FOOTBALL LIFE

~サッカーを中心に日々の雑感など~

日めくり万葉集(21)

2008年02月05日 | 万葉集
日めくり万葉集(21)は大伴家持の歌。選者は写真家、織作峰子(おりさくみねこ)さん。故郷が石川県で、大伴家持の北陸の歌に惹かれ、その足跡を写真で辿っている。

【歌】
妹(いも)に逢(あ)はず
久しくなりぬ
饒石川(にぎしがは)
清き瀬ごとに
水占〈みなうら〉延(は)へてな

巻の17.4028   作者は大伴家持(おおとものやかもち)

【現代文】
妻に会わずに久しく時が過ぎた。饒石川(にぎしがわ)の清らかな瀬ごとに水占いをしよう。家持は都に残してきた妻を想い、川のほとりで水占いをした。石川県輪島市、日本海に注ぐ、饒石川〈仁岸川)。大伴家持が北陸に単身赴任していたときに詠んだ歌。

【選者の言葉】
この時代の人々は五感で生きていて、現代の私たちが見えないものも見えていた。川が流れてきて海に出るところで、流れの具合でどちらかが押される。海から川へ入ってくるか、川から海へ流れていくのか。

その力にによって合流する場所が変わる。その辺でどちらかが家持でどちらかが妻。川か海のどちらかになる。ぶつかり合ったのを見て、どちらが相手のことを想っているか。そういう占いをしたのかなと想像する。

その流れを見て占うというのは、一つには気休めにもなったのだろう。会いたさがつのった時、何か自然の現象によって、気持ちを自分の中で解釈していく、というのは想う気持ちを安らかにするという、そんな感覚、心があったんじゃないか。電話もメールも通じないそんな時代だからこそ。(おわり)

【壇さんの語り】
29歳のとき、地方長官として北陸に赴任した家持(やかもち)は、都にいる妻を恋しく想い、たくさんの歌を残した。家持の北陸でも生活は5年に及んだ。自然を見つめ、感覚と研ぎ澄ませ、妻の気持ちを想像する。その日々は歌人、家持を大きく成長させた。

〈能登半島の石川県というと、すぐに頭に浮かぶのは松本清張の「零の焦点」。映画の中でも印象的な海の映像があった。これは金沢を舞台にした殺人事件だったが、何回も映画やTVの番組になった記憶がある。松本清張のように、読んでも面白い社会派と呼ばれる存在の作家は、今、いるのだろうか。)

【調べもの】
☆妹(いも)
①(「兄せ」に対して)男性から、妻・恋人・姉妹などを親しんで呼ぶ語。

☆瀬(せ)
①海や川の水が浅くて徒歩で渡れるようなところ。浅瀬。
②川や海の流れ。特に川の急流。早瀬。

☆水占(みなうら)
水による占い。方法は不明だが縄などを流すのだろうという。

☆延(は)ふ
①延ばし張る。張り渡す。
②途絶えずに思いつづける。


[角川書店:古語辞典]










最新の画像もっと見る