一文字 寅 の 「風菜園(かぜさいえん)」 

「天に星。地に花。人に愛。」 風に乗って、日々の所感を「風菜園」から発信してまいります。

恩師逝く 「通夜振る舞い」に私の忘れ物   12/6

2011年12月08日 22時10分00秒 | 「所感」もろっもろ~

( 生駒の酒「山鶴」 ) 

■2011/12/8(木) 雨のち月夜(雨後の月)  

2011/12/6(火)おとといのことだった。 朝礼が済むとまもなく、不穏な話題が職場に流れた。 まわりの「まさか」という言葉は、私の耳にも入ってきた。 退職されてまだ10年、あんなにお元気だったのに・・・ あの調子なら100歳まで生きると現役・OBの誰からも言われていた  私の恩師であったN師の訃報の知らせは、あっと言う間に広まった。 その日私は、夜の予定を取り消して、昼から早退し、自宅に帰って喪服に着替え、王寺からふた駅の勢野(せや)の自治会館のお通夜へと赴いた。 生駒線を降りるとまだ17時前だというのに辺りは暗く、底冷えする寒い夜だった。

N師の新人時代は、創業者H社長の秘書からスタートされ、後に、大所帯の部の部長として多くの後輩を育てられ、晩年は宣伝部で、広告委員としてご活躍され、その晩年の時代に私は色々なことを教えて頂いた一人だった。 秘書時代風呂敷一杯の株券を社長室に持ち込んだエピソードも今となっては、隔世の感がある。

退職されてからもその活躍は、めざましく 土鍋でごはんを炊くブームを作った 伊賀焼・長谷製陶の顧問を務められ「かまどさん」の大ヒットをとばしたり、いかに伊賀ブランドを全国に広めるかで伊賀ブランドの委員をされたり、またうちの工場の三重県への誘致活動などで北川知事にも直にあったり、北海道六花亭の社長に製陶でコラボできないか持ちかけたりと凄い物があった。

他業種とのコラボだとか、こう工夫すればもっと良くなるといったことにアイデアとひらめきが素晴らしく、常に前向きで、私の人生に大きく影響を与えた方だった。 

「必要-必然-絶対」 といった哲学観めいたことから  「人には人それぞれの生き方がある。だから、他人と決して生き方を比較しないことだ。」といった戒めめいたこと  そして五木寛之とお酒(但し日本酒に限らず、焼酎・ウイスキーも愛飲されていた)が好きだった。 

通夜の中でも何度も故人はお酒が大好きで・・・ といったセリフが司会者から出て、たとえばスタンドアサヒの一角を借り切って行った飲み会のことを思い出して、私は涙が止まらなかった。  

市ヶ谷駅のホーム100mに広告をする際、東京の営団地下鉄に行ったこと。 また南北線の開通パレードに招待されたこと。 福岡のバスセンター上に大きなネオン塔を出して駅前のホテルで、点灯式を行ったこと 今これを書きながらも涙がこみ上げてくる。

会社受付のチーフTさんに知らせたら彼女も「信じられない」と驚きを隠せず、お世話になった友人と共に通夜に出席してくれた。

通夜は19時からだったが、私は17時に会館に着いて、奥様に挨拶とお世話になった御礼を述べた。 御礼を述べきれないほどお世話になった。 棺の中の師の顔は、安らかで、青年のように澄んだ表情だった。 逆に奥様からも御礼を言われた。 10年前、退職されてからすぐの夫婦旅行は、「九州一周と五島列島」だったが、そのプランと見どころを大学ノートに書いて私がプレゼントしたのだった。 

「全力で思い残すことなく駆け抜けられた人生ではありませんでしたか」と奥様に尋ねると「ええ、その通りですね」と頷かれた。ある意味、なんとなく生きているより短くてもずっと幸せな人生に違いない。

底冷えする寒さに私は、早く来ていたこともあり会館の中に居たが、外のテントもたくさんの人だった。 お通夜の後、故人の好きだったお酒を頂いて在りし日の思い出話に浸ってくださいと『通夜振る舞い』が行われ、私も最初の方だけだが加えさせていただいた。

剣菱や薩摩五代・いいちこなどの日本酒・焼酎にビールににぎり寿司が各テーブルに用意され、50~60人ほどがテーブルを囲んだ。

その時に思った 実は師が好きだった日本酒を持って来れば良かったと  自分ともあろうものが・・・と  生駒の銘酒「山鶴」だ。

二人ともこの酒が好きで、当時会社の手前にオープンしたてのお好み焼き屋さんにすすめて置かせた銘柄でもある。 後の広告委員会で、ここの酒を関東メーカーの広告委員各氏に送って好評だったと聞いたし、それからしばらくしてそのお好み焼き屋に行った際は、美味しいお酒を教えて頂いてありがとうございます。と御礼を言われたエピソードも思い出した。

残念なのは、創業者の秘書として創業精神(イズム)を引き継ぎながら もうそこまで来ている来年の創業100周年を目にできなかったことだろう。

ただただ ご冥福をお祈りいたします。 いずれ「山鶴」は、私がお持ちいたします。

(寅)