黒鉄重工

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北米project 4 ~Is the order a warbird? その52【2016/03/04~10】

2018-08-12 21:54:32 | 海外旅行記

2016年3月6日(日)11時37分
カリフォルニア州ペリス オレンジエンパイア鉄道博物館 受付所

路面電車の館を立ち去りとりあえず一通り見れたかな・・・と入口の方へ戻ってくると・・・。あっ、そういえばこいつが。

さっき表を動いていた路面電車を見たけど、これだったのか。これ、乗り場でスタンバってるけど、動くんか?乗れるんか?
ちょうど受付の建物が隣りにあるので聞いてみたら、切符を買えば乗れるそう。二つ返事で切符を買いました。PCCカーに乗れる日が来るとは。



つるんとした後ろ姿が特徴的。
前回まで散々見てきたロサンゼルス鉄道のPCCカーで、#3100です。製造は1943年セントルイス車輌製。
バス窓が無く、やや角ばった車体形状をしている戦前型と呼ばれる車種です。造られたのは戦中ですけども。
第二次世界大戦中、アメリカでも市民の日常生活はある程度制限され、マイカーでの移動はガソリンとタイヤが配給制になったため自由に使える状態ではありませんでした。そのため移動の足は公共交通機関である路面電車に集中します。この時期の路面電車の乗客は激増したそうな。
#3100は戦時設計車両だったようで、内装の椅子の骨格や手すりなどに本来使われていた普通鋼の部材は、クローム部品やステンレス鋼で代用されていたそうな。今では手すりにステンレス鋼を使うのは当たり前ですが、当時は代用品だったのですね。確かに軍用兵器にステンレス鋼はそうそう使わんからな。



乗り場の様子。
ちなみにこの日は日曜日だと言うのに来場者はほとんどいませんでした。おかげで見学や観察には申し分ない環境だったのですが、寂しいなあとも思いけり。朝は雨だったから、それで初動が遅いのかも知れませぬが・・・。



車内。路面電車ですがクロスシートだし、向きは全て固定。乗って座る分には電車というよりバスに近い乗り物なような。



#3100の発車まではまだ時間があるので外に出ていると、向こうからなんかやってきました。あ、こいつもいたな・・・。
さっきUPのディーゼル機関車が単機で動いていましたが、その後客車と連結して遊覧列車を運転していたようです。いまちょうど推進運転で戻ってきたところです。
扉のところに付けられている赤い板は標識板のつもりなんでしょう。あんな簡易なものでもちゃんと付けておくんですね。
貫通路に立っているお兄ちゃんはブレーキ管を持っています。たぶんブレーキ管の先端に制御器でも付いていて、お兄ちゃんがそれを操って客車のブレーキを掛けるとかそういったところでしょうか?

それにしても、ああ、こっちも乗りたい。先に客車の方に乗ろう。



機関車はさっきも見たユニオンパシフィック鉄道E8A形#942(1953年EMD製)です。
客車はサザンパシフィック鉄道のものなのでちぐはぐなのですが、アメリカの保存鉄道ではよくあること。気にしたら負け。
4両編成ですが、軽量鉄道ではない大型の車両が堂々としているのは迫力そのもの。天気もめっちゃ晴れてきたし。
動いているドッグノーズを見るのは初めてなので、感動します。最初はダサいと思ってましたが、やっぱり味のある顔なのだな。



E8形はEMDが造ったディーゼル機関車E系列のうちの1型式。無印のE形から始まってE1,E2というふうに改良型が出るたびに数字が増えていくのです。新幹線みたいな型式・・・。
20世紀中頃に流行したドッグノーズのような流線型の車体を持つ機関車のひとつで、E系は旅客用ディーゼル機関車です。なので蒸気暖房装置などを積んでたりするのです。
12気筒ディーゼルエンジンと発電機を2基ずつ搭載しているのが特徴。ディーゼル機関車2機分の出力を1度に運転できてお得なのだ。初期型の出力は900馬力*2基ですが、最終型では1,200馬力*2基になっています。E8形は1,125馬力*2基。最高速度は160km/h(100mph)だったそうな。

UPの#942は1953年に製造されて南カリフォルニア地域に配置、シカゴ~ロサンゼルスを結ぶ「シティ オブ ロサンゼルス」号の牽引機などを務めました。
1972年にUPを引退。この年はアムトラックが発足した年なので、UPの旅客部門も廃止されたものの機体はアムトラックには引き継がれなかったようです。ただし、シカゴ&ノースウェスタン鉄道(1959~1995年)に転職して#510として近郊列車の牽引機を務めました。
1988年にC&NWも退職して博物館入り。2012年に復元完了しました。割と最近に復活したのでピカピカなのだ。



台車は銀色なのがUP機の特徴。台車は3軸ですが、動輪は左右の2軸だけで、中央の車軸は遊輪です。



少ししたら列車を動かしてくれるそうなので、先に乗り込んで車内探検しましょう。
まずはサンディエゴ&アリゾナイースタン#175荷物/座席合造車。
こちらは荷物室です。手前の椅子は要員用の席なんでしょうけど、雑な配置だなぁ。



荷物室と言いながら簡単な郵便業務もできたんじゃないでしょうか?それともメール便みたいなやつでしょうか?
隣にはトイレと洗面台がありますが、用を足しているところは同僚に丸見えなのか・・・。



こっちは客室。座席は転換クロスシートが5列分あります。
窓の上にはステンドグラス的な装飾がありますが外側は塞がれているのであまり意味なし。後から塞いだように見えなくもないので、最初は透けて見えてきれいだったのかも。



サザンパシフィック#2350座席車。電車の付随車だったやつ。
こちらも転換クロスシートですが、座席の幅が狭くて背もたれの高さが低めです。近郊電車だからでしょうかね?



わたしは最後尾のサザンパシフィック#2144に陣取りました。これも転換クロスシート車です。
陣取ると言っても、乗客は私の他に親子1組・・・。乗車賃を払っているとは言え、1回の運転でこれでは赤字でしょう。走らせてもらえることに感謝。
列車は20~30km/hくらいのゆっくりした速度で敷地の外を出て数kmの線路を走りました。いわゆる本線を走る系保存鉄道です。ただしこれが現役の線路なのかはわからず。どうも貨物線の本線とは思えず、案外自分ちの線路なのかも。



なんてことの無いところで停車して折り返します。デルタ線等は無いので、帰りは客車を先頭にした推進運転で博物館に戻ります。
線路はずっと直線だったので、どちらかというと単調でした。でも軌道の状態は結構良さそうですよね。
架線も張られていますね。この線路は標準軌ですので、これはロサンゼルス鉄道ではなくてパシフィック電鉄用の架線でしょう。

というかこの博物館、パシフィック電鉄の電車も持っているんですよね。今回は下調べ無しで行ってしまったんでノーマークでしたし、それの車両も見当たらなかったので(車庫に置いてあったのだろう)完全に見過ごしてしまいました・・・。ここも再履修ですかいな。



戻ってきました。いやはや、ドッグノーズかっこいいな。#942も状態抜群に良いし。



ちょうどLAR#3100が踏切を渡るところでした。撮影撮影!




片側には扉が一つもないです。やっぱりバスだよな。乗降扉の関係で台車が前後不均等に配置されているのにも注目です。
これも70年前の電車ですから、よく動かせる状態で残っていると思います。外板だって見るからに薄そうなので、マメに手入れしてやらんといけないでしょうし。



そして路面電車にも乗車です。乗客は自分だけでしたが、走らせてもらえました。ありがとうございます・・・。
PCCカーにはマスコンブレーキハンドルが無くて、足元のペダルで操作します。今までの路面電車とは全く操作感覚が異なるもので、やっぱりバスだよなこれ。レールバスだよ。なので運転中は手ぶらです。手持ち無沙汰になるようで、運転台に手すりがあります。

で、PCCカーで園内の線路を一周。戦時中に内装の一部が金属供出で持ってかれたとかそういう話をしてました(あんま覚えてない



乗り終えました。苦しいですが#3100と#942。

これにてオレンジエンパイア鉄道博物館から撤収します。
想像以上に大きい博物館でした。それは収蔵車両の数もそうですし、動態保存の規模もそうでした。特に動態保存は路面電車を始めこれほど大規模とは思わず・・・。
この手の動態保存主体の鉄道博物館はイベント開催時に行くのが、いつもは車庫で眠ってるようなものも出てきて色々なものが動いていて一番ですので、機会があればその日を狙って再訪したいものです。
ロサンゼルス近郊では最大級の鉄道博物館のひとつであるので、みんなも近くまで来たら行ってみよう。

というところでOERM編はここまで。次回から再び航空機へ・・・。


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