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OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ルー・ドナルドソンの素直にノレば、いいじゃなぁ~~い♪

2011-08-15 15:41:13 | Jazz

Good Gracious! / Lou Donaldson (Blue Note)

世の中、なるべくならば嘘の無いほうが良いし、バカと呼ばれようとも、やはり真っ正直な人に好感を抱いてしまうサイケおやじが好きなミュージャンのひとりが、ルー・ドナルドソンというジャズプレイヤーです。

ご存じのとおり、ルー・ドナルドソンはハードバップ創成に尽力し、きっちりと成果を残した名演名盤を残しながら、その全盛期には更に黒人感覚を強く打ち出したR&B風味のモダンジャズ~ソウルジャズへと歩みを進めてしまった事から、特に我国の評論家の先生方やガチガチに一本気の愛好者には軽く扱われていたのが、1970年代までの実相でした。

告白すれば、本格的にモダンジャズを聴き始めた頃のサイケおやじは、こういう人を好きだと言っては、いけないのか……。なぁ~んて本気で悩んだ(?)事もあったんですよ、今となっては笑い話なんですが。

さて、そんな中で本日ご紹介のアルバムはジャケットやタイトルが明示してくれるとおり、なかなか正直な楽しさが溢れる1枚♪♪~♪

録音は1963年1月24日、メンバーはルー・ドナルドソン(as)、ジョン・パットン(org)、グラント・グリーン(g)、ペン・ディクソン(ds) という、実にゴスペルファンキーな4人組が快演を聴かせてくれますよ♪♪~♪

A-1 Bad John
 シンプルなリフを使ったモダンジャズのブルース大会なんですが、まずは独得の残響音で叩いてくれるペン・ディクソンのゴスペルっぽいドラミングに耳を奪われてしまいます。
 う~ん、なんと言うか、ちょいとガサツでノリの良いシャップルビートが実に快適なんですねぇ~~♪
 ですから、グイノリのオルガンで躍動的なアドリブを展開するジョン・パットン、調子良すぎる合の手や十八番の針飛び三連フレーズを惜しげも無く披露するグラント・グリーンの骨太ギターが抜群の露払いを務めた後に登場するルー・ドナルドソンは、まさに親分の貫録!
 初っ端のオトボケフレーズもニクイばかりですが、パーカー派の面目も立派に堅持しつつ、随所に分かり易いキメを織り込むあたりは、如何にも大衆芸能の本質かと思います。

A-2 The Holy Ghost
 そして、さらにゴスペルフィーリングをモロ出しにするのが、このルー・ドナルドソンのオリジナルで、どっかで聞いたことがあるような、アメリカ南部風味の長閑なメロディは好印象♪♪~♪
 それをゆったりしたワルツタイムの粘っこいジャズビートで変奏していくですから、ジョン・パットンのオルガンは黒人教会のムードを我々に知らしめてくれるような熱演ならば、幾分肩の力が抜けたグラント・グリーンのギターも良い感じですし、ユルユルしながら実はビシッとタイトなペン・ディクソンのドラミングもジャストミートしています。
 ところが、肝心のルー・ドナルドソンが相変わらずのノーテンキ??? ほとんど何も考えていない場当たり的な吹奏は、確かに各方面からは顰蹙かも……。と思わせるに充分な遣り口が本当は狙いどうりなんでしょうねぇ~~~♪
 なにか非常に力が抜けていく心地良い倦怠が、大いに魅力の演奏だと思います。

A-3 Cherry
 しかし、A面ラストにはスタンダード曲を素材に、如何にも「らしい」ルー・ドナルドソンが堪能出来ますよ♪♪~♪
 なにしろバックのリズム隊がグイノリの4ビートを提供すれば、リラックスした中にも真っ当なビバップフレーズしか吹かないルー・ドナルドソンが屹立しているんですから、これぞっ! ハードバップのマンネリ的快感と言っては、贔屓の引き倒しでしょうか。
 個人的には、こういう演奏こそが、何も考えないでやってしまったに違いないと思うのですが、それでジャズファンの心を掴んでしまうあたりこそ、ルー・ドナルドソンの真骨頂なのかもしれませんねぇ。

B-1 Caracas
 グラント・グリーンがイントロで刻む、なんとも不器用なボサノバのリズムギターが逆に味わい深い演奏を見事に導いてしまうという、いやはやなんともの結果オーライが憎めませんねぇ~~♪
 実は演目そのものは、既に1954年夏のセッションで痛快なラテンジャズの決定版を吹き込んでいたルー・ドナルドソンの十八番ですから、ボサノバがブームとなっていたこの時期、あえて再び持ち出す意図も納得は出来るんですが……。それにしても一聴、このダサダサな雰囲気はクールでお洒落というボサノバのイメージとは相当に遊離した仕上がりがイナタイ!
 ところが、全体に滲むユルユルのホンワカムードが、なかなか不思議なムードを醸し出してくれるんですから、これはまさに良い味出しまくりの裏名演じゃないでしょうか。
 何時もながらにノーテンキなルー・ドナルドソン、ちょいと神妙なグラント・グリーン、ジョン・パットンのグビグビ唸るオルガンが気抜けのビールの様に感じられたとしても、それはそれでかなり練られたものだと、聴くほどに思います。
 ちなみに、些か重いボサノバを叩くペン・ディクソンのドラミングが、意外にも演奏を深みのあるものにしているのかもしれませんねぇ。
 こういう倦怠感は、クセになりますよ♪♪~♪

B-2 Good Gracious
 そしてお待たせしましたっ!
 アップテンポでブッ飛ばしていく、このアルバムタイトル曲こそが、ハイライト!
 テーマリフは相変わらずシンプルそのものなんですが、メンバー全員がアドリブパートをメインにしつつも、バンドとしての纏まりを忘れない感じで、つまりは自分以外の演奏を良く聴いていなければ出来ない表現が素晴らしいと思いますねぇ~♪
 まあ、そのあたりは完全に素人のサイケおやじの主観なんですが、それにしてもグラント・グリーンが演じる三連針飛びフレーズの乱れ打ちは痛快そのものですし、グルーヴィな4ビートのベースウォーキングを全面に出したジョン・パットンのオルガンからは、当然ながら絶妙のバッキングとアグレッシヴなアドリブフレーズが連続放射され、それを的確なリズムでサポートするペン・ディクソンは流石の職人芸!
 そこでいよいよ登場するルー・ドナルドソンが大ハッスルなのも必然的の快演なんですが、特筆すべきは、既に時代的には些か遅れ気味の典型的なハードバップをやっていても、そこには何の躊躇いも感じさせないという事じゃないでしょうか。
 サイケおやじが、この演奏を特に愛でるのは、そこに魅力を感じてしまうからなのです。

B-3 Don't Worry 'Bout Me
 オーラスは、まさに「お約束」というスタンダード曲のスローな演奏で、ジャズファンには良く知られた刹那のメロディを悠々自適に吹いてくれるルー・ドナルドソンが存在証明♪♪~♪
 ちなみに、こういう演奏になると、オルガンが雰囲気に流されるというか、些か甘いラウンジムードが醸し出されてしまうので、イノセントなモダンジャズマニアからは軽視される傾向にあるんですが、流石はジョン・パットン! アドリブに入った瞬間のちょいと吃驚させられるような音の構築は狙ったものでしょうか。思わず眠気(?)もブッ飛ばされてしまいますよ。

という事で、データ的にはルー・ドナルドソンが1960年代に一旦ブルーノートを離れる直前最後のリーダーアルバムという所為でしょうか、なにかノビノビとやりたいようにやった感じが強いと思うのは、サイケおやじだけでしょうか。

そのあたりは、パットン、グリーン&ディクソンというリズム隊とのコンビネーションが最高の相性を感じさせてくれる部分とも、絶対に共通しているのかもしれません。

ちなみに件のリズム隊は当時のブルーノートでは様々なセッションに起用されているとおり、ジャズ史的にも優れたトリオだったはずですので、気になる皆様は探索されると面白いですよ♪♪~♪ これまでに拙ブログでもドン・ウィルカーソンの「シャウティン!」、グラント・グリーンの「アム・アイ・ブルー」、そしてジョン・パットンの「オー・ベイビー」や「アロング・ケイム・ジョン」等々を掲載しておりますので、ご一読いただければ、幸いでこざいます。

そこで冒頭に述べたとおり、ルー・ドナルドソンはなかなか自分に正直な演奏を心がけていたように思いますが、この「自分に正直」というのは、極言すれば人生にとって、非常に難しい行いでしょう。

もちろんルー・ドナルドソンだって、緻密に考えてあれこれを演じていたはずですが、そうした目論見とか下心をリスナーに感じさせないナチュラルな感性が、ジャズの本質を体現しているんじゃないでしょうか。

と、本日もまた屁理屈優先のサイケおやじですが、やっぱり聴いているうちに素直にノセられてしまうのが、このアルバムに限らず、ルー・ドナルドソンの大いなる魅力でしょう。

そう思えば、ジャケットデザインのコンセプトが、ますますニクイばかりなのでした。

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ライオネル・ハンプトンの楽しく聴ければ、いいじゃない♪

2011-05-26 16:13:48 | Jazz

Air Mail Special / Lionel Hampton And His All-Stars (Clef / Verve)

何かと暗い話題が多すぎる昨今、実はサイケおやじも様々な局面で煮詰まりを感じています。

しかし、そんな時こそ気分転換にはハッピーな音楽がジャストミート!

そこで本日は、ジャケットからして陽気なアルバムを取り出しました。

ご存じ、ジャズやR&Bの大御所としてエンタメの真髄を極めたライオネル・ハンプトンが名プロデューサーのノーマン・グランツ傘下で奮闘したオールスタアセッションから作られた、実に楽しい傑作盤です。

録音は1953年9月&1954年4月、メンバーはライオネル・ハンプトン(vib)、オスカー・ピーターソン(p)、レイ・ブラウン(b)、バディ・リッチ(ds)、そしてバディ・デフランコ(cl) という偽り無しの凄腕揃い♪♪~♪

A-1 Air Mail Special (1953年9月2日録音 / Quartet)
 レイ・ブラウンのベースソロがイントロになってスタートする、これぞっ、タイトルどおりに爽快なフライングが楽しめるアップテンポの名演です。
 とにかくツッコミの激しいライオネル・ハンプトンのヴァイブラフォンは、ミルト・ジャクソンに比べると相当に金属的な音色なので、時には耳を突き刺す場面も感じられるんですが、しかしこれだけホットなアドリブをやってくれれば結果オーライでしょうねぇ~♪
 もちろん続くオスカー・ピーターソンも十八番の猛烈ドライヴを最初っから全開させ、それがまたライオネル・ハンプトンの闘志を燃え立たせるという丁々発止が、たまりません。
 ですから、クライマックスで炸裂するバディ・リッチの強烈なドラムソロは、なんとブラシでありながら、そのバスドラとのコンビネーションによって、白熱のビートとリズムが大洪水! これでエキサイトしなかったら、ジャズを楽しむ喜びが失われるといって過言ではないでしょう。

A-2 Soft Winds (1953年9月2日録音 / Quartet)
 ライオネル・ハンプトン所縁のベニー・グッドマンが十八番としていたブルースリフとあって、参加メンバーのリラックスしたムードの醸し出し方が良い感じ♪♪~♪
 しかしアドリブパートの本気度は実に高く、猛烈な指使いとグルーヴィーなノリを完璧に融合させるオスカー・ピーターソンから楽しさ優先モードに拘り抜くライオネル・ハンプトンという、まさに名人芸の連続には浮世の憂さも晴れるところです。

B-1 It's Only A Paper Moon (1954年4月13日録音 / Quartet)
 さて、ここからのB面は、いよいよお待ちかねのバディ・でフランコが加わった強烈無比なガチンコセッションですから、お題となった小粋な歌物曲が激しいアップテンポで演じられるのは、これまたひとつのお約束!
 中でも特筆されるのはレイ・ブラウンとバディ・リッチによる柔軟にして剛直なリズムコンビの存在で、そこから発生するジャズビート本来の輝きは圧巻の一言でしょう。
 ですからバディ・デフランコの遠慮会釈の無いビバップクラリネットがエキセントリックに突進し、同じくオスカー・ピーターソンがスピード違反を演じてさえも、終始全体のモダンジャズグルーヴは決して揺るがず、それどころか逆に新しいスタイルを模索している感さえあります。
 ちなみに、ここでは何故かリーダーのライオネル・ハンプトンが参加していないのも、そういう観点からすれば納得出来るのかもしれませんが、サイケおやじの本音としては、やはり御大にも貫録と意気込みを披露して欲しかったところ……。
 ただし、これもまた余人の口出し等、絶対に許されない境地の名演であることに違いは無く、何度聴いても圧倒されるばかりです。

B-2 The Way You Look Tonight (1954年4月13日録音 / Quintet)
 そしてオーラスも、これまたアップテンポで演じられるのが当然の人気スタンダード曲ですから、まさにこのメンツにはジャストミートという思い込みを逆手に活かした、実にハートウォームなスタートがニクイばかり!
 ミディアムテンポで演じられる、その穏やかなフィーリングは、当然ながら歌心に溢れたライオネル・ハンプトンのヴァイブラフォンが決定的なメロディフェイクとアドリブによってリードされますから、続くオスカー・ピーターソンも油断が出来ません。
 しかし、流石はと言うべきでしょうか、じっくり構えたアドリブ構成はもちろんの事、伴奏でのグルーヴィな雰囲気の出し方も本当に上手いですねぇ~~♪
 そしてバディ・デフランコが、これまた素晴らしく、クラリネットならではの音色と所謂パーカーフレーズのミスマッチ(?)がジャズ表街道のど真ん中! これが出来るモダンなプレイヤーは案外と少ないように思いますが、如何なもんでしょう。
 さらに演奏は終盤において、アドリブの集団即興演奏の如き展開に進みますが、あくまでも和み優先の姿勢は、当たり前のように凄いの一言です。

ということで、巨匠が勢ぞろいの豪華セッションですから、その充実度は保証付ながら、何よりも絶対に手抜きしない各々のジャズ魂は流石です。

まあ、そのあたりは生涯に膨大なレコーディングを残している面々ですから、ある意味では手癖とか、マンネリという評価もあることは事実です。しかし、これだけ安定してスリル満点の演奏が出来るミュージシャンが、他にどれだけ居るか? それを考えてみれば、答えは自ずと提示されるはずですし、まずは虚心坦懐に聴くということから始め、そしてあれこれ考察するうちに、自然と演奏にグッと惹きつけられるのがジャズ者の習性じゃないかと思いますねぇ。

尤も、そうした屁理屈を捏ね繰り回しているサイケおやじが、既に術中に落ちているというか、つまり理屈よりは心に訴えかけてくる演奏が、ここにあります。

ちなみに御承知のとおり、クレフ~ヴァーヴ期のライオネル・ハンプトンは夥しいレコーディングから作られたレコードが大量にあり、しかも度重なる再発ではLPそのものの仕様が異なるブツが様々に出回っています。

それはこのアルバムにしても例外ではなく、掲載したジャケットでのLPは何度目かの再発という事情が恨めしいところ……。

実は、どの盤がオリジナルなのか今もって分かっていないのがサイケおやじの現状であり、とりあえず楽しく聴けば、それで良し! そういう居直りの気分も否定出来ません。

もちろん現在では、この時期のライオネル・ハンプトンとオスカー・ピーターソンの顔合わせに限ったコンプリートなCDセットも出ていますから、案外とそれを聴くのが正解かもしれません。

しかし、このジャケットにして、この中身というヴァーヴのアナログ盤特有の面白みも捨て難く、それがジャズ愛というものならば、苦しくも幸せな気分になるのでした。

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ガレスピー親分と夏へ向かう

2011-05-20 15:10:05 | Jazz

Dizzy On The French Riviera  / Dizzy Gillespie (Philips)

既に今年も半分近く過ぎたところで、急に暑くなって来ましたですね。

なんか、もう、真夏が思いやられる気配ということで、本日のご紹介は初夏向けの1枚♪♪~♪

エンタ系を貫いた天才トランペッターのディジー・ガレスピーが自らレギュラーバンドを率いて作ったライプ盤という体裁ながら、実は様々なスタジオの魔法が上手く施された結果の楽しいアルバムなんですねぇ~~♪

一応の録音は1962年5&7月、メンバーはディジー・ガレスピー(tp,vo,per)、レオ・ライト(as,fl,vo,per)、ラロ・シフリン(p,arr)、クリス・ホワイト(b)、ルディ・コリンズ(ds,per) のレギュラー陣に、ジャケットのクレジットでは、Elek Bacsik(g)、Pepito Riestria(per) の他、実際は数人の助っ人が参加しています。

A-1 No More Blues (Chega de Saudage)
 いきなり波や渚のざわめきが聞こえてくるあたりは、既に通常のモダンジャズアルバムを超越(?)した作りになっていますから、こういう効果音の使用について、イノセントなファンはちょいと面食らうかもしれません。
 しかし自然に響いてくるボサノバのリズムと哀愁のメロディが流れてくれば、そこは素敵な桃源郷♪♪~♪ 「No More Blues」とクレジットされていますが、実はカルロス・ジョビンが畢生の「Chega de Saudage」と同じ曲なんですから、たまりませんよねぇ~~♪
 しかもAメロをリードするレオ・ライトのアルトサックスには絶妙の湿っぽさがあり、サビで登場するガレスピー親分のトランペットが開放的というコントラストも秀逸ですから、後は流れに身をまかせというか、メンバー各々のアドリブとサポートの妙技に耳を奪われること必定です。
 中でもラロ・シフリンのミステリアスにして奥の深いピアノから、楽しさ優先モードのディジー・ガレスピーが登場する件はジャズ者が絶対にシビレる決定版でしょうし、幾分の引っ込み思案が逆ら素晴らしいレオ・ライトのアルトサックス、さらには再び躍動するラロ・シフリンのピアノを煽る打楽器隊の浮かれた雰囲気の良さは絶品!
 そしていよいよ登場する Elek Bacsik のギターが、これまたシブイ! ジャズギターの王道からは外れているかもしれませんが、随所にオクターヴ奏法やトレモロ的なフレーズをミックスさせる匠の技は侮れません。
 ちなみにこのトラックはライプレコーディングというデータがあるものの、前述したSEや拍手の雰囲気も含めて、スタジオでの加工が良い方向に作用していると思います。

A-2 Long, Long Summer
 ラロ・シフリンが書いた思わせぶりな哀愁ハードバップの人気曲で、そのエキゾチックなムードとファンキーな味わいの匙加減が流石の仕上がりですよ♪♪~♪
 もちろんファンキーな部分を担当するのがディジー・ガレスピーであることは言うまでもなく、何時もとなんら変わらぬスタイルを披露しつつも、十八番のアフロキューバン節も抜かりありません。
 また、ラロ・シフリンが要のリズム隊は力強く、時にはゴスペルファンク的な煽りも素晴らしい力演は最高だと思いますが、レオ・ライトの出番が少ないのは残念……。それでも要所では情熱的なフレーズを吹いてくれますから、まあ、いいか♪♪~♪
 それとこのトラックは多分、スタジオレコーディングでしょう。テープ編集の痕跡も散見されますし、ラストでは正体不明のバリトンサックスがアンサンブルで登場していますから!?
 そしてギターは誰?

A-3 I Waited For You
 これはディジー・ガレスピーが永遠の定番演目としていた自作の美メロパラードですから、ここでもツボを外していません。短いながらも、実に密度の濃い仕上がりは手慣れたというよりも、集中力でしょうね♪♪~♪
 もちろんラロ・シフリンの些か暑苦しいピアノも要注意だと思います。

B-1 Desafinade
 これまたボサノバの大有名曲をミュートで軽く吹いてくれるディジー・ガレスピーが良い感じ♪♪~♪ そしてレオ・ライトのフルートやリズム隊のキメも鮮やかですよ。
 当然ながら、そうした部分を担っているのはラロ・シフリンのアレンジの冴えということで、3分半ほどの短いトラックですが、きっちりとした纏まりが最高です。
 ただし如何にも疑似的なライプの拍手は、些か無用という感じがします。

B-2 Here It Is
 こちらは真性ライプトラックでしょうか、自然な臨場感が熱いファンキーハードバップにジャストミートした素敵な演奏が楽しめますよ♪♪~♪
 それはグイノリの粘っこい4ビートで「お約束」の手練手管を駆使しするメンバー全員の意志の疎通であり、またモダンジャズ全盛期の証でしょう。こういう輝きこそが、わかっちゃいるけど、やめられない! それに尽きます。

B-3 Pau De Arara
 ついに出ましたっ!
 これぞっ、ガレスピー楽団伝来のラテンジャズをハードバップで煮〆た味わいが最高潮です。あぁ、こういうアップテンポの祝祭的なノリは、やっぱりジャズ者の琴線に触れまくりでしょうねぇ~~♪
 う~ん、山本リンダの歌と踊りが出そうな雰囲気と言っては、贔屓の引き倒しでしょうか?
 いえいえ、きっちり4ビートで突進するディジー・ガレスピーのトランペットには絶対に溜飲が下がるでしょう。
 くぅぅぅう~~、本当にたまらん世界です♪♪~♪

B-4 Ole
 そしてオーラスはモードを使ったエキゾチックな新風モダンジャズで、なかなか意欲的なバンド演奏が楽しめますが、親分がミュートを吹いているだけに、なんとなく同時期のマイルス・デイビスがやっていた事に共通する何がが感じられると思いますし、そういえばジョン・コルトレーンにも同じようなタイトルで似たムードの曲がありましたですね。
 しかしこれはガレスピー親分のオリジナルという事になっていて、しかも絶妙の親しみ易さが隠しようもありません。
 ですからレオ・ライトのフルートが神妙なフレーズを綴り、おそらくは Elek Bacsik であろうギターがしぶとさを聞かせるうちに、演奏は何時しか最初と同じような渚のざわめきと波のSEが被さってきて終焉するという演出がニクイですねぇ~~~♪

ということで、なかなか用意周到に作られた快楽盤だと思いますが、その仕掛人はプロデューサーのクインシー・ジョーンズなのでしょう。もちろんディジー・ガレスピーも納得ずくの結果であり、そうでなければ、これほど気持良いモダンジャズ作品は生まれなかったはずです。

ただし、そういう点を素直(?)に受け入れられないジャズファンも少なからず存在しますから、このアルバムがガイド本等々で名盤扱いにならないのも、これまた納得するしかないのでしょう。

それでもジャズ喫茶では局地的な人気盤になっている事実も否めませんし、なによりも楽しいジャズを求める愛好者が、このLPを競ってゲットしていたのが、往年の中古盤屋の風景でした。

まあ、今となってはCD化もされているようですし、再発も何度かありましたから、誰でも気軽に聴けるようになったはずでありながら、どうもイマイチ、注目されない事実は???

どうやら電力不足の猛暑は避けられない夏に向かって、このアルバムで涼をとるのも一興だと思うばかりです。

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正々堂々のデビューだったクルセイダーズ

2011-04-27 16:38:57 | Jazz

Freedom Sound / The Jazz Crusaders (Pacific Jazz)

フュージョン全盛期の1970年代にクルセイダーズとして大活躍していた人気グループの、これは未だモロジャズをやっていた当時に作られたデビューアルバムです。

そしてこの時期に愛着を抱くファンが今も多いという現実は無視出来ないでしょう。

なにしろバンド名に「ジャズ」という単語が堂々と使われていますからねぇ~~~。

しかしそれは決してシリアスな面を強調するではなく、むしろ大衆的なモダンジャズを新しい感覚でやろうとしていたと推察出来る、そうしたクルセイダーズの姿勢に共感しての事でしょう。

ですから如何にもデビュー作に相応しい意気込みと幾分の未完成な部分が絶妙のコントラストとして記録されたこのアルバムが、決定的な人気を集めるのも当然かと思います。

録音は1961年5月、メンバーはウェイン・ヘンダーソン(tb)、ウィルトン・フェルダー(ts)、ジョー・サンプル(p)、スティックス・フーパー(ds) の4人がメインのクルセイダーズで、ここでは他にロイ・ゲインズ(g) とジミー・ボンド(b) がサポートメンバーとして参加しています。

ちなみにクルセイダーズを語る時、必ず問題となるのがレギュラーベース奏者の不在なんですが、ご存じのとおり、ウィルトン・フェルダーはスタジオセッションの世界でも堅実で個性的なエレキベースの名手として後に活躍する事を鑑みれば、実際のライプの現場でもそれを演じていた事は想像に易いのですが、だからと言って、これまた非常に魅力的な本業のテナーサックスが鳴っていなければ、あの魅力的なクルセイダーズのサウンドにはならないのですから、事態は複雑!?

おそらく当時から幾人かのサポートメンバーを入れながら活動していた事により、このセッションもそれが具象化としたのではないでしょうか。

A-1 The Geek
 ワルツテンポのハードバップで、もちろん時代の要請からジャズロックフィーリングも滲むというウィルトン・フェルダーのオリジナル曲は、これしか無いというクルセイダーズ的な演奏に仕上がっています。
 それは重心の低いジャズビート、トロンボーン&テナーサックスというジャズテット直伝の2管ハーモニーとユニゾンの心地良さ、さらには如何にもファンキーなグルーヴの醸し出し方が、ハードドライヴなアドリブパートと見事に融合したもので、特にジョー・サンプルのピアノは既にたまらない魅力を発散していますよ♪♪~♪
 また作者本人の硬質なテナーサックスの豪快さや助っ人ギタリストのロイ・ゲインズが披露する短くもR&Bな素養も好ましく、もちろんスティックス・フーパーのモダンジャズ王道のドラミングも痛快!

A-2 M.J.S. Funk
 これまたジャズビートを上手く利用した刺激的なテーマからウィルトン・フェルダーのハードボイルドなテナーサックスが炸裂するというアドリブへの入り方が潔いかぎりという演奏ですが、続くウェイン・ヘンダーソンの明朗闊達なトロンボーンや熱血ピアノのジョー・サンプルも手抜きがありませんねぇ~♪
 こういう全力投球はデビュー盤という条件を差し引いても、常にクルセイダーズが持っていた魅力のひとつじゃないでしょうか。
 そして後半はドラムソロから各人のアドリブの応酬という王道路線で締め括られます。

A-3 That's It
 ウィルトン・フェルダーのオリジナルという事ですが、とにかくメチャメチャにカッコE~~♪ まるっきりスタンダード曲をアレンジしたかのようなテーマメロディとアンサンブルがシャープなアップテンポで演じられる時、それはジャズメッセンジャーズとは似て非なる親しみ易さと痛快さが見事な化学変化を誘発した感じです。
 そしてコルトレーンフレーズを適度に使ったウィルトン・フェルダーのテナーサックスから、今度はJ.J.ジョンソンのヘッドアレンジを借用したようなウェイン・ヘンダーソンの稚気が披露されるに及んで、その場は完全に楽しさ優先モードのジャズ天国♪♪~♪
 ただし演奏全体にテープ編集疑惑が濃厚なのは賛否両論でしょうか……。
 個人的にはスティックス・フーパー&ジミー・ボンドのリズム隊が提供するビートの溌剌さに心惹かれます。

B-1 Freedom Sound
 今日ではジャズクルセイダーズを代表する人気演目であり、ジョー・サンプルにしても畢生のオリジナル曲は、何度聴いても感動的なテーマアンサンブルが最高です! それは微妙に幻想的なムードと前向きな姿勢が強く出たものでしょう。
 リズム隊が提供するマーチのビートと新主流派っぽいハーモニーの融合は、各人がクールで熱い気持で自らのパートを演じるしかない境地を導くのでしょうか。とにかくジョー・サンプルのピアノからはキメまくりのフレーズしか放たれませんし、じっくり構えてツッコミも鋭いウィルトン・フェルダーのテナーサックスやエグ味の強いジミー・ボンドのペースも名演だと思いますが、一番印象的なのは、やっぱりグッと力が漲ってくるテーマアンサンブル♪♪~♪
 もしも自分に管入りジャズバンドが組めるなら、絶対に演目に入れたいほどです。

B-2 Theme From Exodus / 栄光への脱出
 映画音楽からのモダンジャズヒットのひとつとして、例えばエディ・ハリスのバージョンが有名な名曲ですから、クルセイダーズの面々も神妙なのでしょうか。
 しかしここでは見事に前曲からのムードを引き継ぎ、厳かにして豪快な演奏に仕上げたのは、流石「ジャズ」とバンド名に冠しているだけのことがあります。そして何んと言ってもテーマをリードし、アドリブパートでは爆裂するウェイン・ヘンダーソンの存在感が強烈ですねぇ~~♪
 それとスティックス・フーパーのヘヴィなブラシが全体をビシッと纏め上げているのも特筆されると思います。

B-3 Coon
 そこでオーラスでは徹底的にスティックス・フーパーのドラミングが楽しめるという趣向がサービス満点!
 と言っても、決してドラムソロの曲ではなく、アップテンポの王道ハードバップの中に変幻自在、強靭なビートをあらゆるリズムを駆使して敲きまくる、まさにドラマー冥利に尽きるような演奏が秀逸ですよ♪♪~♪ もちろん他の面々も力演ばかりですから、熱くなります!

ということで、実にがっちり仕上げられたアルバムで、しかも人気盤の要素がテンコ盛り♪♪~♪

既に述べたようにクルセイダーズは1970年頃に「ジャズ」という冠を外してから、さらに音楽性を広げ、人気を拡大したわけですが、さりとてそれ以前の音源が忘れられるということはありませんでした。

実際、ジャズ喫茶ではクルセイダーズはお断りでも、ジャズクルセイダーズは大歓迎という店もあったほどですし、ジャズ者が中古屋で漁る定番のブツのひとつが、1960年代の彼等のアルバムであったという真相も否定出来ないでしょう。

特にこのアルバムが初演とされる名曲「Freedom Sound」は、クルセイダーズにしてもステージでは必須の演目だったということで、レコードでもライプバージョンが残されていることから、自然とスタジオバージョンにも人気が集まるという好循環(?)も素敵でしょう♪♪~♪

これは正々堂々、愛聴盤と宣言させていただきます。

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スタン・ゲッツの欧州物は味わい深い

2011-04-18 16:45:21 | Jazz

Imported From Europe / Stan Getz (Verve)

本場アメリカのジャズプレイヤーが時代の流れに押されるように欧州各地へ活動を場を求めた歴史は、特に1960年代中頃から顕著だと思いますが、しかしフランスや北欧は1940年代から既にジャズの先進地帯でしたから、リアルタイムでも超一流のメンツが度々訪れ、地元の実力者達と優れたレコーディングを残していました。

例えば本日ご紹介のアルバムは、スタン・ゲッツが1958年にスウェーデンで吹き込んだセッションから作れた1枚なんですが、これ以前にも自身の十八番となった「Dear Old Stockholm」に象徴的な素晴らしいレコーディングを残しているとおり、何故か当地とは相性が良いようですから、ここでも素晴らしい快演を聞かせてくれます。

メンバーはスタン・ゲッツ(ts) 以下、ベニー・ベイリー(tp)、オキ・ペルセン(tb)、エリック・ノールストローム(ts)、ビャルネ・ネーレン(ts)、ラス・ガリン(bs)、ヤン・ヨハンソン(p)、ベンクト・ハルベルク(p)、グナー・ヨンソン(b)、ウィリアム・ショッファー(ds) という聴けば納得の才人揃いですから、決してスタン・ゲッツだけのリーダー作品とは決めつけられないものがあると思います。

A-1 Bengt's Blues (1958年9月16日録音)
 タイトルどおり、ピアニストのベンクト・ハルベルクが作編曲したモダンジャズのブルースなんですが、このなんとも言えないクールなカッコ良さがクセになる4ビートグルーヴは、ちょいとたまりません。
 それはアップテンポで、アメリカ西海岸系のハードバップのようでもありますが、スマートなノリとシンプルなホーンリフを得て繰り広げられる各人のアドリブは充分に個性的で、なかなかのアクの強さも滲んでいます。
 中でも最初に登場するベンクト・ハルベルクのピアノには硬質なクールフィーリングと妥協しないジャズっぽさがあって、微妙に良い感じ♪♪~♪ さらにオキ・ペルセンの闊達なトロンボーンからツッコミ鋭いベニー・ベイリーのトランペットが鳴り出せば、そこには本場アメリカに勝るとも劣らないモダンジャズの天国が現出されるのですが、いよいよ登場するスタン・ゲッツのスピードのついたアドリブの素晴らしさの前では、そうした彼等が露払いに思えるほど!?!
 あぁ、この不遜をお許し下さい。
 実は本当に短いパートしか吹いていないんですが、このアピール度の高さこそがスタン・ゲッツの真骨頂でしょうねぇ~~♪
 何度聴いても、ゾクゾクさせられますよ♪♪~♪ 

A-2 Honeysuckle Rose (1958年8月26日録音)
 良く知られた歌物ジャズ曲が、なかなかスリルに満ちたアレンジで躍動的に演奏される時、それはモダンジャズの真髄といって過言ではありません。
 ヤン・ヨハンソンの編曲は相当にスピード感を要求するものですが、シャープなドラムスの好演もあり、なによりもスタン・ゲッツが如何にも「らしい」アドリブで先陣を務めた後は一気呵成! その流れるようなフレーズのひとつひとつに込められた歌心が、後続するメンバー達を見事に導いていきます。
 またホーン隊の迫力ある合奏とアンサンブルの妙もジャズ的な楽しみに満ちていると思いますし、個人的にはベニー・ベイリーの溌剌さがたまりません。

A-3 They Can't Take That Away From Me (1958年8月26日録音)
 これまた邦題「誰も奪えぬこの思い」として良く知られたスタンダード曲とあって、まずはヤン・ヨハンソンのアレンジが気になるところではありますが、もちろんミディアムテンポのジャズビートの中ではスタン・ゲッツのリラックスした吹奏が最高の聴きどころでしょう。その期待を裏切らぬ出来栄えは流石の一言!
 そしてホノボノフィーリングが全開のオキ・ペルセンも良い味出しまくりですが、クールでソフトなラス・ガリンのバリトンサックスが最高に侮れませんねぇ~♪ 今もってこの人のファンが多いのも納得されるはずです。

B-1 Topsy (1958年8月26日録音)
 1930年代からのカウント・ベイシー楽団が十八番にしていたジャズヒットですから、スタン・ゲッツも自らのルーツたるレスター・ヤングを意識していたと思しきスタイルも披露しつつ、やはり個性はしっかりと打ち出しています。
 ただし基本が所謂カンサスシティ系のモダンスイング調にアレンジされていますから、参加メンバー達のモダンなフィーリングがイマイチ、活かされていないような……。 個人的には、ここてもラス・ガリンのバリトンに心惹かれます♪♪~♪

B-2 Like Someone In Love (1958年9月15日録音)
 再びベンクト・ハルベルクのアレンジという所為でしょうか、なかなか楽しくてモダンなアンサンブルを活かした演奏が楽しめます。
 特にアドリブ先発のスタン・ゲッツはハードバップ的なニュアンスも含めた緊張の緩和のバランスが秀逸! また、逞しさとソフトな情感を両立表現するテナーサックスの音色も魅力がありますねぇ~♪

B-3 Speak Low (1958年9月15日録音)
 これも原曲の魅力を活かしたベンクト・ハルベルクのアレンジが見事すぎますが、スタン・ゲッツも負けじと素晴らしいメロディフェイク&アドリブで応えるという、このアルバムの中でも出色の仕上がりになっています。
 そして中間部の凝った仕掛のアンサンブルを経て登場するラス・ガリンのバリトンサックスが、短いながらも素敵ですよ♪♪~♪

B-4 Stockholm Street (1958年9月16日録音)
 そのラス・ガリンの作編曲による、このオーラスに置かれたクールな演奏は、まさに北欧のジャズムードでしょうか。
 ですからスタン・ゲッツが聴かせてくれるハートウォームな表現は、既にしてボサノバのヒットを予見させる浮遊感に満ちていますし、ちょいとモヤモヤした原曲から珠玉のメロデイを紡ぎ出すアドリブの天才性は特筆物だと思います。

ということで、数多残されたスタン・ゲッツの作品群の中では目立たない1枚ではありますが、実は本来、このセッションはヴァーヴが企画制作したものではなく、スウェーデンの現地レーベルが原盤権を持っていた音源をあえて発売しただけあって、その充実度はファンを充分に満足させるものです。

それはどんな環境条件であっても、常にスタン・ゲッツはスタン・ゲッツでしかありえないという確固たる存在感の証明に他なりません。

ご存じのとおり、スタン・ゲッツがこの時期から1961年初頭まで、欧州各地で活動していたのは悪いクスリ云々によるところが大きかったと言われていますが、もうひとつ、既に述べたように、自らの音楽性との相性が良かった事もあるんじゃないでしょうか。

一概に断定は出来ませんが、このアルバムの他にもサイケおやじを密かな愛聴衝動に駆りたてる何かが、この頃のスタン・ゲッツにはあると感じています。

ちなみにジャケットに写る街頭の風景はフランスですよねぇ……?

それゆえにアルバムタイトルに偽りは無しという事なんでしょうが、そうしたファジーな仕上げもヴァーヴらしくて、憎めないのでした。

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ウイントン・ケリーの真夜中のハードバップ

2011-04-14 15:51:26 | Jazz

Wynton Kelly At Midnight (Vee Jay)

今日は朝一番、無性に聴きたくなって取り出したアルバムが本日の1枚です。

ご存じ、ウイントン・ケリー(p) が盟友ポール・チェンバース(b) &フィリー・ジョー・ジョーン(ds) と組んだトリオで繰り広げる演奏は、これぞっ、ハードバップの真髄! ですからガイド本にも度々紹介されていますし、ジャズ者にとっては必携の人気盤になっていることも説明不要かと思います。

そして聴くほどにグッと惹きつけられる魅力の秘密は、こうしたピアノトリオ盤には必需の歌物スタンダード曲が、なんとっ!? ひとつも演じられていない事かもしれません。

それは録音セッションが行われた1960年4月27日という、今となってはモダンジャズがファンキーとモードの間で最高の熟成を醸し出していた真っ只中の実に幸せな時代の記録であり、同時にそうしたところが真剣勝負を殊更に好む我国のジャズファンにアピールしたポイントじゃないでしょうか。

A-1 Tenperance
 如何にも「らしい」イントロの構成は、ピアノに寄り添うポール・チェンバースとスインギーなクッションを響かせるフィリー・ジョーが抜群のお膳立て! もう、いきなりのクライマックスといって過言ではありません。
 もちろんそれは躍動的なテーマアンサンブルから颯爽としたアドリブパートへと見事に引き継がれ、本当にウキウキしてくるハードバップの4ビートグルーヴが既に全開ですよ♪♪~♪
 そこには当たり前にように飛び跳ねるウイントン・ケリー、絶妙の粘っこさとグイノリでトリオを引っ張るポール・チェンバース、さらにピッとキメまくりのフィリー・ジョーによる秘術に競い合いが素晴らしいかぎり!
 特にポール・チェンバースのツッコミ鋭いアドリブから終盤で繰り広げられるピアノ対ドラムスのソロチェンジは、そのひとつひとつが「歌」に満ちたウイントン・ケリーのリーダーシップの本質に根ざしたものとして、何度でも聴きたくなると思います。

A-2 Weird Lullaby
 「変態子守唄」という曲タイトルが???の、なかなか気分はロンリーのハードバップパラードですから、ここでもウイントン・ケリーの幾分湿っぽいアドリブフレーズの組み立てが琴線に触れまくりですよ♪♪~♪
 そしてポール・チェンバースのシビアなベースワークと十八番のファジーなクッションを駆使したフィリー・ジョーのブラシがありますから、これまた決してダレない名演になっています。

B-1 On Stage
 結論から言えば、このトラックゆえにジャズ喫茶の定番はB面という事になりましょうか、とにかくここでは痛快無比なピアノトリオの名演が存分に楽しめますよ。
 それはフィリー・ジョーのハイハットに導かれて躍動するウイントン・ケリーのピアノ、加えて相当な渋味も含んだポール・チェンバースのペースが三位一体となってのスインギー天国であり、誰を中心に聴いたとしても、必ずや昇天させられる演奏が披露されますが、流石にこのメンツであればこその「全てわかっている楽しみ」は、所謂マンネリ一歩手前の爛熟性感度の高さが証明されるようです。

B-2 Skatin'
 アップテンポでブッ飛ばした前曲から一転、グッと重心を低く構えた、これぞグルーヴィなハードバップの王道ピアノトリオ! しかも相当に3人がバラバラをやっていながら、実はタイトに纏まっている結束力は、所謂気心が知れているってやつでしょうか。
 粘っこくて歯切れの良いピアノタッチは、皆が大好きなウイントン・ケリーの真骨頂でしょうし、緊張と緩和のバランスが抜群のポール・チェンバース、時にはヤケッパチな感性も眩しいフィリー・ジョーのドラミング♪♪~♪
 あぁ、ハードバップ万歳っ!
 聴いているうちに思わずハンク・モブレーのテナーサックスが登場して来そうな、例の「ワークアウト」の幻想に陥るのも、ジャズ者にとっては必然の理でしょうねぇ~♪

B-3 Pot Luck
 そしてオーラスは、これまた躍動的なハードバップのブルース大会♪♪~♪
 もう、こういう演奏になると、このメンツが提供してくれる4ビートジャズのリズムは桃源郷への招待状かもしれませんねぇ~~♪
 ひとりひとりのアドリブやノリを云々する前に酔わされなければ、罪悪を覚えるほどかもしれません。
 う~ん、ここでもマイルス・デイビスのトランペットが空耳のように……♪

ということで、これも思わずボリュームを上げてしまうレコードのひとつとして、節電が求められている時には封印の1枚かもしれませんから、聴くなら今だっ!

過度な自粛はしないようにというお達しもありましたが、特にそれを言い訳にする事もないでしょう。

それほど痛快で颯爽したモダンジャズが徹底的に楽しめるピアノトリオ盤ですが、あえて欠点を述べれば、収録時間が30分ちょっとの短い事でしょうか。

よしっ、もう一度、針を落とすかっ!

サイケおやじのジャズモードへの帰還も近いように思います。

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強いリーダーの祝祭こそ、今は必要!?

2011-04-13 16:01:25 | Jazz

Cu-Bop / Art Blakey & The Jazz Messengers (Juilee)

世の中には浮き沈みがあって当然ですが、しかしやっぱりそこに強いリーダーがいるのといないのとでは、その場の安心感や後々の展開が違ってしまうのも、また当然でしょう。

例えばモダンジャズの世界では名門バンドとして君臨したジャズメッセンジャーズにしても、1950年代中頃の大ブレイク期から主要メンバーが抜けた所謂暗黒時代を経て、再びファンキーの炎を燃え上がらせた1950年代末頃までの流れを鑑みれば、如何にアート・ブレイキーが有能なリーダーであったか、サイケおやじは感銘を受けるばかりです。

それはとにかくジャスメッセンジャーズという看板を守り抜くという執念(?)以上に、ジャズの本流から外れない活動に終始する信念の強固さであったと思います。

そこで本日ご紹介のアルバムは、既に述べたとおり、ホレス・シルバーが中心メンバーを引き連れて独立した後の暗黒時代の中では、異色の傑作となった裏名盤!?

録音は1957年5月13日、メンバーはビル・ハードマン(tp)、ジョニー・グリフィン(ts)、サム・ドッケリー(p)、スパンキー・デブレスト(b)、アート・ブレイキー(ds) という当時のレギュラーにサブー・マルチネス(per) が臨時参加した特編メッセンジャーズが今回のウリになっています。

A-1 Woodyn' You
 ディジー・ガレスピーが書いたモダンジャズの聖典のひとつですが、ご存じのとおり、この偉大なトランペッターは1940年代のビバップ期から既にラテンミュージックとジャズを融合発展させんと奮闘していましたから、その当時に作られたこの曲にしても、チャカポコビートを叩き出すサブーの存在が尚更に大きく効果的!
 もちろんサブーがリアルタイムでディジー・ガレスピーのバンドに参加していた事実は大きなポイントであり、時にはアート・ブレイキーも参画していた過去の真相が、このセッションでは見事な成果として楽しめるのでしょう。
 ですから冒頭から飛び跳ねるビートは所謂アフロキューバンという、実にウキウキするグルーヴを作り出し、アップテンポのテーマ提示から続けて飛び出すビル・ハードマンの詰め込み型のアドリブは、失礼ながら予想外に大健闘ですよ♪♪~♪
 そして小型ホレス・シルバー的なサム・ドッケリーのピアノとジョニー・グリフィンの火の出るような猛烈プローが炸裂すれば、そこは完全にハードバップの桃源郷!
 これを「暗黒時代」なんて決めつけちゃ~、親分のアート・ブレイキーはもちろん事、モダンジャズの神様が怒りますよねぇ~~。当然ながらクライマックスは親分と助っ人サブーの打楽器対決が短いながらも用意されています。

A-2 Sakeena
 いゃ~、これまたラテンミュージック特有のちょいとせつないエキゾチックなテーマから、いきなり爆発的なジョニー・グリフィンのテナーサックスが飛び出すという、実に凄い演奏が堪能出来ます!
 あぁ、このあたりは何度聴いても、本当に最高ですねぇ~~♪
 ジョニー・グリフィンもエキセントリックな表現とハードなジャズ魂を遺憾なく発揮し、途中では例によって感極まったような息継ぎの奇声も良い感じ♪♪~♪
 さらに何時もは些かトホホ系のサム・ドッケリーが珍しくも大ハッスルしていますし、安定型のビル・ハードマンにしても、ここではツッコミも冴えわたりですから、クライマックスで展開されるアート・ブレイキー対サブーの打楽器合戦も決して飽きることは無いでしょう。
 否、むしろそれがあればこそ、この演奏は完結するという大団円がジャズ者の心を揺さぶるのだと確信させられるのです。
 ちなみに曲は、親分が自分の愛娘の名前から作った有名なオリジナルで、おそらくはメンバー全員が終盤おいて打楽器を手に祝祭的ムードを盛り上げていくあたりは、ジャズメッセンジャーズならではの「掟」というところでしょうか。
 実に血沸き肉躍る仕掛がりがたまりません♪♪~♪

B-1 Shorty
 これまたアップテンポで繰り広げられるハードバップは、如何にもジョニー・グリフィンのオリジナルらしさが全開ですが、さらにチャカポコの打楽器が加わっての演奏は熱に浮かされたような仕上がりとなって、そこが確実にジャズ者を熱くさせると思う他はありません。
 とにかく打楽器が導くテーマからサム・ドッケリーのピアノが飛び出す瞬間の熱気、燻銀の欺瞞を打ち砕かんと奮闘するビル・ハードマン、そしていよいよ登場するジョニー・グリフィンの我儘な存在感は強烈! こうした唯我独尊性が、実に良いんですよねぇ~~~♪

B-2 Dawn On The Desert
 そしてオーラスは、これまたタイトルどおりに不思議なエキゾチック感が横溢したテーマメロディとバンドアンサンブルの妙が楽しめるという、これはこれで当時のモダンジャズでは最先端の表現だったんじゃないでしょうか。
 サブーのコンガを効果的に使ったグルーヴィな4ビートは、随時倍テンポの展開も織り交ぜながら進行するという定番的なシナリオになっていますが、その変化の瞬間に発生するスリルには、分かっていてもノセられると思います。
 また気になる各人のアドリブパートでは、ミュートを使ったビル・ハードマンにちょいと味わいが不足している感じが勿体無いところではありますが、絶妙の思わせぶりと相反する熱血の黒っぽさが激ヤバのジョニー・グリフィン、グイノリのピアノとベースの奮闘も頼もしいばかり♪♪~♪

ということで、これはタイトルどおり、アフロキューバンとビバップの融合路線が見事に成功した楽しいアルバムです。

それはジャズ史的に決して云々される成果ではないかもしれませんが、同じ視点に立てば、当時のジャズメッセンジャーズには有能な参謀格のミュージシャンが存在しておらず、それゆえにリーダーのアート・ブレイキーが完全なるワンマン体制だったと思われますから、それでも途切れることの無かったレコーディングセッションの賛否が如実に表れるのも当然だったと思います。

そしてアフロ&ラテンのリズムに集中して自己のジャズ魂を解放させんとする、如何にもアート・ブレイキーの「らしさ」が見事に全開したのは、レギュラーメンバーの何時にも増しての大ハッスルとサブーというジャズにも充分対応出来る楽器奏者の参加による狙いがバッチリ!

こういう企画が成功裏に残されたのも、アート・ブレイキーの強固なリーダーシップがあればこそでしょう。

それが不思議と評価されず、特に我国では無視に近い存在へと追いやられているのは、個人的に納得しておりません。

何時の世も不遇な時こそ、リーダーの強さがあれば、それを乗り越えられるという証明的なアルバムとして、今こそ日本のジャズ者は率先して楽しむアルバムだと思います。

なにしろ、あの脱力した現総理でさえ、過度な自粛は止めるように国民へ伝えたばかりですからねぇ~。

節電も考慮しなければならないはずですが、時には大音量で、この祝祭ムードに溢れたアルバムを鳴らすのも、許されるかもしれませんよ。

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デクスター・ゴードンの威風堂々

2011-04-08 12:56:46 | Jazz

Blues Walk! / Dexter Gordon The Montmartre Collection Vol.2 (Black Lion)

昨日は仕事でマジギレするという醜態を曝したサイケおやじは、シミジミと反省を重ねる夜となったわけですが、どう考えても相手に非があるという結論に変わりは無くとも、後味の悪さはどうしよもありません。

やはり、耐えて忍んで、平身低頭こそが、仕事をやっていく中でのひとつの男の姿なんでしょうねぇ……。

ただし、それは自分に相当の自信がなければ出来ない事であって、そんな気分の中で思わず取り出したのが本日ご紹介の1枚です。

ご存じ、デクスター・ゴードンが復活渡欧期に残したライプ音源で、往年のジャズ喫茶では人気盤だった「モンマルトル・コレクション」の続篇として、その内容は勝るとも劣らない正統派モダンジャズが存分に楽しめるわけですが、例えどんな状況にあろうとも、そこに決して揺るぎない信念に満ちた男の姿をも感じてしまうのは、サイケおやじだけでしょうか。

録音は1967年7月20日、コペンハーゲンのジャズの名所「モンマルトル」でのライプセッションで、メンバーはデクスター・ゴードン(ts)、ケニー・ドリュー(p)、ニールス・ペデルセン(b)、アルバート・ヒース(ds) という、今では伝説のカルテットなんですが、既に述べたように当時の彼等は地元俊英のニールス・ペデルセンは別にしても、本場アメリカにおける王道モダンジャズにとっては厳しい状況から欧州に活路を求めたという、ある意味では都落ちの身だったと思います。

しかし、そういう現実の中にも、自らのジャズ魂は絶対に普遍という素晴らしい演奏は、何も構えて聴かなくとも、ファンを喜ばせて当然でしょう。

A-1 Like Someone In Love
 最初は映画音楽として書かれたという歌物曲なんですが、今となってはジャズの世界の定番として数多い名演バージョンが残されている有名なメロディ♪♪~♪ それを最初っから実に大らかに吹奏してくれるデクスター・ゴードンの自然体には、思わずニンマリさせられてしまいます。
 しかもここではアップテンポの4ビートに料理されるという、如何にもハードバップな展開が躍動的なリズム隊の好演もあって、なかなか最高ですよ♪♪~♪
 当然ながらデクスター・ゴードンのテナーサックスはここでも強靭な「鳴り」が心地良く、例によってギスギスした中にも親しみ易い味なフレーズを連続放出していますし、飛び跳ねては流れていくケニー・ドリューのピアノ、さらには新進気鋭のベースワークも眩しいニールス・ペデルセンに対し、幾分ドタバタしたドラミングで呼応するアルバート・ヒースという絶妙のコントラストが、既にしてこのカルテットの真髄を堪能させてくれるはずです。
 あぁ、どうしてこんなに貫き通す演奏が出来るんでしょうか!?
 正直に言えば、これはジャズ史的には時代遅れのスタイルなんですが、それでも伝統芸能になっていないリアルタイムの感性が随所から迸る熱気の凄さは、永遠に不滅だと思い知らされるばかり! 

A-2 Body And Soul
 これまたお馴染みの人気スタンダードということで、今度はじっくり構えたスローな吹奏で自らの心情吐露を歌いあげるデクスター・ゴードンの王道が見事だと思います。
 それは後に出演する映画「ラウンド・ミッドナイト」の中の名セリフとなった「歌詞を忘れたから吹けない」という、歌物曲の解釈を既に証明するものでしょう。
 う~ん、この泰然自若な男の姿!
 こういう人に、私ははなりたいっ!

B-1 Threr Will Never Be Another You
 これまたノッケからグイノリで演奏されるスタンダード曲ではありますが、わかっちゃいるけど、やめられない♪♪~♪ そうしたハードバップの快楽性を思いっきり演じてくれるデクスター・ゴードンは本当に偉い人ですよねぇ~♪
 そのあたりを不器用とか、居直りとか評価するのは簡単だと思いますが、安易なスケール練習的なフレーズも多用せず、ひたすらに歌心優先主義を押し通し、アグレッシヴなビバップのエキセントリックな感度も高いアドリブは、決して余人に真似出来る境地ではないと断じます。
 それはリズム隊にも共通の意識として、何時もながらに楽しく躍動するケニー・ドリューは言わずもがな、本場の名手を相手に4ビートの奥義を極めんと奮闘するニールス・ペデルセン、それを大きな気持で受止めるアルバート・ヒースの心意気が実に良いですねぇ~~~♪
 そう思えば手数の多いニールス・ペデルセンのペースワーク&アドリブソロが、不思議と浮きあがったようなイヤミになっていないのも納得されるでしょう。
 そしてデクスター・ゴードンのテナーサックスが再び終盤で野太く咆哮すれば、これぞっ! ハードバップ天国への王道が開けるというわけです。

B-2 Blues Walk
 こうして迎える大団円が、これまたハードバップのブルース大会ですから、荒っぽさの中にもバンド全員の意思の統一が限りない熱気を呼び起こすという名演が堪能出来ますよ♪♪~♪
 そして、これをマンネリとか、事無かれ主義と決めつけてはいけないでしょうねぇ。
 というよりも、こういう全てわかっている楽しみこそが、やっている側にとっては自らの信念を一番表現し易く、しかも難しいんじゃないでしょうか?
 それがあればこそ、ファンやリスナーは常に嬉しい気分にさせられるわけですし、ジャズという本質的に楽しいものを素直に感じる事が出来る幸せは大切にしなければならないと思います。

ということで、貫き通すためには揺るぎない自信も必要!

そんな思いを強くしているサイケおやじですが、もちろん自分にそれがあるはずも無く……。

そこで平身低頭、誠心誠意を第一にしつつも、結局は何時も成り行きまかせでここまでやってきたツケが今になって回って来たのかもしれませんねぇ。

しかし今更、それを翻す潔さも根性も当然無くて、最後にはツラのカワを厚くするのがやっと……。そんなテイタラクを貫くのも、サイケおやじらしい生き様と自嘲しておりますが、それゆえにデクスター・ゴードンのレコードは必需品なのでした。

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Bags Meets Jazztet

2011-04-02 13:18:55 | Jazz

Bags' Opus / Milt Jackson (United Artists)

お知らせしたとおり、仕事関連で被災地へ行ってきました。

そこは頻繁に報道されている甚大な被害が出た地域ではありませんが、それでも現地の状況は創造を絶する酷さで、衝撃を新たにした次第です。

あらゆる物資や人材の不足は言うまでもないと思いますが、一番足りないのは現地と中央政府の意思の疎通だと痛感させられましたですねぇ……。

何事も自分の一存では決められないのはお役人衆の習性ではありますが、それを良い方向へと決定決断するべき政治家の先生方が、あまりにも優柔不断! はっきり言えば無能な烏合の衆としか思えませんでした。

そして自分の現状を鑑みれば、とりあえず自分の生活の場へ戻れば、普通の日常が存在しているという幸せを感じるのですから、あれやこれやと不平不満や贅沢は敵なのでしょう。

さて、そこでこの電力不足の非常時、大音量でオーディオを鳴らすなんてのは些かどころか、大いに憚られるわけですが、しかしジャズはフルバン物やフリーはもちろんの事、ハードバップ~新主流派等々、とにかく浴びるように聴かないと満足出来ない特質が悔しいところ……。

それは住宅事情の厳しい我国において、ジャズ喫茶という稀有な文化が栄えた歴史でも証明されているわけですが、同じような特性が顕著なハードロックやヘビメタと異なるのは、モダンジャズには小さな音でも楽しめる名演レコードが確かに存在するという事です。

例えば本日ご紹介のアルバムはミルト・ジャクソンの代表作にして、ハードバップの人気盤なんですが、参集したメンツはジャズセンスに秀でた名手揃いですし、なによりも琴線に触れまくりというプログラムが大いに魅力の1枚だと思います。

録音は1958年12月、メンバーはミルト・ジャクソン(vib)、アート・ファーマー(tp)、ベニー・ゴルソン(ts)、トミー・フラナガン(p)、ポール・チェンバース(b)、コニー・ケイ(ds) ですから、まさにMJQ+ジャズテット的な、今では夢のオールスタアズ♪♪~♪

A-1 Ill Wind
 普通ならば景気の良い演奏がド頭に置かれて当然のハードバップ盤において、これは意表を突かれたというか、スローテンポで演じられる歌物スタンダードなんですが、流石はパラードの天才として崇められるミルト・ジャクソンですから、その歌心満点のヴァイブラフォンが全篇で完璧な主役を演じています。
 なにしろテーマの変奏はもちろん、アドリブの中でも原曲メロディより素敵なフレーズが頻々と綴られるんですから、たまりませんねぇ~♪
 ちなみにここではホーンが参加していない事により、それが尚更に堪能出来るという狙いがジャストミートだと思います。

A-2 Blues For Diahann
 そして続くのが、如何にもこのメンツならではのクールなファンキーハードバップで、案の定、幾分淡々としたリズム隊の4ビートグルーヴに対し、得意のグイノリで迫るベニー・ゴルソンの暑苦しさとアート・ファーマーのジェントル&ソフトなアドリブが絶妙の存在感を示しています。
 しかしトミー・フラナガンはイントロから相当に力んだ雰囲気が強く、それはアドリブパートや伴奏の溌剌とした感じとか、いゃ~~、やっぱり何時もながらに素敵ですよねぇ~♪ それに引っ張られるように熱くなっていくドラムスやベースも、当然の仕儀じゃないでしょうか。本質的に鬱陶しいポール・チェンバースのアルコ弾きによるベースのアドリブさえも、ここでは自然なノリが良い感じ♪♪~♪
 ですから、いよいよ登場するミルト・ジャクソンがコニー・ケイとのソロチェンジで構成していく演奏の展開が、実にモダンジャズの醍醐味に溢れているのは当然が必然なのでした。

A-3 Afternoon In Paris
 ミルト・ジャクソンの盟友たるジョン・ルイスが書いた名曲ですから、コニー・ケイも含めて、失礼ながらMJQでも演じていた「慣れ」も懸念もされるわけですが、やはり実力派のメンバー揃いなればこその軽妙で、しかも黒い4ビートジャズの真髄が披露されています。
 特にちょいと刺戟的なイントロから味わい深いテーマアンサンブルのジャズテット的な解釈は、なかなか秀逸ですよ。それゆえに続く各人のアドリブが冴えまくりという結果も充分に納得されるんじゃないでしょうか。
 個人的には十八番のフレーズしか吹かないアート・ファーマーに心惹かれます。

B-1 I Remember Clifford
 説明不要、ベニー・ゴルソンが早世した天才トランペッターのクリフォード・ブラウンを偲んで書いたモダンジャズの人気曲ですから、リー・モーガンを筆頭に数多く名演が残されていて当然とはいえ、ここで披露されるミルト・ジャクソンのバージョンも侮れません。
 なによりもジャズテットがど真ん中の所謂ゴルソンハーモニーと歌心満点のヴァイブラフォンが絶妙の音色と響きを醸し出し、見事にモダンジャズの魅力を演出しているんですねぇ~~♪
 おそらくは、このトラックゆえにジャズ喫茶ではB面が定番で鳴らされていたと推察しておりますが、これはお茶の間でも同様だったはずで、個人的にも愛聴して止みません。

B-2 Thinking Of You
 あまり有名では無いスタンダード曲ですが、それを真摯に歌いあげるアート・ファーマーのトランペットが最高に心に染み入るパラード演奏の決定版♪♪~♪
 正直、前曲からの流れでは、こうしたスローテンポが続くとダレるのが一般的なんですが、それは全くの心配ご無用! むしろ脇役に徹したミルト・ジャクソンの燻銀の魅力も堪能出来ますから、聴くほどに虜になること請け合いです。

B-3 Whisper Not
 そしてオーラスが、これまた憎たらしいほどに嬉しい選曲♪♪~♪
 優れたリズム隊が提供する、幾分淡々とした4ビートは、このセッションを通しての特徴であり、そこから滲み出るクールなファンキームードがアルバム全体の完成された魅力の秘密だと思うのですが、この演奏は証拠物件として、まさに決定的でしょう。
 これまたベニー・ゴルソンが書いたお馴染みの愁いに満ちたテーマメロディが、参加メンバー其々の歌心優先モードで解釈されていく時、そこにはジャズ者にとっての至福の桃源郷が現出するといって、過言ではありません。
 なによりもジンワリとした、このミディアムテンポのモダンジャズグルーヴこそが、唯一無二ですよねっ!

ということで、決してガンガン突進するハードバップ盤ではなく、むしろソフトパップとも言うべき仕上がりは、ちょいと異質の黒人ジャズ作品かもしれません。

しかし、これは絶対にリアルタイムの白人ジャズプレイヤーには表現することの出来なかった世界じゃないでしょうか? ここで濃密に演じられたソフトなお洒落フィーリングこそ、モダンな黒人音楽のひとつの成果だと思います。

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ドナルド・バードとコーラス&ボイス

2011-03-09 15:32:10 | Jazz

A New Perspectiver / Donald Byrd (Blue Note)

結局、サイケおやじがジャズを本格的に聴くようになったのは1970年代以降ですから、その黄金時代のリアルな実相は知る由もありません。

ですからジャズ喫茶で様々なアルバムに接したり、スイングジャーナル誌等々を頼りに鑑賞を積み重ねる他は無かったのですが、既にチャーリー・パーカーは不滅の天才であり、ジョン・コルトレーンは神様と崇められ、マイスル・デイビスが帝王として君臨するそこには、鑑賞時間が増えるのに比例して、もっと日常的なプレイヤーに惹かれる自分を感じるようになりました。

そして決してガイド本にも掲載されず、またジャズ喫茶でも鳴らされることの無い作品に興味を抱き、ましてや自分がお気に入りのミュージシャンでも参加していたら、その邂逅はひとつの幸せだったんですねぇ~♪

例えばドナルド・バードが1963年に制作した本日ご紹介のアルバムは、、これがなかなかの快楽的な意欲作でありながら、何故か我国では無視され続けた現実があります。

それはドナルド・バード(tp)、ハンク・モブレー(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ケニー・バレル(g)、ブッチ・ウォーレン(b)、レックス・ハンフリーズ(ds)、ドナルド・ベスト(vib) という素晴らしいメンバーによるセッションでありながら、全篇に男女混声のコーラスが大胆に使われ、また作編曲にデューク・ピアソンが大きく関わったという、ある意味でのシャリコマ感覚が、聴かず嫌いの根本なのかもしれません。

もちろんご推察のとおり、サイケおやじは大好きなハンク・モブレー目当ての後追い鑑賞から、このアルバムの虜になったのです。

ちなみに録音は1963年1月12日とされていますが、なんとなくテープ編集やダビング作業もあったと推察するのは、全くの独断と偏見である事をお断りしておきます。

A-1 Elijah
 針を落として最初に聞こえてくるのが既に述べたとおりの男女混声コーラスによる、ちょいと下世話なゴスペルメロディということで、そのグッと不思議な高揚感がボサロック系のモダンジャズと混ぜ合わされていくテーマアンサンブルの魅力♪♪~♪
 ここを好きになれるか否かで、このアルバムに対する鑑賞姿勢が決まるような気さえ致しますが、アドリブ先発のケニー・バレルが何時もと変わらぬ都会的なブルースフィーリングを聞かせてくれますから、後は素敵なモダンジャズ天国へ直行する他はないでしょうねぇ~~♪ 実際、このケニー・バレルは最高なんですよっ!
 バックで快適なビートを送り続けるリズム隊のブルーノート感度の高さも特筆物ですし、ほとんど無名のドナルド・ベストが、これまたエモーションに満ちたヴァイブラフォンを演じてくれるのも嬉しいところです。
 そしてお待たせしましたっ! ハンク・モブレーのざっくばらんなテナーサックスが鳴り出せば、その場はすっかり桃源郷♪♪~♪
 まあ、正直、それほど調子は良くない感じではありますが、醸し出される雰囲気が唯一無二なんですねぇ~~♪ それは主役のドナルド・バードにも共通したところで、些か集中力に欠けたようなフレーズ展開が、残念……。
 しかし、こういうゴスペルコーラス&ボイスを積極的に使うという狙いは、それが頭でっかちになりつつあった当時のモダンジャズを大衆から遊離させない目論見として、方向性は間違っていなかったと思います。
 特にコーラスパートをホーンリフのように用いたりするアイディアは、ゴスペル調の演奏と見事にジャストミートしていて、個人的には気に入っていますし、それに呼応して素晴らしいアドリブをやってしまうハービー・ハンコックは、まさに名演中の大名演を披露していますよ♪♪~♪
 いゃ~、実にウキウキさせられますっ!

A-2 Beast Of Burden
 ちょいとテンポを落したクールな演奏ですが、もちろんテーマアンサンブルを形作るのは前曲同様のゴスペルスキャットであり、そのメロディや全体の雰囲気は、鈴木清順監督あたりが撮る日活ハードボイルドの劇伴音源の趣さえ滲んできます。
 あぁ、川地民夫や宍戸錠がストイックに街を歩く映像が目に浮かびますねぇ~♪
 もちろんドナルド・バードはマイルス・デイビスを意識したようなモード系のアドリブを演じ、クールなヴァイブラフォンやピアノがそれを彩った後には、ハンク・モブレーが畢生ともいえる独得のアドリブで自己の世界を紡ぎ出しますから、まさにモブレーマニアは歓喜感涙が必至ですよ。
 またハービー・ハンクックが、これまた良いムードで堅実な助演を聞かせてくれるのも高得点だと思います。

B-1 Cristo Redentor
 これまた黒人霊歌としか言いようのないスローなテーマメロディが男女混声コーラスで歌われるという、なんとも正統派モダンジャズから遊離したスタートではありますが、やはりドナルド・バードがトランペットでリードを吹き始めると、そこには所謂ファンキージャズのムードが濃厚に醸し出されるのですから、その安心感の作り方は流石というところでしょうか。
 しかも、それが同時代の他のミュージシャンがやっていた事に比べると、なかなか新しいんですよねぇ。
 まあ、このあたりの感想は、後追いならではのものですし、リアルタイムではどのような受け取られ方をしたのか、興味津々です。

B-2 The Black Disciple
 そして前曲のムードを引き継ぎつつ、一転、アップテンポで熱く盛り上がるのが、このゴスペルファンキーなハードバップ! もちろんテンションの高いリズム隊のアクセントや黒いコーラス&ボイスが重要なポイントを握っていますが、アドリブパートに入ってしまえば、まずはハンク・モブレーが十八番の「節」を全開という大快演ですし、ドナルド・バードも待ってましたの熱血を迸らせます。
 またハービー・ハンコックの既に新主流派がど真ん中の伴奏やアドリブも心地良く、ケニー・バレルの大ハッスルも王道を行くものでしょう。
 演奏は終盤のドラムソロが蛇足という感もありますが、しかしグループ全員に共通するのは、特有の歌心を大切にしていることだと思えば、結果オーライかもしれませんねぇ。

B-3 Chant
 これがまたしても下世話なゴスペル歌謡というムードが、実にたまりません♪♪~♪
 微妙な「泣き」の入ったソウルフルなテーマメロディを歌うコーラス&ハミングの存在感が琴線に触れるんですよねぇ~♪
 そしてドナルド・バードのトランペットがマイルス・デイビスとは一味違ったクールな歌心を決定的に披露していますよ♪♪~♪ もう、このアルバムの中では最高の瞬間じゃないでしょうか。もちろん続くハンク・モブレーが如何にも「らしい」スタイルで貫録を示せば、ケニー・バレルのマンネリフレーズも良い感じ♪♪~♪
 あぁ、この歌謡曲性感度の高さが、ゴスペルと演歌のコブシを共通項にしている証だとしたら、ハービー・ハンコックの前向きなジャズ魂の発露は、一体何!?
 ただし、このトラックでは、あくまでも男女混声のボーカルチームが存在してこその快楽性が顕著です。

ということで、こんなに気分は最高のアルバムが、何故に我国では人気盤扱いされなかったのか? 今でも不思議に思うほどです。

おそらくはシリアスなムードに欠けた内容がウケなかったんでしょうねぇ……。つまりジャズという、ある部分では難解で、とっつきにくい音楽を聴く優越感が、このアルバムからは得られないという事かもしれません。

しかし逆に言えば、これほど黒人音楽の様々な魅力を積極的に取り入れようとした意欲的なアルバムは、モダンジャズという枠組みの中では珍しいほどです。

それは同時期のマイルス・デイビスが試みていたモードやフリーブローイング等々と呼ばれる前向きな演奏とは異なりますが、同じトランペッターとして、ドナルド・バードが志した方向性だって、やはり前向きに違いないと思いますし、なんとも思わせぶりな斬新さを表現したジャケットには、「band & voices」と記載されているのが見過ごせないところでしょう。

もちろん、「新しき見通し」と題されたアルバムタイトルは言わずもがな!

さらに下世話だの、歌謡曲だのと書き連ねたコーラス&ボイスのゴスペルらしからぬスマートさも、なかなか要注意かと思います。

今日の歴史では、ドナルド・バードがハードバップからモードやフリーの洗礼を受けつつ、最終的にはブラックファンクでウケまくった1970年代前半の輝きまで、常に時代の節目にかなりのヒット盤を出してきたことが明白であり、このアルバムも願わくば再評価されんことを祈るばかりです。

まあ、こんな気持は後追いリスナーの気まぐれかもしれませんが……。

コメント
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