に朝から頭の中にジャズが鳴りだして、目が覚めました。

う~ん、このメロディは、なんだっけ……?

と思う間もなく体は自然にレコード棚の前に来ていて、そこで取り出したのが、このダサ~いジャケットのアート・ペッパーです。

内容は全盛期アート・ペッパーが残したワンホーン演奏の金字塔で、リアルタイムではオメガという録音機器の会社がオープンリールだけで発売したという、ある時期までは「幻」の名演集でしたが、確かレコード盤化されたのは1970年代に入ってからでしょうか? 我が国ではテイチクレコードから2枚のLPとしてベストセラーになりました。

もちろん私は、そのテイチク盤はしっかりとコレクトしていたのですが、1987年のある日、某中古屋のエサ箱漁りをやっていたサイケおやじの背後で流れていたのが、そのオメガセッションのアート・ペッパーでした。

ところがその最中、突如として流れてきたのが、今朝、私の頭の中で鳴っていた「Summertime」です。これには最初??? 次いで仰天! そして深~い感銘♪♪~♪

歓喜悶絶を必死で押さえ、店のカウンターで確かめてみると、確かにそれはアート・ペッパーの演奏で、しかも情けないジャケットという本日ご紹介のアルバムでした。

いゃ~、恥ずかしながら、オメガセッションにこんな未発表演奏があるなんて、この時まで知らなかったのがサイケおやじの、ジャケットに劣らない情けなさです……。

このアルバムはブルーノートが1970年代後半からスタートさせていた発掘企画のひとつとして、通称「LTシリーズ」の中の1枚ですが、ご覧のようにセンスを疑いたくなるようなジャケットデザインが徹底的にモダンジャズを否定しているようで、その評判は極めて良くありません。

しかし中身はトロトロに極上のレアテイクがテンコ盛りという意地悪なものですから、ここに私が知らなかった名演が隠されていたとしても、苦しい言い訳には決してならない……、と自分に言い聞かせてながら、その場でゲットして来た思い出があります。ちなみに値段は千円台でした。

録音は1957年4月1日、メンバーはアート・ペッパー(as)、カール・パーキンス(p)、ベン・タッカー(b)、チャック・フローレンス(ds) という今では夢のカルテット♪♪~♪

A-1 Sufe Ride
 自作自演でアート・ペッパーが十八番にしている熱いブルースですから、ここでもアップテンポの快演が披露されます。その激情的な表現と並立する絶妙の憂いが、まさにペッパー流儀のぶる~す、なんでしょうねぇ~♪
 もちろん浮遊感溢れる独特のタイム感覚も全盛期の証だと思います。
 バンドが一丸となって突進する勢いも素晴らしく、ゴツゴツしたタッチでファンキーな匙加減も味わい深いカール・パーキンスのピアノも嬉しいところです。

A-2 Body And Soul
 あまりにも有名なスタンダード曲のメロディがアート・ペッパーならではの叙情性でフェイクされていく、これぞジャズの楽しみの決定版がここにあります。そう断言して憚らないのがサイケおやじの決意表明!
 実際、じっくり構えて力強いリズム隊を従えたアート・ペッパーの即興魔術が冴えわたり、思わずのけぞってしまう閃きフレーズ、秀麗なメロディの膨らませ方は天才的でしょう。
 カール・パーキンスのピアノ、ベン・タッカーのペースのアドリブにも、ハッとするほどの意気込みが感じられますよ。

A-3 Too Close For Confort
 これも和み優先のメロディが仄かにせつない名曲スタンダードですが、それをさらに魅力的なものにしていくのが、アート・ペッパーの素晴らしさ! その泣きのフレーズを多用したアドリブ展開は、ミディアムテンポのグルーヴとジャストミートの潔さで、ファンキーなカール・パーキンスのピアノとの相性もバッチリです。
 しぶといベースとドラムスの見せ場も後半に用意され、モダンジャズの楽しさが徹底期に追求された名演だと思います。

A-4 Summertime
 さて、これが私を驚愕させた問題の演奏です。
 曲はジョージ・ガーシュインが書いたお馴染みのメロディですが、前述したテイチクから発売の2枚のLPには入っていなかった演奏ですし、実際に聴いてみれば、アート・ペッパーならではの憂いに満ちた表現が全篇で滲み出た仕上がりなんですから、ちょっと眩暈がするほどです。
 スローで重心の低いテンポ設定と思わせぶりを多用しながら、実は相当に尖鋭的な表現も含んだアート・ペッパーのメロディフェイク♪♪~♪ さらに泣きながらの激情的なスパイラルフレーズによるキメ! そして何よりも真摯なジャズ魂がナチュラルに発散されているのを痛切に感じてしまいます。
 それはカール・パーキンス以下のリズム隊にも同様にあって、まさに一期一会というか、こんなセッションが日常的に行われていたとしても、全く羨ましい奇蹟の時代だったと思います。

B-1 Fascinatin' Rhythm
 これもガーシュンの曲ですが、その溌剌とした明るいメロディをアップテンポの中で独特の翳りを滲ませて表現するアート・ペッパーが十八番のスタイルは、実に素晴らしい限り♪♪~♪ やはりこれも天才の成せるワザだと思います。
 正直、演奏そのものは、些か纏まりに欠けているような気も致しますが、バンドメンバー全員が閃き優先主義を貫いているのは流石じゃないでしょうか。

B-2 Begin The Beguine
 さてさて、これまたアート・ペッパーが生涯の名演のひとつと、サイケおやじが断言して憚らないトラックです。
 曲はお馴染みのラテン物ですから、アート・ペッパーにとっては薬籠中のものとはいえ、導入部のラテンビートグルーヴから一転しての4ビートスイングの心地良さ! その中を自在に浮遊しつつも、キメのメロディフェイクは決して外さないアドリブの妙技、翳りと愁いと官能美のコントラストも鮮やかに泣きじゃくるアート・ペッパーの魅力が、見事に凝縮されていると思います。
 ハードエッジに迫ってくるリズム隊も強力で、グイノリファンキーの味わいを隠さないカール・パーキンス、強いアフタービートまで叩いてしまうチャック・フローレンス、そしてブンブンブンのベン・タッカー!
 極めて自然体のジャズグルーヴとメロディの魔法が見事に融合した完成度は、些かラフな全体のムードに支えられているように感じますが、それがジャズなのかもしれません。

B-3 Webb City
 オーラスはパド・パウエルが書いたビバップど真ん中の名曲名演なんですが、それにしても初っ端からの団子状の録音が大迫力!? このリズム隊の強靭さは、ちょっと同時代では珍しい雰囲気だと思います。
 それゆえにアート・ペッパーも何時も以上に覇気のあるアドリブ意欲が空回り……。いやいや、そこから熱血の展開に持って行く唯我独尊が存分に楽しめます。

ということで、収録された演奏は何れもが素晴らしく、まさにアート・ペッパーの存在意義を強く感じるのですが、前述した日本盤LP2枚には計11曲が収められていたことを鑑みれば、物足りないのも事実です。

このあたりはアメリカ本国でのオメガセッションの復刻状況が、イマイチ明確に分かりませんので断言ば出来ませんが、それにしてもこんな素晴らしい演奏が、こんな中途半端な形でしか公表されないのは、現実の厳しさでしょうか。

オメガセッションの全貌については、今日でも完全に纏められてはいないようですが、時折小出しにされる未発表演奏や別テイクの存在からして、またまだ「お宝」が埋蔵されている可能性もあると信じています。

それはここに収められた演奏だけの判断でも、その録音の状態がバラバラで、モノラルミックスもあれば、微妙なステレオ感のあるテイク、あるいは不揃いな録音バランスの混在……、等々が謎を深めているわけですが!?

ただし、このアルバムに関しては、前述した「Summertime」の収録ゆえに高得点というか、少なくともサイケおやじを感動させたわけですから、それは決して無知の涙とばかりは言えません。

あぁ、もっとアート・ペッパーが聴きたくなってきました!

このセッションを纏めたCDも出ているようですから、買ってみようかなぁ~♪

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マッコイに救いを求める

2009-05-22 12:13:45 | Jazz

Inception / McCoy Tyner (Impules!)

自分の目下の悩みはジャズモードに戻れない事ですが、まあ、毎日の生活や人生の中では、それも小さい……。

とはいえ、本日は意を決して、このアルバムを取り出してきました。

マッコイ・タイナーの初リーダー盤!

録音は1962年1月10日、メンバーはマッコイ・タイナー(p)、アート・デイビス(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という、コルトレーンのバンドレギュラーだった面々! つまりボス抜きセッションの雰囲気も強い趣旨には強く賛同してしまいます。

A-1 Imception
 いきなりアップテンポでブッ飛ばすアルバムタイトル曲は、もちろんマッコイ・タイナー自作のブルース♪♪~♪ 仄かなマイナー調が後年に顕著となる、如何にもマッコイ・タイナーらしい黒い情念を予感させます。
 そしてド頭からのパド・パウエル調が、今となっては意外かもしません。しかしセッション当時はそれが王道でしょう。さらにアドリブパートに入ってからのマッコイ流モード節にグッ惹きつけられるのは、ジョン・コルトレーンが神様になっていた時期にジャズを本格的に聴き始めたサイケおやじの世代には共通する「パブロフの犬」じゃないでしょうか。
 あぁ、この音符過多の垂れ流し寸前のスケール弾き、それでいて「お約束」の構成力、それを煽るエルビン・ジョーンズのポリリズムドラミングの素晴らしさ! そして底辺をがっちり支えるアート・デイビスの野太いベース!
 やっぱりジャズって、良いです♪♪~♪
 ついついボリュームを上げてしまいますっ!

A-2 There Is No Greater Love
 一転してお馴染みのメロディが心地良いスタンダード曲の演奏は、テーマ部分のピアノとベースの絡みとか、なかなか緻密なアレンジが効いています。
 そして軽快という、マッコイ・タイナーのイメージには似つかわしくない形容のアドリブパートが実に楽しく、それはシャープでヘヴィなエルビン・ジョーンズのブラシに後押しされ、何時までも聴いていたいモダンジャズ天国♪♪~♪ まさに「マッコイ節」が大サービスされます。
 またアート・デイビスの繊細にして豪胆なペースワークは、アドリブも本当に見事ですし、クライマックスでのエルビン・ジョーンズのドラムソロも、憎たらしいほどにキマッています。

A-3 Blues For Gwen
 これもアップテンポのブルースですが、こちらは相当に明るい雰囲気というか、例によってモードに浸りこんだ「マッコイ節」が全篇に網羅されていきますから、ドラムスとベースの存在からして、今にもジョン・コルトレーンの激情サックスが入ってきそうな予感が嬉しいところ♪♪~♪
 それは私のような者には避けられない幻覚かもしれません。
 しかしマッコイ・タイナーは決して露払いの立場ではなく、ここでは堂々のリーダーとして最後まで矜持を保っていると感じます。
 
B-1 Sunset
 B面に入っては、これもマッコイ・タイナーのオリジナルですが、ドラマチックなイントロから優しさが滲むテーマメロディの展開は、ちょっとスタンダード曲を改作したかのようなムードが結果オーライ♪♪~♪
 ゆるやかな黒っぽさが、そこはかとなく漂うメロディフェイクは、実は相当に濃密で、ビル・エバンスやウイントン・ケリーとは完全に異なるマッコイ・タイナーが独自の個性だと思います。そしてジョン・コルトレーンの名盤「バラード」での堅実なサポートも、これが出来ればこその証なのでしょうね。

B-2 Effendi
 これまた如何にも「らしい」、マッコイ・モードが全開の熱演!
 このスケールの響き、ふたつのモードを使ったアドリブ展開の分かり易さ♪♪~♪
 エルビン・ジョーンズの蛸足ドラミングに頑固一徹なアート・デイビスのペースも強いですから、気分は完全にジャズ喫茶黄金時代! ブロックコード弾きを多用して山場を作るマッコイ・タイナーに呼応して、ヤケッパチ気味のドラムソロに突入していくエルビン・ジョーンズという、それこそが熱いわけですが、そこからすぅぅ~っとフェードアウトしていく演奏のラスト部分の余韻も快感♪♪~♪
 流石のプロデュースだと思います。

B-3 Speak Low
 そしてオーラスも、これまた楽しいスタンダード曲の名演で、なんと言ってもテーマ部分でラテンビートを敲きまくるエルビン・ジョーンズが最高です。そして熱い4ビートのシンバルワークもっ! 自然にドラムスばっかりに耳がいってしまうですよ。
 しかしマッコイ・タイナーも負けじと奮闘! 動き過ぎる指先から弾き出されるフレーズのイキの良さは最高ですし、アート・デイビスのベースもアドリブパートの派手なケレンと健実なサポートのバランスが秀逸で、好感が持てます。

ということで、本日は苦し紛れのチョイスとなりました。

つまり個人的な「パブロフの犬」の力を借りなければ、もう、ジャズモードへの復帰は叶わないという危機感があるのですねぇ……。

まあ、別に無理せずに、ここは毎日を好きな音楽ばかり聴いていれば、おのずと道は開けるんでしょうが、そこは地獄の一丁目というか……。

実は告白すると、サイケおやじは数年前の一時期、ヘアヌードの巨乳グラビアとか見ると、なんか胸がいっぱいになって吐き気まで覚えていました。それも今は解消されていて、かえって好きなぐらいですが、なんかジャズに対しても、そういう時期なのかもしれません。

長い目で、今後ともよろしくお願い致します。

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忘れていた朝のショーター

2009-05-14 09:37:12 | Jazz

Schizophrenia / Wayne Shorter (Blue Note)

あれぇ、なんだっけ……?

という曲名を失念したメロディの断片が自意識の中に浮かんでしまうことは、誰にでもあることだと思いますが、昨夜の就寝前から私の感性を独占していたそれが、このアルバムに入っていることに気がついたのは、本日の早朝でした。

そこで早速、久々の鑑賞に入ってみると、これがタイトルどおりに分裂したウェイン・ショーターの幅広い音楽性が存分に楽しめる傑作盤だと再認識!

録音は1967年3月10日、メンバーはカーティス・フラー(tb)、ジェームズ・スポールディング(as,fl)、ウェンイ・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、ジョー・チェンバース(ds) という、実力派のセクステットです。

A-1 Tom Thumb
 これが前述した曲名失念のメロディ! その演奏です。
 ほとんどホレス・シルバー(p) の「Song For My Father」にクリソツというイントロから、そのリズムパターンをラテンロック系のモダンジャズへと発展させていくゴッタ煮感覚が、まず最高です。
 作曲はもちろんウェイン・ショーターですが、そのテーマをリードしていくのが、ジェームズ・スポールディングのウソ泣きアルトサックス! そしてもうひとつメインのメロディがテナーサックスとトロンポーンによるカウンターリフで演じられるアンサンブルの心地良さ♪♪~♪ ジョー・チェンバースの刺激的なドラミングとハービー・ハンコックの楽しい合の手ピアノにもウキウキさせられますよ♪♪~♪
 そしてウェイン・ショーターが演じるアドリブは、キメが十八番の脱力節! グッと煮詰めて、一瞬にしてズッコケさせるようなフレーズの使い方は、すべらない話だと思いますが、いかがもんでしょう♪♪~♪ 私は、これをやってくれるんで、ウェイン・ショーターが大好きなのです。
 さらにハービー・ハンコックのファンキーでありながら斬新なピアノ、今にも走りだしそうなジョー・チェンバースのヘヴィなドラミング、我が道を行くジェームズ・スポールディングのアルトサックスという共演者達の自己主張も侮れません。
 あぁ、名曲名演とは、こういう充実度を指すんだと思います。
 ちなみに、例えば作者本人がボビー・ティモンズ(p) と演じているように、この曲はワンホーン演奏も幾つかのバージョンが残されていますが、やはり複数管で表現されるテーマアンサンブルがあってこその魅惑曲じゃないでしょうか?
 あと、スティーリー・ダンは、これを聴いていたのか!? 彼等は絶対に好きなはず! 私は、そう信じています。Rikki Don't Lose That Number ♪♪~♪

A-2 Go
 ウェイン・ショーターが得意技というミステリアスな曲調は、後のウェザーリポートを強く感じさせます。
 アドリブパートも、まずはハービー・ハンコックの実に新鮮なハーモニー感覚が素晴らしく、またここでも刺激的なジョー・チェンバースのドラミング、さらに怖いロン・カーターのペースワークが圧巻!
 ですからジェームズ・スポールディングのフルートが些か委縮気味に聞こえてしまうんですが、いよいよ登場するウェイン・ショーターが隠れ名演の決定版を披露してくれますよ。それは演奏を貫く複合ビートの間隙を縫うような、まさに独特の浮遊感と過激なフレーズの化学変化とでも申しましょうか、一筋縄ではいきません。
 それゆえに、とっつきにくいムードも強いのですが、これの虜になると抜け出せないのは言わずもがなです。

A-3 Schizophrenia
 アルバムタイトル曲は、これまたモヤモヤした出だしから一転、激烈なアップテンポで豪快無比な演奏が楽しめます。
 それを徹頭徹尾リードしていくのがジョー・チェンバースのハッスルドラミングで、エルビン・ジョーンズとトニー・ウィリアムスの折衷スタイルは、ジャズ者の心を捕らえて放さないでしょう。
 溌剌としたテーマリフからストレートに天の邪鬼を演じるウェイン・ショーターのテナーサックスは、マイルス・デイビスのバンドでは表現を許されなかったフラストレーションの開放かもしれませんし、それを察したハービー・ハンコックの伴奏も楽しいかぎり!
 またカーティス・フラーの爆裂トロンボーンに呼応するジョー・チェンバースのヤケッパチのオカズとか、ジェームズ・スポールディングのイライラしたようなアルトサックスも強い印象を残します。
 その意味でハービー・ハンコックのクールで熱いジャズ魂は全く立派でしょう。熱血のアドリブソロから周りの意見を無視しない柔軟な伴奏まで、流石だと思います。
 この演奏は、ジャズ喫茶の大音量で聴くと、尚更にブッ飛びますよ!

B-1 Kryptonite
 このアルバムでは唯一、ジェームズ・スポールディングのオリジナル曲ですが、そのテーマメロディはジョージ・ラッセルの「Ezz-Thetic」にクリソツ!?
 しかし、その過激な勢いは熱い盤石のリズム隊に支えられ、フルートで思いっきりの心情吐露に徹する作者のジャズ魂は、決して憎めるものではありません。
 そのあたりを考慮したのでしょうか、ウェイン・ショーターの、これも得意技という「はぐらかし」が、いきなり使われるアドリブパートの潔さ♪♪~♪ もちろんその後はフリーフォームも含んだ思索的な展開へと進むのが「お約束」ながら、その最後の部分でのテナーサックの低音歪み奏法(?)は、ヴァン・ゲルダー録音だけが成し遂げた世界遺産でしょうか。ここは再生装置の故障ではない、必聴の名演だと、強く思います。
 そして続くハービー・ハンコックの爽快なピアノとリズム隊3者のコンビネーションも、実に素晴らしいです。あぁ、これが新主流派の面目躍如でしょうか、本当に痛快ですよ。ラストテーマのスマートな混濁も、さらに素敵です。

B-2 Miyako
 おそらくは、このアルバムでは一番有名だろうと思われるウェイン・ショーターが畢生のバラード♪♪~♪ もちろんタイトルどおり、愛する女性に捧げたワルツテンポの愛らしいメロディが、作者本人の好むミステリアスなムードで染め上げられていく演奏です。
 その陰の立役者は、皆様ご推察のようにハービー・ハンコックで、流石のコードワークが素敵ですねぇ~♪ 地味ながらツボを外さなロン・カーターのペース、しぶといブラシを聞かせるジョー・チェンバースも名演だと思います。
 そしてウェイン・ショーターの一期一会というか、ひとつひとつの「音」を大切にした優しい音色のテナーサックスがスピーカーから流れ出て、その場の空間に広がっていく心地良さは絶品♪♪~♪

B-3 Playground
 オーラスは如何にもブルーノートがど真ん中の熱血モードジャズ!
 テンション高いテーマアンサンブルや演奏全体の雰囲気には、当然ながら時代の要請でフリーな味わいも含まれていますが、アドリブパートは正統派4ビートがメインですから、ウェイン・ショーターにしろ、カーティス・フラーにしろ、決してデタラメは吹いていません。
 なによりもリズム隊のビシッと芯のはっきりしたノリが痛快です。
 そしてジェームズ・スポールディングの、どっちつかずの姿勢さえも結果オーライ! はっきり言えば迷い道かもしれませんが、それすらも名演の範疇にしてしまう当時のブルーノートのセッション現場の雰囲気の熱さは、本当に好ましいと思います。
 その意味で過激なフリー地獄へと足を踏み入れていくハービー・ハンコック以下のリズム隊が熱演が、時間切れでラストテーマへと繋がってしまうのは残念至極なんですが、そのテーマアンサンブル終盤での、フリーの嵐の再襲来には溜飲が下がるというものです。

ということで、今となっては中途半端な人気盤というか、現代のジャズ喫茶では、どの程度の鳴らされ方になっているのか知る由もありませんが、1970年代までのジャズ喫茶では、これが鳴り出すと店内の雰囲気がグッと本格的なジャズムードへと変化したほどの印象盤でした。当時の大学のジャズ研や学生バンドのメンバーにも人気があったと記憶しています。

大仰なアルバムタイトルと不気味なジャケットデザインゆえに、暴虐のフリージャズだとして聴かず嫌いになっている感もある作品ですが、中身はとっても楽しくて刺激的! 聴き易さも当然の如くですから、決して忘れてはならない作品じゃないでしょうか。

と、書きながらも、実は忘れていたサイケおやじは、深く反省をするのでした。

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オリバー・ネルソンの脂っこさ

2009-05-12 08:34:36 | Jazz

Screamin' The Blues / Oliver Nelson (New Jazz)

食べ物の好みでも若い頃は脂っこいものが好きなように、聴く音楽も例えばハードロックとかサザンソウル、あるいはスワンプロック等々、相当にギラギラしたものが好きでした。

それはジャズでも同じ事!

本日ご紹介の1枚は、そのタイトルどおりに粘っこく、ギトギトした演奏がびっしり詰まった名盤だと思います。

録音は1960年5月27日、メンバーはオリバー・ネルソン(as,ts)、エリック・ドルフィー(as,bcl)、リチャード・ウィリアムス(tp)、リチャード・ワイアンズ(p)、ジョージ・デュヴィヴィエ(b)、ロイ・ヘインズ(ds) という、当時のオリバー・ネルソンやエリック・ドルフィーの周辺では気心の知れた面々♪♪~♪ おそらくオリバー・ネルソンとエリック・ドルフィーの共演セッションは、これが最初になると思われますが、結論から言えば、その意気投合した雰囲気の良さ、そして尖鋭的な部分も含んだ、その新進の過激さも素晴らしいかぎりです。

A-1 Screamin' The Blues
 いきなりネバネバ、ギットギトのゴスペルハードバップで、テーマの主旋律を力んでリードするオリバー・ネルソンがなんとも憎めません。フロントの他の2人が合わせるホーンのアンサンブルも良い感じ♪♪~♪
 そしてアドリブの先発を務めるリチャード・ワイアンズのファンキーピアノが、これまた最高なんですねぇ~♪ まさにブルース&ファンキーの真骨頂というか、コクがあるのに飽きないという、料理の鉄人的な名手の証だと思いますが、そのリチャード・ワイアンズにしても当時はニューヨークに出てきたばかりの新人扱いだったというのですから、流石に本場の懐の深さには驚かされますねぇ。
 その意味ではオリバー・ネルソンやエリック・ドルフィーも同じ立場だったわけですが、妙な落ち着きと過激さを同居させたオリバー・ネルソンのテナーサックスのアドリブに対し、バスクラリネットのネクラ節で呼応するエリック・ドルフィーの激ヤバな感性は、やっぱり強烈です。
 また溌剌としたハードバップど真ん中の快演を聞かせてくれるリチャード・ウィリアムスも、生涯の名演セッションがこのアルバムに記録されたように、素晴らしいトランペットを披露しています。

A-2 March On, March on
 これまたタイトルどおりにマーチテンポのゴスペルハードバップ! ほとんどジャズメッセンジャーズかジャズクルセイダーズという感じが楽しいかぎりです。この、いっしょに口ずさせめるマイナーメロディのテーマ♪♪~♪ その絶妙な「泣き節」が私は大好きです。
 しかしイントロでジョージ・デュヴィヴィエが作り出すアブナイ雰囲気とか、演奏全体は、なかなか一筋縄ではいきません。
 明快に鳴りまくるリチャード・ウィリアムスのトランペット、シンプルにして悪い予感に満たされたオリバー・ネルソンの陰湿なアドリブ、直線的にエグイことをやらかすエリック・ドルフィーのアルトサックス、さらにジェントルなムードが素晴らしいリチャード・ワイアンズのセンスの良さ!
 そうした全くバラバラの思惑がラストテーマへと収斂していく、その密度こそが名演の条件だと痛感させられるのでした。

A-3 The Drive
 如何にもオリバー・ネルソンの曲らしい、アップテンポで流れるようなテーマメロデイが印象的です。そしてアドリブパートでのメンバー全員の大ハッスルも、実に好ましい名演が続くのです。
 特にリチャード・ウィリアムスの絶好調は嬉しいかぎりで、リー・モーガンにも決して負けていないクリフォード・ブラウン直系のアドリブが冴えわたり! これにはエリック・ドルフィーも必死にならざるを得ないわけですが、そこで案外と保守的な展開を演じているのは興味深々でしょう。
 ですからリチャード・ワイアンズのハードバップピアノが、尚更に素晴らしく輝くんですねぇ~♪ もちろんロイ・ヘインズのドラミングもテンションが高く、演奏全体をビシッと引き締める強烈な存在感を聞かせています。
 肝心のオリバー・ネルソンは、意想外とも思える正統派!?

B-1 The Meetin'
 オリバー・ネルソンのオリジナル曲としては、カウント・ベイシー楽団あたりでも演じられているメロディで、あれっ、そこでのクレジットは?
 まあ、それはそれとして、ここでもゴスペルマナーの粘っこいテーマアンサンブルが実に魅力的で、そのミディアムテンポの高揚感にはワクワクさせられます。
 そしてアドリブパートに入っては一転してのスピードアップ! ドラムスとベースが、まさにハードバップの真骨頂ですし、メンバー各々が全力疾走のアドリブ合戦を披露してくれます。
 中でもエリック・ドルフィーの過激節が良いですねぇ~~♪ さらにリチャード・ワイアンズの小気味よいスイング感とか、それを煽りまくるロイ・ヘインズのスティック、野太いヤケッパチを演じるオリバー・ネルソンも侮れません。 

B-2 Three Secnods
 グッと抑えた感じの思索的な曲と演奏ですが、これこそ、後の名盤「ブルースの真実 (Impules!)」へとダイレクトに繋がるものじゃないでしょうか。
 その静寂を一瞬に破壊するエリック・ドルフィーの先発アドリブの恐ろしさ! さらにミュートで疑似ブッカー・リトルを演じてしまうリチャード・ウィリアムスにも、ハッとさせられます。
 そしていよいよ登場するオリバー・ネルソンの煮詰められたアドリブ、それに続くリチャード・ワイアンズのピアノがビル・エバンス化しているのは、言わずもがなです。
 終盤のソロチェンジのパートでは、熱いアドリブに興じるフロント陣に対し、クールなビートとコードワークの秘密を解き明かすリズム隊が、最高にカッコ良いです♪♪~♪

B-3 Alto-itis
 オーラスは循環コードっぽい進行のビバップ系演奏ですが、そのキモはオリバー・ネルソン対エリック・ドルフィーのアルトサックスバトル!
 熱血のアップテンポに乗って飛びだすエリック・ドルフィーの痙攣的な自己主張、それに続くオリバー・ネルソンの棄てばちな感性が、ある意味では開き直りかもしれませんが、アドリブが進んでいくうちに自らが熱くなってしまうあたりは憎めません。

ということで、アルバム全体に捨て曲無しの名演集だと思います。

既に述べたように、あのウルトラ人気名盤「ブルースの真実」への道程としても興味深い作品です。そしてこの熱気と自然体の雰囲気良さは特筆すべきでしょう。これは毎度お馴染みのサイケおやじ的暴言になりますが、「ブルースの真実」では失われていた何かが、ここには確かにあると感じています。

今となってはエリック・ドルフィーのファン以外には忘れられたアルバムかもしれませんが、機会があればジャズ喫茶でリクエストして聴くのもお勧めです。自宅じゃ、ちょいと胃もたれ……。

ちなみに掲載ジャケットは一目瞭然、歪みがあるのですが、これは以前、裏側にカップ麺を溢した未練のなごり……。ジャケット全体がボワボワになってしまったというお粗末です。まあ、日本盤だから、なんて負け惜しみもせつないわけですが……。

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初買いエバンスが、これ

2009-05-11 09:09:37 | Jazz

The Bill Evans Album (Columbia)

私が初めて買ったビル・エバンスのアルバムで、高校生の頃には、それこそ朝な夕なに聴きまくった1枚です。

まあ、今となってはビル・エバンスがエレピを弾いている事だけが有名な作品かもしれませんが、もうひとつ、演目が全て本人のオリジナルというも、ある意味では画期的!?

告白すればサイケおやじは、ビル・エバンスのアルバムは既にジャズ喫茶で幾つかを聴いていましたし、実際にレコード屋には何枚もあったリーダー盤の中から、あえてこれを選んだ理由は、新譜だったことに加えて、「全曲オリジナル」というのが大きな魅力でした。

このあたりはジャズ者からすれば、スタンダード曲の味わいを知らない愚か者という烙印も当然ながら、当時の私は、例えばビートルズのように、演目は自分達のオリジナルが一番というふうに洗脳されていたのですから、ねぇ……。

録音は1971年5月11&20日、そして6月9日とされていますが、これには諸説あるようです。そしてメンバーはビル・エバンス(p,el-p)、エディ・ゴメス(b)、マーティ・モレル(ds) という当時のレギュラートリオですから、如何にも大手会社の制作らしい安定感と前向きな姿勢が、未だジャズの入口に立ったばかりの私にはジャストミートでした。

A-1 Funkallero
 1950年代に作られていたとされるオリジナル曲で、この時点までには既にズート・シムズやスタン・ゲッツとの共演レコーディングも残されていたわけですが、公式に世に出たのは、このアルバムが最初でしょうか?
 ここではエレピによるビル・エバンスの思わせぶりなスタートからエディ・ゴメスのペースがテーマをリードし、そしてアップテンポのアドリブへと入っていく展開が、なかなかにモダンジャズしています。
 というか、当時のサイケおやじには、この明快で饒舌な4ビートの感覚が、魔法のように感じられましたですね。特にエディ・ゴメスの手数の多いペースワークには幻惑されました。今日的な聴き方としては、失礼ながら音程の危うさとか、その場シノギのアドリブ構成とか、ツッコミどころもあるわけですが……。
 肝心のビル・エバンスは前半でエレピ、そして後半が生ピアノによるアドリブソロを披露して、やはり安定したエバンス節の大サービス♪♪~♪ 特に終盤でのドラムスとのソロチェンジとそれ以降の勢いには熱くさせられます。
 そのマーティ・モレルのドラミングも、一本調子だとか、あまり良くは言われませんが、初めて聴いた私にはロックっぽいフィーリングも感じられるド迫力でした。

A-2 The Two Lonely People
 一転して、如何にもビル・エバンスらしいジェントルなムードが最高の演奏です。
 それは十八番のワルツテンポと自身のアドリブフレーズから作りだしたようなテーマメロディの不思議な和みが、最初のソロピアノのパートからトリオの演奏となっていく展開の中で、少しずつ熟成されていくような♪♪~♪
 微妙な「泣きメロ」を含んだ演奏全体の雰囲気の良さもあって、このアルバムの中では一番好きになりましたですねぇ。
 もちろんエディ・ゴメスのツボを押さえた絡み、またマーティ・モレルの力感溢れるブラシも名演だと思います。

A-3 Sugar Plum
 これも「らしい」と言えば、全くそのとおりという、この時期ならではエバンス節が全開のオリジナル曲で、生ピアノとエレピの使い分けで演じられるアドリブパートは爽やかさ優先主義♪♪~♪
 そして若き日のサイケおやじは、エディ・ゴメスのペースに耳が奪われたというか、それを中心に聴かずにはいられないほどでした。
 というよりも、実はこの時点での私は、あの素晴らしいスコット・ラファロとの決定的な黄金時代を知らなかったというのが本当のところでしたから、モダンジャズといえば典型的な4ビートウォーキングを脱していたエディ・ゴメスに圧倒されたというわけです。

A-4 Waltz For Debby
 ビル・エバンスでは一番有名なオリジナル曲でしょうねっ、これは!
 とはいえ、既に述べたように、私は1961年のライブバージョンはもちろん、その前のスタジオバージョンも聴いたことがなったのですから、今にして思えば、それなりの出来栄えというここでの演奏にも、なんだかなぁ……。
 些か大袈裟な無伴奏ピアノソロのスタートから、良い雰囲気のエレピのアドリブも、前述したスコット・ラファロとの共演バージョンを知ってしまえば、それで終わりというのが正直な感想です。
 ただし「初エバンス」という条件があれば、エディ・ゴメスの熱演も眩しい限り! 前向きなビル・エバンスも流石だと思います。特にヤケッパチ気味の後半が良いですねぇ~♪

B-1 T.T.T.
 「12音階主義」で作られたオリジナルと解説されますが、どこかしら煮え切らないテーマ部分の縺れとか自己満足的なアドリブパートが、なかなかの緊張感を醸し出した名演かもしれません。
 ある意味では冷徹なムードが支配的なアップテンポの展開が、実に心地良いと思います。
 妥協しないエディ・ゴメスのペースワークにエレピで対抗するビル・エバンス、そしてポリリズム的なジャズビートを叩き出すマーティ・モレルというトリオ3者の自己主張には、明らかにモダンジャズの魔法が潜んでいるはずです。
 それゆえに十代だったサイケおやじは心底、夢中にさせられたのではないでしょうか。

B-2 Re:Person I Knew
 1960年代からのオリジナル曲ですから、ここでのエレピの使用は新鮮味を出すための方策でしょうか……? 変則ブルースのようでもあり、モードの見本市のようでもあり、クールなロックジャズのような雰囲気も濃厚に感じられる演奏になっています。
 告白すれば、私は既にマイルス・デイビスの「In A Silent Way (Columbia)」あたりを聴いていたので、この演奏の途中で、マイルスぼっいミュートのトランペットとかロック系のギターが飛び出してきそうな幻覚を感じたほどです。
 あぁ、この絶妙の浮遊感♪♪~♪
 そしてグイグイと盛り上がっていく終盤の纏まり!

B-3 Comrade Conrad
 これまたビル・エバンスとしかいえないムードが支配的な名曲名演だと思います。
 思索的な和みを追求するテーマメロディの不思議な存在感、自然体のワルツビートでスイングしていく展開は、まさにそれじゃないでしょうか。
 ある意味ではミステリアスな雰囲気から少しずつ霧が晴れていくようなアドリブパートへの流れの良さが、本物のジャズを聴いているという充足感に繋がるようです。
 そしてビル・エバンスはここでも前半は生ピアノ、そして後半はエレピと使い分けていますが、案外と個性が出しにくいエレピという楽器で、きちんとエバンス節をテンコ盛りにしているのは流石!

ということで、突然にジャズモードが復活したサイケおやじです。

決して名盤扱いにはされていないアルバムですが、それでも私をジャズ天国へと導いた1枚として、今もって時々は聴きたくなるんですよねぇ~♪

ちなみに最初に買ったのは、当然ながら日本盤でしたが、後にアメリカ盤と聴き比べてみると、その音のモヤモヤ感がエレピの音色の魅力と絶妙に合っているんですよ♪♪~♪ もちろん若い頃の思い出という美しき十代の感性もありましょうが、すっかり中年ド真ん中となった現在でも、この感覚は大切な宝物なのでした。

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タル・ファーロウの必然

2009-04-24 11:33:34 | Jazz

Tal Farlow Quartet (Blue Note)

ジョン・マクラフリンを聴いていると、この人も聴きたくなるのが必然のタル・ファーロウ!

というのは、決してサイケおやじだけの連想ゲームではないでしょう。実際、ジョン・マクラフリンの高速フレーズの元ネタは、タル・ファーロウの十八番と重なりあう印象が打ち消せません。

そこで取り出したのが本日ご紹介の1枚で、ブルーノート吹き込の10インチ盤という事実はヴァーヴの諸作が有名なことを鑑みれば意外な気もしますが、実はタル・ファーロウは同レーベルに、これ以外にもハワード・マギー(tp) のセッションに参加した録音もありますから、これもアルフレッド・ライオンが流石のプロデュースという名盤になっています。

録音は1954年4月11日、メンバーはタル・ファーロウ(g)、ドン・アーロン(g)、クライド・ロンバルディ(b)、ジョー・モレロ(ds) というカルテットで、これはおそらくタル・ファーロウにとっての初リーダーセッションと思われます。

A-1 Lover
 モダンジャズではアップテンポ演奏の定番演目というスタンダード曲ですから、いきなりシャープなブラシでスピード感を極めつけるジョー・モレロの存在が怖いほど! そして2本のギターによる落ち着いたテーマアンサンブルから、タル・ファーロウが猛烈な勢いのアドリブで突進する展開には絶句です。
 いゃ~、本当に凄いとしか言えませんねぇ~~♪
 超絶技巧というか、実は手が大きかったタル・ファーロウでなければ弾けないと思われる難フレーズの乱れ打ちは痛快至極です。
 またジョー・モレロの正確無比にして凄味さえ感じさせるブラシのドラミングも天才の証明ですし、サイドギターで参加のドン・アーロンも要所でのツインリードや装飾フレーズ、さらにコード弾きのサポートも縁の下の力持ちとして侮れません。
 モダンジャズの奥の手っぽいエキセントリックな面白さ、そして微妙な隠し味となっているタル・ファーロウのハードボイルドな気質には、きっと圧倒されると思います。

A-2 Flamingo
 これも有名スタンダードとして、その和みのメロディが印象的な名曲ですから、タル・ファーロウはミュートとハーモニスクを巧みに使った名人芸のギターワークでテーマを聞かせた後、豪快なフレーズと繊細なフェイクを上手く対比させながら、本当に会心のアドリブを披露しています。
 サイドギターとのコンビネーションも素晴らしく、テーマアンサンブルから演奏全体の展開は、後のベンチャーズも8ビートに変換流用したことが、今となっては明らかだと思います。
 同曲のジャズバージョンとしては、聴くほどに味わいが深まる大名演じゃないでしょうか。

A-3 Splash
 タル・ファーロウのオリジナル曲ですから、テーマメロディとアンサンブルは相当にモダンジャズ本流の過激さがいっぱい! 幾何学的な旋律とクールな味わい、さらに躍動的なノリは、如何にもビバップがハードバップに変わりゆく姿だと思います。
 しかしそれを軽やかな雰囲気にしてくれるのがジョー・モレロのスマートなドラミングで、まさに天才的なリズム感は4ビート天国♪♪~♪ それだけ聴いていても快感にシビレますよ。
 そしてさらに凄いのがタル・ファーロウのアドリブラインの歌心です。不思議なことに、このセッションではスタンダード曲を演じるとエキセントリックな早弾きという意地悪をやりますが、逆にオリジナル曲になるとテーマメロディよりも歌いまくったアドリブフレーズを連発してくれるんですねぇ♪♪~♪ これは完全に意図的なものだと思いますし、それがこの演奏には特に顕著です。
 もちろんツインギターによるアンサンブルも流石に楽しめるのでした。

B-1 Rock 'N' Rye
 これもタル・ファーロウのオリジナルモダンジャズの決定版!
 2本のギターが流石のテーマアンサンブルからナチュラルにアドリブへと移行していくあたりは、本当にジャズを聴く快感だと思います。
 そしてタル・ファーロウのギターは早弾きとメロディフェイクの絶妙なる融合を披露して秀逸! 悪魔の音楽としてのジャズ、その魅力のひとつであるグルーヴィなムードが横溢し、しかしバックのリズム隊はクールな感性という対比の妙も素敵です。
 ミディアム・テンポをスカッとスイングさせるジョー・モレロのブラシ、そして後半でのツインギターの絡みも最高ですし、最後の最後で効果的なエコー処理が、これまたニクイところでしょうねぇ。 

B-2 All Through The Night
 あまりにも有名なコール・ポーターの素敵なメロディが、タル・ファーロウの絶妙なフェイクとギターの魔術によって素晴らしく演じされています。とにかく流れるように進むバンドのスイング感が、まず絶品! もちろんそれはジョー・モレロの完璧なブラシがあればこそですし、何の淀みもごまかしも無いタル・ファーロウのギターも歌いまくって止まりません♪♪~♪
 あぁ、こんなにギターが弾けたら、本当に楽しいでしょうねぇ~♪
 もちろん演じている本人は必死の集中力なんでしょうが、それよりも余裕というか、極めて自然体のアドリブは神業としか言えません。

B-3 Tina
 オーラスもまた、タル・ファーロウのオリジナルですが、このグルーヴィでクールな感性は東西ジャズスタイルの見事な融合かもしれません。明解なベースのウォーキングからツインギターのアンサンブル、そして4ビートから瞬時にラテンリズムを敲き分けるジョー・モレロの名人芸を経て、いよいよタル・ファーロウのアドリブは冴えわたりです。
 う~ん、この演奏でも、シンプルにしてコピーが極めて難しいフレーズばっかり弾いてくれますねぇ。しかも絶妙の歌心がさらに素敵です。

ということで、全6曲に駄演無し!

ヴァン・ゲルダーの録音も素晴らしく、特にジョー・モレロの最高演奏をしっかり確認出来るのは嬉しいプレゼントです。

またサイドギターのドン・アーロンは、ほとんど無名の存在ながら、上手くタル・ファーロウに合わせるジャズセンスは一流だと思いますし、地味ながらバンドをしっかりとスイングさせているベースのクライド・ロンバルディもなかなかの実力者です。

そういうカルテットにあって、アドリブパートの美味しいところを全く独り占めしたようなタル・ファーロウではありますが、それもここまで凄かったら素直に脱帽するしかありません。

ジョン・マクラフリンは、きっとこれを聴いていたに違いない!

これは邪推ではないと、私は思うのですが……。

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ジョン・マクラフリンのジャズって!?

2009-04-23 13:26:13 | Jazz

Extrapoaltion / John McLaughlin (Polydor)

イギリス産ジャズロックといえば、私の世代というか、実は私だけかもしれませんが、やはりジョン・マクラフリンを避けては通れません。

皆様も良くご存じのように、このギタリストはマイルス・デイビスの「In A Silent Way」や「Bitches Brew」あたりの電化期アルバムへ参加を経て有名になり、次いでトニー・ウイリアムスのライフタイムでフリーロックをやらかしてから、急速に注目されたようですが、サイケおやじにとっては、あのマハビシュヌオーケストラ! 特に名盤「火の鳥」で目覚めたようなもんですから、それ以前のあえてジャズ寄りの演奏は後追いで確認したようなものです。

で、このアルバムもそうして邂逅した1枚で、ジョン・マクラフリンにとっては初リーダー作だと言われています。

録音は1968年、メンバーはジョン・マクラフリン(g)、ジョン・サーマン(bs,ss)、ブライアン・オッジス(b)、トニー・オックスレー(ds) というカルテットで、演奏そのものは極めてアコースティック! 普通の正統派モダンジャズの響きが大切にされています。

A-1 Extrapolation
A-2 It's Funny
A-3 Argen's Bag
A-4 Pete The Poet
A-5 This Is For Us To Share

 A面は一応、上記の曲が演じられていますが、ひとつひとつがモダンジャズとしては比較的短いトラックであり、それがLP片面をブッ通して聴かれるように構成されています。つまり曲間が無いというか、実際には独立して演奏されたかもしれない曲が違和感無く、ひとつの流れになっているのです。
 まず冒頭の「Extrapolation」は所謂新主流派がモロ出しとなった幾何学的なテーマメロディ、そして絶えず変化していく4ビートか暗黙の了解的に演じられ、それはモードやフリーに近い中身なんでしょうが、ジョン・マクラフリンのギターは既成の概念から外れています。なんというか、メロディの楽しみを否定しているような、それでいて実にビート感がはっきりしたフレーズは音譜過多症候群に加え、セロニアス・モンクと共通するようなアブナイ雰囲気のコードワーク!
 はっきり言えば、あくまでも正統派から抜け出せないジョン・サーマンが気の毒になるほどです。
 それが一端収束し、穏かなムードの中で聞こえてくるのが、続く「It's Funny」という仕掛けなんですが、これがチャールズ・ミンガスの「Goodbye Pork Pie Hat」のようでもあり、チッコ・コリア系のスパニッシュモードのようでもあり、生真面目にそれを解釈していくジョン・サーマンのソプラノサックスが不思議な「泣き」を演じています。
 しかしジョン・マクラフリンのギターは全く容赦無し! 一定の文法に基づいているのは感じられますが、ロックもジャズも関係ねぇと主張する無戸籍なアドリブが強烈です。それゆえに演奏を上手く纏めようとするジョン・サーマンのラストテーマの吹奏が結果オーライというわけですが……。
 その静かなムードの中に響くのが、全くジョン・マクラフリンとしか言えないギターのコード弾き♪♪~♪ ようやく一番にジャズっぽい演奏となるのが「Argen's Bag」です。そしてジョン・サーマンのバリトンサックスが熱く咆哮すれば、ジョン・マクラフリンのギターはディープな思索に没頭し、ベースとドラムスはジャズのビートを大切にしながらも、その本音はロックに傾斜して良い感じ♪♪~♪
 それが何時しか高速4ビートへと転換し、実にテンションの高い演奏となるのが「Pete The Poet」ですが、ここではトニー・オックスレーのドラミングが、ほとんどトニー・ウィリアムスというのが意味深でしょうねぇ~。それゆえにジョン・マクラフリンも疑似ライフタイムを演じていますし、ジョン・サーマンの自虐的なバリトンサックスや唯我独尊のペースワークに専心するブライアン・オッジスも好演だと思います。
 こうして突入するクライマックスはトニー・オックスレーのドラムソロ! いゃ~、本当にトニー・ウィリアムスですよっ! ですから続く「This Is For Us To Share」の導入部のインタープレイを聴かされると、マイルス・デイビスが出てきそうな錯覚に襲われるんですが、実際に聞こえてくるのは、ジョン・コルトレーンが演じそうなスピリッチャルなメロディ♪♪~♪ もちろんバックが厳かに盛り上げる中、ジョン・サーマンが内側からこみあげてくるが如き、魂の叫びです。あぁ、この重厚な響きこそが、1960年代末期のモダンジャズだと思います。実際、これで身体に力が漲ってくるのは、その当時を体験した世代でしょうねぇ。

B-1 Spectrum
B-2 Binky's Beam
B-3 Really You Know
B-4 Two Piece
B-5 Peace Piece

 さて、そうしたA面の構成はB面にも引き継がれ、つまりこちらもLP片面をフルに使った演奏として聴かされてしまいます。
 それはアンサンブル主体の短い演奏という「Spectrum」に始まり、そのテンションの高い4ビートが、このアルバムでは一番に長いトラックの「Binky's Beam」に引き継がれますが、その場面転換の自然なムードが、もう最高です。ほとんど「In A Silent Way」の予行演習という感じさえするんですよ♪♪~♪ 暗黙の了解に基づいて躍動するブライアン・オッジスのペースに煽られるように燃え上がるジョン・マクラフリンのギターからは、青白い炎のようなクールで熱いフレーズが溢れ出して止まらず、またジョン・サーマンのバリトンサックスが煮詰まりを逆手に活かした名演を聞かせてくれますから、もう、辛抱たまらん状態! それがクールダウンして始まる「Really You Know」の優しい雰囲気も用意周到です。
 そして中盤からの正統派4ビートは、まさに安心感でしょう。実に上手いと思いますねぇ~♪ イヤミが無いといえば嘘になりますが、憎めないのも事実です。
 さらにそんな諸々をブッ壊して爽快に突っ走るのが、続く「Two Piece」の大熱演! テーマが提示された直後に乱れ打ちされるジョン・マクラフリンのコード弾きの大嵐には溜飲が下がりますよ。そしてバンドが一丸となってフリーに接近していくアドリブパートの物凄さは、筆舌に尽くし難いものがあります。う~ん、それにしてもトニー・オックスレーのドラミングは、セッションを通してトニー・ウィリアムスにクリソツなんですが、名前が同じだからといって、それで良いのか!? いや、これで良いんですねぇ~~~♪
 こうして迎える大団円は、ジョン・マクラフリンならではインド趣味というか、生ギターの音色が逆にハイテンションという独演会が短くあって、感動の余韻が何時までも漂うのでした。

ということで、何度聴いても凄さに圧倒されるアルバムです。

おそらくこの時代では、最もブッ飛んだジャズだったんでしょうねぇ、これは!?

主役のジョン・マクラフリンのギタースタイルも、この時代では誰の真似でも無い、独自のスタイルが既に完成されていると思いますが、ちなみに原盤裏ジャケットにはアコースティックボディのセンターホールにアタッチメントを装着してエレキ化したギターを弾く本人の姿があり、これは当時のフォークやロックでは既に一般的な使用法でしたが、これを堂々とジャズに使っていたとしたら、なかなか画期的だったかもしれません。

う~ん、斬新なスタイルは、こういうところにも要因があるのですねぇ。

我が国の推理作家、島田荘司の書く名探偵・御手洗潔は1960年代からジョン・マクラフリン系のギターを弾いていたそうですが、きっとこんな感じなんでしょうか?

まあ、それはそれとして、ここで聞かれる演奏は原則として4ビートが主体とはいえ、ジョン・マクラフリンのアドリブパートに限っては、もしバックがそのまんまロックビートだったとしても、何ら変わらない方法論で押し通すように思えます。

ジョン・マクラフリン、やっぱり凄くて最高!

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デクスターの上り調子

2009-04-21 14:39:16 | Jazz

The Chase / Dexter Gordon (Dial / Spotlite)

元祖モダンジャズのビバップは、一部の尖鋭的な黒人ミュージシャンによって、ニューヨークのクラブで、それも営業時間外に生み出されたそうですから、所謂アングラの黒人音楽ということで、そんなものをリアルタイムで楽しむファンなんてものは、相当にスノッブな人達だったと思います。

もちろんそれは白人が中心だったでしょう。なにしろ前述したクラブには黒人なんて入れないのが当時の世相でしたし、そもそも音楽産業が白人によって主導されていたのです。

そんな事情ですから、ビバップが新しくて凄いと気がついた業界にあっても、それを積極的にレコーディングしていく会社は、やっぱりインディーズでしたし、中でも中心人物のチャーリー・パーカーと逸早く契約し、その全盛期を記録したダイアルレコードの功績は計り知れないものがあります。

そして付随して記録されたビバップど真ん中の演奏もまた、素晴らしいものばかり!

本日ご紹介のアルバムは、そうした中からデクスター・ゴードンの当時のSP音源を復刻したアナログLPですが、これが編纂された当時のジャズ業界はモダンジャズがフリーやクロスオーバーに毒され、まさに混迷を極めていた1970年代ということで、実はその頃から活発になっていたネオバップと呼ばれるハードバップリバイバルを根底から支えた良い仕事でもありました。

で、このアルバムは当然ながら短いSP音源を纏めたものですから、様々なバンドによる演奏が集められています。

 A-1 The Chase (1947年6月12日録音)
 A-2 The Chase (1947年6月12日録音)
 A-3 Mischievous Lady (1947年6月5日録音)
 A-4 Lullaby In Rhythm (1947年6月5日録音)
 A-5 Horning In (1947年12月4日録音)
 B-1 Chromatic Aberration (1947年6月12日録音)
 B-2 It's The Talk Of Town (1947年6月12日録音)
 B-3 Blues Bikini (1947年6月12日録音)
 B-4 Ghost Of A Chance (1947年12月4日録音)
 B-5 Sweet And Lovely (1947年12月4日録音)
 B-6 The Duel (1947年12月4日録音)

1947年6月5日 / Dexter Gordon Quintet
 A-3 Mischievous Lady
 A-4 Lullaby In Rhythm

 メンバーはデクスター・ゴードン(ts)、メルバ・リストン(tb)、チャールズ・フォックス(p)、レッド・カレンダー(b)、チャック・トンプソン(ds) という、なかなか素敵なバンドになっています。特にトロンボーンのメルバ・リストンは当時から注目されていた女性プレイヤーであり、またドラマーのチャック・トンプソンは後にハンプトン・ホーズが全盛期のレギュラートリオで有名になるわけですが、すでにこの当時から西海岸ではトップの存在だったと思われます。
 そしてデクスター・ゴードンは既に様々なバンドに加入し、全米各地で高い評価を得ていた新進気鋭であり、その頃にはチャーリー・パーカー、ディジー・ガレスビー、パド・パウエルという超一流メンバーとのレコーティングも残していましたから、ようやく出身地のロスに戻ってきたところを西海岸が拠点のダイアルレコードが契約したのも当然が必然でした。つまりレーベルオーナーの長年の願いが叶ったセッションということで、バンドも気合いが入った大熱演!
 と書きたいところですが、実はこの頃からデクスター・ゴードンは悪いクスリにどっぷり……。この日の調子も決して良くなかったと言われているとおり、通常は4曲を録音するのが当時の慣習だったところを、わずか2曲でセッションを終了させているのは、その所為だと思われます。
 しかし如何にもデクスター・ゴードンらしいオリジナル曲の「Mischievous Lady」では、堂々としたテナーサックスの存在感が圧倒的に素晴らしく、ここで聞かれるミディアムテンポのグルーヴは永遠に不滅でしょう。またメルバ・リストンのトロンボーンは、知らなければ女性だとは思えない力強さがあります。ちなみに曲タイトルからして、この「Mischievous Lady」はメルバ・リストンへ捧げられているのでしょうか?
 そしてスタンダード曲の「Lullaby In Rhythm」は対位法を使ったテーマアンサンブルのアレンジが、ビバップから一歩先んじた雰囲気で感度良好♪♪~♪ デクスター・ゴードンのアドリブも有名曲メロディの引用という得意技が頻出していますし、ノリノリの楽しさが最高です。

1947年6月12日 / Dexter Gordon & Wardell Gray Quintet
 A-1 The Chase (false start)
 A-2 The Chase

 これが歴史に残るテナーバトルの大熱演!
 メンバーはデクスター・ゴードン(ts) とワーデル・グレイ(ts) の二枚看板にジミー・バン(p)、レッド・カレンダー(b)、チャック・トンプソン(ds) という強靭なリズム隊が参加していますが、彼等は当時、ロスでは人気のバトルチームでした。このアルバムの裏ジャケットの解説では、ダイアルレコードのオーナーだったロス・ラッセルの証言が熱く語られているとおり、それをきちんとスタジオ録音で残してくれた功績は偉業としか言えません。
 しかもマスターテイクとなった「A-2」は、当時の常識外という7分近い演奏時間! これをSPの両面に分けて発売したわけですが、となると当然、レコーディングにはテープが使われていた証となるのでしょうか?
 肝心の演奏は、まず最初の失敗スタートテイクでスタジオの雰囲気が楽しめるというミソがニクイばかり♪♪~♪ 演奏のムードを指示するデクスター・ゴードンらしき人物の声が、なかなかシブイです。
 そしてついに始まるマスターテイクでは、既にイントロからテーマ部分で熱気が充満していて、実に良い感じです。アドリブパートでは先発のデクスター・ゴードンがギスギスした音色のハードなフレーズなのに対し、続くワーデル・グレイは滑らかなフレーズとソフトな音色で応戦するという両者の個性も際立っています♪♪~♪ もちろんそこには演奏が進むにつれ、バトルのアドリブ小節が短くなるという「お約束」が用意されていますから、本当に熱くなりますよっ!
 当時のダイアルレコードでは、これが発売直後から爆発的な人気盤となり、最高の売上を記録したというのも納得出来ます。

同年同日 / Dexter Gordon Quartet
 B-1 Chromatic Aberration
 B-2 It's The Talk Of Town
 B-3 Blues Bikini

 これは「The Chase」と同じ日に行われたセッションですが、前述のメンバーからワーデル・グレイが抜けたワンホーン演奏ということで、絶好調のデクスター・ゴードンが楽しめます。
 まず「Chromatic Aberration」は何とも凄い曲タイトルどおり、相当に複雑なコードを使っているであろう、デクスター・ゴードンのオリジナルですが、作者本人のテナーサックスを筆頭に、なかなかリラックスした仕上がりです。特にラストが素敵ですねぇ~♪
 そして続く「It's The Talk Of Town」は味わい深いスタンダードの歌物曲ということで、デクスター・ゴードンが自身のキャリアの中でも畢生の名演じゃないでしょうか。ふくよかなテナーサックスの鳴り、そして歌詞を知らないバラードは吹かないとされるデクスター・ゴードンの歌心は絶品♪♪~♪ 本当に何時までも聴いていたいです。
 さらに即興的なブルースの「Blues Bikini」では、ハードボイルドなコブシが実に心地良いテナーサックスの名人芸! タフで懐の深い表現が最高だと思います。

1947年12月4日 / Dexter Gordon & Teddy Edwards Quintet
 A-5 Horning In
 B-4 Ghost Of A Chance
 B-5 Sweet And Lovely
 B-6 The Duel

 前述した「The Chase」のヒットから続篇として企画されたのが、このセッション!
 メンバーはデクスター・ゴードン(ts)、ジミー・ロウルズ(p)、レッド・カレンダー(b)、ロイ・ポーター(ds) というカルテットに、ワーデル・グレイの代役として参加したのが、当時の西海岸では注目株だったテティ・エドワーズです。
 そのテナーバトル演奏は2テイクが完成され、7分半にも及ぶ長いテイクが「Horning In」、一方は短いといっても5分半ほどの「The Duel」、その二通りの曲として発売されたようです。
 肝心の仕上がりは、残念ながら名演の「The Chase」には及ばないと個人的には思っていますが、しかし全篇に横溢するガサツな熱気とか、リズム隊の好演は魅力的です。ハードな音色を聞かせるのがデクスター・ゴードン、やや灰色のトーンで遮二無二ブローしていくのがテディ・エドワーズという聞き分けも容易だと思いますが、アドリブの閃きという点ではデクスター・ゴードンに軍配があがるのではないでしょうか。
 その意味で、デクスター・ゴードンがワンホーン演奏の真髄を聞かせてくれる「Ghost Of A Chance」と「Sweet And Lovely」は、歌物スタンダード曲のモダンジャズ的解釈として最高峰! 絶品の歌心と繊細なメロディフェィクは力強くて、さらに優しさが滲み出た決定的なものだと思います。

ということで、何れもSP時代の復刻演奏ですから、元々のノイズが針音と連動して古臭く聞こえるかもしれません。しかし演じられているものは完全なる本物! そう断言して異論は無いと信じています。

残念ながら、これほど素晴らしいジャズを聞かせていたデクスター・ゴードンは、既に述べたように、この頃から違法なクスリの悪癖から逃れられず、1950年代後半のモダンジャズにとっては最高の時代に活躍出来ませんでした。

もちろん復帰後の演奏も唯一無二の素晴らしさで、さらに人生の機微を表現するが如き存在感は偉大だと思います。しかしここで聞かれる上昇期の姿は眩いばかり! それゆえに後の逼塞期が悔やまれるわけですから、なおさらにこのアルバムを私は愛聴しています。

ちなみにここには一応、オリジナルのマスターテイクなるものが収められていますが、後年になって発掘発売された別テイクも、当然ながら素晴らしい世界遺産! おそらくCDには上手く纏められているはずですから、存分にお楽しみくださいませ。

冒頭で述べたネオバップでは、特に人気が高かったデクスター・ゴードンは、最初っから凄い人だったと、聴く度に感動させられます。

コメント (4)
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オイゲン・キケロの憎さ百倍

2009-04-19 11:26:26 | Jazz

Rokoko-Jazz / Eugen Cicero (MPS)

クラシックの名曲をジャズ化する試みは古来、いろいろとありますが、その中の最高峰といえばルーマニア人のピアニスト、オイゲン・キケロの諸作だと思います。

当然ながらクラシックの素養を強く感じさせるピアノテクニックに加え、強靭なスイング感も兼ね備えたそのスタイルは、失礼ながら同様の演奏をやっているジャック・ルーシェとは一線を隔するものと思います。

さて、このアルバムはオイゲン・キケロがブレイクする契機となった1枚で、録音は1965年3月14日、メンバーはオイゲン・キケロ(p)、ペーター・ウィッティ(b)、チャーリー・アントリーニ(ds) という正統派ピアノトリオ♪♪~♪

ちなみにアルバムタイトルにある「Rokoko」とは、我が国で言う「ロココ」であり、18世紀フランスの宮廷美術をルーツとする芸術様式を指すと思われますが、その優雅なムードとモダンジャズの魅力が実に上手く融合した演奏は、まさにタイトルに偽り無し! 演目も一度は耳にしたお馴染みのメロディばかりです。

A-1 Solfeggio C-Moll / ソルフェジオ・ハ短調
 ヨハン・セバスチャン・バッハの息子だったカルル・バッハが書いたピアノ練習曲として有名なメロディが、アップテンポのモダンジャズに変奏されるのもムベなるかな!
 そのテーマ部分の一糸乱れぬアンサンブルを聴いているだけで、このピアノトリオの完成度に圧倒されますが、もちろんオイゲン・キケロのピアノはアドリブも実に達者です。流れるようなフレーズ展開には、当たり前のようにクラシックの要素とジャズのドライブ感が絶妙にミックスされているんですねぇ~♪
 相当に考え抜かれて、しかも煮詰められた、言わば「存在のアドリブ」なのかもしれませんが、その爽やかさは気持ち良いかぎりですし、本当に心が洗われるというか、こういうピュアハートも「あり」でしょうね♪♪~♪

A-2 Sonata C-Dur / スカルラッティのソナタ・ハ長調
 これも有名なメロディで、本来はハープシコードで演じられることも多い名曲ですが、ここではピアノトリオの、それもジャズならでは即興をイヤミなく入れた快演になっています。
 穏やかなスタートから、やがて白熱のアップテンポとなる頃には、オイゲン・キケロのピアノがスイングしまくった桃源郷♪♪~♪ どっかで聞いたことがあるような、琴線に触れるアドリブフレーズの連発には溜飲が下がりますし、原曲メロディを大切にしたフェイク、ピアノトリオしてのアレンジの完成度も素晴らしいですねぇ~♪

A-3 L'adolescente / 小さな一生
 フランソワ・クープランが書いたロココ様式を代表する素敵なメロディ♪♪~♪ きっと誰もが、一度は耳にした名曲だと思いますが、それを爽やかにフェイクしていくオイゲン・キケロのセンスの素晴らしさ! 全くイヤミの無いところが逆にイヤミになるような感さえあるほどです。
 そしてアドリブパートでの流麗なアップテンポの展開は、溢れる泉の如き新鮮なフレーズの連続ですが、後半からはグッとテンポを落とし、グルーヴィなハードバップがど真ん中! あまりにもジャズ者のツボを上手く刺激しますから、憎さ百倍としか言えません。
 こういうところが好き嫌いに繋がるんでしょうねぇ~。しかしこれは素敵ですよ、実際! 私は素直に快感を覚えて、大好きです♪♪~♪

B-1 Bach's Softly Sunrise
 これはオイゲン・キケロのオリジナル曲ですが、タイトルどおり、導入部にはバッハのトッカータ・ニ短調が使われ、さらに主題にはベンチャーズでお馴染みの某ヒットメロディが入っていたりと、なかなかのサービス精神が嬉しいところ♪♪~♪
 そして全体は強靭なドライヴ感に満ちたモダンジャズピアノの楽しさが横溢した快演なんですから、たまりません。あぁ、このスイングしまくって、さらにファンキーな味付けも嬉しいフレーズ展開♪♪~♪ しかも適度なコードアウトまでも演じたりする稚気がニクイですねぇ~♪
 ピアノテクニックも凄いの一言で、このあたりはアンドレ・プレヴィンにも共通するところではありますが、オイゲン・キケロには悪魔の音楽としてのジャズというグルーヴが、これでもかとテンコ盛り!
 終盤のバロック系ブロックコードとでも申しましょうか、そのクライマックスの上手すぎる展開には、思わず興奮させられますよっ! 全く最高です。

B-2 Fantasie In D-Moll / 幻想曲・ニ短調
 これまた有名なモーツァルトの名曲ですから、オイゲン・キケロにしても油断は禁物! そこで神妙にオリジナルメロディをフェイクしていく手際の良さには、幾分のイヤミも感じられるほどです。
 ただし、こういう繊細な演奏が他のピアニストに出来るかといえば、けっしてそうではないでしょう。原曲にある4つのパートを上手くジャズ化し、抜群のテクニックで爽やかに、そしてグルーヴィに、さらに楽しく演じていくピアノトリオの醍醐味が満喫出来ると思います。
 実に楽しいですよっ♪♪~♪

B-3 Erbarme Dich, Mein Gott / 神よ、あわれみたまえ
 これも有名すぎるバッハの大名曲ゆえに、こちらもあらぬ期待をしてしまうのですが、オイゲン・キケロは凝りすぎることなく、極めて自然体にテーマメロディを弾きながら、ジャズ的な味わいを大切に演じています。
 その幻想的な味わいの深さ、そしてせつないメロディ展開を上手く構成していく全体の流れの潔さは、本当に圧巻だと思いますねぇ~♪ 時代的にも絶妙に入っている新主流派っぽい響きも要注意かもしれませんし、また逆にオスカー・ビーターソン流儀のダイナミックな表現、大袈裟にしてクサイ芝居も結果オーライという、まさにアルバムの締め括りにはジャストミートの名演です。

ということで、これは絶大なる人気盤でしょう。

オイゲン・キケロの抜群のテクニックを満喫出来るピアノの爽快感、そしてペースとドラムスの地味ながら上手いサポートが一体となっていますから、とっつき易く、何時聴いてもシビレます。おそらくクラシックのジャズ化作品としては、最も成功した中のひとつじゃないでしょうか?

ちなみにオイゲン・キケロは、これが出世作と言われているとおり、以降に膨大な録音を残していきますが、その中には当然ながらクラシック以外の演目もありますから要注意でしょうねぇ。私は以前、ドイツでライブを聴きましたが、その時はバート・バカラックの名曲等々も、実に上手くクラシック調のジャズにしていましたし、それがぴったりの演奏スタイルは大きな魅力だと思います。

ところで昨夜は仕事関係の宴会に出て、資本家や政治屋のギラギラした欲望の中に紛れ込んでいたわけですが、私にしてもお金は大好きですが、奴らの話はそんな私にしてもムカムカするほど生臭く、辟易させられました。

そこで今朝は爽やかな気分を求めて、このアルバムを出してしまったわけですが、それにしても久々にオイゲン・キケロの中毒に陥りそうで、我ながら苦笑しています。

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