OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

レイドバック・グリ~ン♪

2006-08-03 18:08:55 | Weblog

真夏になりましたですね。

そして世間は夏休みモードということで、赴任地に借りている一軒家に家族や親戚がやって来ました。狙いは海や鮎釣らしいですが、無闇に遊んでばかりとは羨ましい限り……。

こっちは、汗だくで仕事なんだぞぅ~!

明日夜には友人一家もやって来る予定だし、こっちは怠惰を決め込む所存ですが、そこで、このアルバムを――

Am I Blue / Grant Green (Blue Note)

1960年代にブルーノート・レーベルの大看板となった黒人ギタリストのグラント・グリーンは、決して純粋なジャズを演奏していたわけではありませんが、逆にこれほど王道ジャズファンを喜ばせてくれる人もいないでしょう。

そのスタイルはブルースやR&B、ゴスペルに根ざしているのが明らかですが、グラント・グリーンの凄いところは、それを何の衒いも無くモダンジャズに変換させているところです。

その単音でバリバリと弾き出されるフレーズは分かり易く、しかも迫力があり、さらにハードバップばかりではなく、モードやフリーの領域までカバーしていく雑食性が強力です。

しかし私が一番聴きたいグラント・グリーンとはゴスペルどっぷりの演奏で、このアルバムはその色合がとても強い1枚になっています。

録音は1963年5月16日、メンバーはグラント・グリーン(g) 以下、ジョニー・コールズ(tp)、ジョー・ヘンダーソン(ts)、ジョン・バットン(org)、ベン・ディクソン(ds) という、ジャズ者にはなかなか気になる編成です――

A-1 Am I Blue
 いきなりホーン隊が唸り、ドラムスがドンドン、きます!
 しかし演奏は静謐なゴスペルムードがいっぱいで、中でもベン・ディクソンのドラムスの響きが、明らかにハードバップとは違うあたりがミソでしょうか。ジョン・パットンのオルガンのウネリも効果的です。
 肝心のグラント・グリーンは、その中で何時もよりは幾分センの細い演奏を聴かせてくれます。それは繊細というよりは、思わせぶりが満点で、聴いている私はグラント・グリーンが何時、本領を発揮してくれるのか? そればかり待ち続けるのですが……。
 続くジョー・ヘンダーソンは、スローな展開の中でソフトに黒い音色を満喫させてくれますが、これも消化不良ということで、実はこれといってソロパートが無いジョン・パットンのオルガンばかりに耳がいってしまうのでした……。
 あぁ、ゴスペル!

A-2 Take These Chains From My Heart
 陽気な哀しみの満ちたムードが素敵なゴスペルジャズです。
 ベン・ディクソンのイモっぽいドラムスは、おそらく演技でしょうが、ドドンパのアクセントで入ってくるホーン・リフにも、和みます。
 もちろんグラント・グリーンは何時ものグリーン節でアドリブを聴かせますし、実は密かに期待していたジョニー・コールズは、決定的な脱力ノリ♪ ジョー・ヘンダーソンのオトボケもたまりません!
 そしてジョン・パットンのオルガンは、間延びしたベースパートと緩~いグルーヴを満載して、私をレイドバックさせてくれるのです♪
 あぁ、心底、脱力! 気分は最高です。

A-3 I Wanna Be Loved
 これも厳かというよりは、ノンビリしたゴスペルジャズですが、秘められた哀愁がなんとも言えません。本当にハードなところが無く、演奏はひたすらに和みモードです。
 しかもジョニー・コールズの音程が危ないトランペットが、ここでは不思議と最高! グラント・グリーンはもちろん主役を務めていますが、ヤル気を疑うようなフレーズばかりです。そして実は、これが気持ち良いんですねぇ~♪

B-1 Sweet Slumber
 フニャフニャの出だしから、ここでも脱力モードが継承されたゴスペルジャズが展開されています。ハードバッブなんて、どこの国の音楽? と言わんばかりの雰囲気がたっぶりで、僅かにジョン・パットンが熱血ぶりを聴かせるのですが……。

B-2 For All We Know
 ようやくここに来て、少~し熱気が漂います。
 アドリブ先発のジョニー・コールズのバックではリズム隊がハードバップをやってくれますし、ジョニー・コールズ本人もマイルス・デイビスの物真似が冴えているのです。
 しかしジョー・ヘンダーソンは、得意のウネウネフレーズを繰り出しつつも、煮えきりません。なんだかこのセッションでは完全に調子を狂わされたというような言い訳に走っています。
 そしてグラント・グリーン! やっと本来の持ち味であるバキバキのピッキングと針飛びレーズを聴かせてくれるのですが……。

ということで、多分演目は有名ゴスペル曲ばかりなんでしょうが、それにしても不完全燃焼のアルバムです。おそらくこんなに脱力しているグラント・グリーンの作品も無いでしょう。

しかし不思議な魅力があるのも確かで、黒人ゴスペル本来の味のひとつが、こういうスタイルなのかもしれません。レイジーというかレイドバックというか……。

ですから私は仕事が終わって自宅に戻り、蒸し暑い部屋でビールを飲みながら怠惰に過ごしたい時には、これに決めています。

実際、アメリカ南部の田舎では、黒人達が家の前庭に椅子を持ち出して夕涼みしている光景が普通です。そんな時、傍らに置いたラジカセからは、こんな音楽が流れていた時もあったのでしょうか?

ちょうどこのアルバムの片面を聞き終える時間ぐらいで、何とも言えない気持ち良さに包まれてしまう私です。

コメント (2)
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