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北米project 4 ~Is the order a warbird? その94【2016/03/04~10】

2019-06-19 23:33:35 | 海外旅行記
今度はこの潜水艦を見ます。中に入れなかったB-36ではなく、USSドルフィン (USS Dolphin) (AGSS-555)です。艦種記号AGSSは補助潜水艦を表します。AGが補助(Auxiliary; Gの語源は分からん)、SSが潜水艦(Submarine; 2文字目のSは特に意味なし)。
1968~2007年の間就役していたアメリカ海軍の実験潜水艦で、ドルフィンという名前はこれが7代目。最新鋭の装備を試験する実験艦ですので、色々な肩書を持っています。潜水艦として最深記録(3000ft≒914m)の保持、初の潜水艦と航空機との双方向通信、魚雷発射深度の最深記録、水面下でのEメールの送受信、アメリカ海軍で最後に引退した通常動力型潜水艦等々・・・。肩書以外にも色々な開発実績があるようで、それは後のアメリカ海軍原子力潜水艦の性能向上に大きく寄与しています。
通常動力型潜水艦なので、バッテリーに充電した電気で動きます。バッテリー切れになりそうな時はさっさと入れ替えろマヌケェ搭載しているディーゼルエンジンで発電して充電します。いわゆる電気式ディーゼルですな。


船体構造は単純な円筒形で、半球形の部材で両端を閉じています。単純な構造にして実験や構造試験を容易にするためだそうな。


実験艦なので大きさはかなり小さめで、151ft≒46m。第二次世界大戦時代のバラオ級の半分くらいしかないのです。


これの中には入れますので、行ってみましょう。潜水艦の中に入るのは初めてです。船体には足場が組まれていて、なるほど円筒形だから足の踏み場がないのだな。艦首から入る格好です。
ちなみにUSSドルフィンには潜行中のディーゼルエンジン駆動のためのシュノーケルがありませぬ。まあ実験艦だし。


クソ狭い。普通の駆逐艦が豪邸に見えるぞ。
左側は乗員の寝床。4段B寝台。起き上がれないやんけ。


実験艦ですので、怪しげな実験器具みたいなのがあります。何の機械か分かりませぬが、海水を分析する機械でしょうかね?海洋実験的なこともしていた?


ベッドの向かいにはソナー室(Sonar room)があります。僅かな音量の異音を聞き逃さないため、ソナー室は主制御室から離れた場所に分離されています。


その隣には通信室(Radio room)があります。通信設備は良かったようで、水上艦、航空機、人工衛星と音声やデジタルデータを介した通信ができました。全方位UHFアンテナが外のセイルにあります。
一部の通信機器にはFor display onlyという注意書きがあり、これのある機械はUSSドルフィンでは使われてなかったものだと思います。


此処から先が制御室です。
扉の奥に立ちふさがっているステンレスの板みたいなのは、USSドルフィン唯一の乗降ハッチです。乗員の出入りや物資、機材の搬入出は全てここでやってました。外の扉はセイルの上にあると思われ。
私はさっき艦首から入ってきたんですが、あれは退役後に博物館が見学しやすいように後付けで設けたものです。全然そんな感じしなかったけどな・・・。
ハッチ開口部は小さく、大きい機材は分解して入れて艦内で再組立するとか、それでも入れない場合は船体をぶった切って入れるというダイナミックなこともしました。そういうことしても大丈夫なんだ。
また、バッテリー充電のためにディーゼルエンジンを駆動させてる時の換気口の役割もありました。さっきも書きましたがUSSドルフィンにはシュノーケルがありませぬゆえ。そもそもハッチを開ける理由ですが、換気をしないとエンジンの排気で乗員がたちまち一酸化炭素中毒でくたばってしまいますからね。なので発電時は水上航行する必要があります。


ここが制御室(Control room)。映画とかでよく見るので、いいねぇ燃えるねぇ。
USSドルフィンでは操舵手2名(HelmsmanとQuartermaster)、制御手2名(深度制御担当と推進移動担当)、レーダー手、士官、艦首と艦尾をそれぞれ担当する伝達手というか使い走り2名で運用されます。


胸アツアイテム、潜望鏡。ウィーンと天井から下がってきてハンドルをガシャッと広げて海上の様子を覗くやつ。ああかっこいいのぉ。


潜望鏡を実際にのぞけるのがまた素晴らしい!というわけで潜望鏡からの眺め。岸が写ってますね。


操舵席ですね。外の様子が分からない。なのでまあ、計器を見ながら指示通りに操作するという運用なんでしょう。軍艦だと水上艦でもそういうもんだしね。USSアイオワもそうでしたが、操舵手からは外が見づらかったですし。
水上艦と違って深度計があるのが潜水艦の特徴ですね。たしかに潜水艦は3次元航行をするから操舵の複雑さが桁違いかもしれませぬ。


これは航法士席。バラストやバッテリーの管理も担当していたようですね。


制御室の階下にあるのがポンプ室。バラスト水の排水をする機械を収めた部屋ですな。同じ階にバッテリー室もあると思います。

USSドルフィンは2002年5月21日、サンディエゴ沖100マイルの海域で充電のため水上を航行中に魚雷発射管の蓋が破損してそこから海水が浸水する事故が起きました。当日は強風と波高さ10~11ftもあったため、エンジン排気の換気のために開けていた乗降ハッチからも大量の海水が浸水してきました。70~85tもの量が入り込み、それはUSSドルフィンの浮力の限界に近いものでした。さらに電気ショートによる火災も発生します。
そんな中で機関長のジョン・D・ワイズ・ジュニアは冷たい海水の溢れるポンプ室に飛び込んで90分以上に渡ってダメコンを行いました。具体的には排水弁の作動とその監視。その甲斐あって艦は安定して、沈没は免れました。乗員も全員退艦して死者なしでした。潜水艦は翌日サンディエゴへ曳航されて3年半かけて修理されて復帰しましたが、その後兵役についたのは1年だけでした。曰く、修理には5000万ドル掛かっているので、そんだけで退役させるのは変だなと思います。
ジョン・D・ワイズ・ジュニアはその後、敵戦闘以外での英雄的行為及び功績をしたものに贈られる海軍海兵隊勲章(Navy and Marine Corps Medal)を授与されました。

と、いう話でした。


制御室を抜けると次は士官室です。ベッドは2段A寝台。当たり前ですがリネン類を除いて可燃物は一切なし。潜水艦で火災とかシャレにならんですからね。水上艦には割と木製の調度品などが見られるので、ここは分かりやすい差異です。


反対側。デスクも狭いよねぇ。



ここがダイニングルーム。ギャレーと食卓が一緒になってます。


食卓。食事の他にも仕事したり休憩したり、艦内では貴重な憩いの場です。
壁側に3つある金庫みたいのは道具箱ですかねぇ?
真ん中の道具箱の上から天井へ向かってぶら下がっているステンレスの板は、食事時に展開して調味料や食器などを置く物置になります。使える空間はとことん利用してやるという意気込みを感じる。


階下につながるハッチ。階段すら無くて、はしごで上り下りします。空間がないのもあるでしょうが、水密の関係もあるんだと思います。


もう一つあったけど、アクリル板で蓋されていてよくわからないニャン・・・。

これでUSSドルフィンの見学は終わり。
実験艦が保存されるのも珍しいと思いますが、これが寄与した功績と、あやわ沈没から救われた英雄的逸話が保存へ向けて働いたのかもしれません。人を惹きつけるストーリーは大切な要素だよねと思います。

外に出てまた次の船を見学します。今回はここまで。




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