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YS Journal アメリカからの雑感

政治、経済、手当たり次第、そしてゴルフ

Drill, Baby, Drill

2010-04-02 23:29:50 | アメリカ政治
健康保険改革法案(ずっと直訳してこう呼んでいたが、日本では医療保険改革が一般的な模様)が、オバマ政権就任以来、アメリカ最大の政治的関心事であった。取り敢えず、先月法案成立した事で、州対連邦の法廷闘争や中間選挙(今年11月)での戦いに活動がシフトしていっている。

国内外とも政治課題は山積みなのだが、今週は、エネルギー問題で、興味深いオバマ大統領の発表があった。これまでの政府方針を覆し、オフショア(沿岸沖合)での石油採掘を可能にする決定である。但し、大西洋側の一部、メキシコ湾の一部、アラスカの一部のみに適用され、太平洋岸は全面的に保護されるなど、全面的なものではない。

オバマ大統領としては、石油採掘問題単独として考えるのではなく、環境政策の一環としてのエネルギー問題として捉えており、先月発表した原子力発電への政府融資と呼応する形での政策という位置付けである。芸が細かいのは、今週 EPA (環境省)から2016年よりの厳しい燃費規制の発表があった。

オバマ政権の環境問題における法案という事では、"Cap and Trade" (炭素税)があるが、昨年下院では可決したものの、民主党が絶対過半数を保持していたときの上院でさえ、審議にさえ至らず、完全に野ざらし状態に有る。気候変化(地球温暖化)の問題では、昨年から科学的根拠が揺らいできており、経済状況の事もあり、進展するとは思われない。

一方で、オバマ大統領は、環境問題を EPA (環境省)の権限強化で実現を図ろうとしている。燃費規制はその一環である。

今回の石油採掘再開の発表については、オバマ大統領の共和党への歩み寄りという見方が多い。よって、民主党側からは、具体的な見返り("Cap and Trade" (炭素税)に限らず、議会協力の言質)も取らずに安易な妥協という批判、共和党側からは、全面的開放ではないの、だだのお為ごかしとの批判が出ている。

アメリカの長期エネルギー政策の2本柱、輸入石油に頼らない、クリーンエネルギーへの移行を考えた場合、今回のオフショア(沿岸沖合)での石油採掘は、非常に理にかなった決定だと考える。

先ず、石油の需要が急激に減る見通しが無く、自国に埋蔵量がある以上、これを掘らない手は無いと思う。輸入石油も減らしているがゼロになる訳ではないので、OPEC 等の価格主導権を牽制する意味合いもある。万が一、中東が大変な事になった時の用意という意味もあると思う。(アメリカが中東への派兵を止めて、中東の石油生産が壊滅的になる最悪シナリオさえ、存在すると思う)実際に石油が出るまで、数年は掛かるという事なので、これ以上の遅れは許されないのだと思う。

又、クリーンエネルギーの開発に着いても、どこまで貢献出来るか未知数なところもあり、こちらのヘッジの意味もあると思う。原子力発電建設も同様の流れである。

余り話題になってないが、オバマ大統領の現実路線(見方によっては妥協)への変換、もしくは大統領としての成長が起きているのではないかと考えられに事も無い。

健康保険改革法案の成立への過程で、民主党的政策一辺倒では、国の運営が出来ない事を認識したのではないかと思う。又、昨年のアフガン増兵や、コペンハーゲンの失敗(オリンピック、気候変動の国際会議)を通じて、急速に学習したのではないかと思う。

もし、そうだとしたら、健康保険改革法案に固執した事は非常にマイナスであった。民主党が上院の絶対過半数を失った直後の今年の一般教書演説で表明した様に、雇用を最重点にし、健康保険改革法案を取り敢えず棚上げにしておけば、民主党の中間選挙のダメージももう少し少なかったと予想される。(まあ、健康保険改革法案は今しかやれないので、やっておいて、その後は超党派的な政策を進めると肚を括っていたのであれば、それはそれでありかなーとも思う。)

活動家としてリベラルの理想主義者の経歴が長いだけに、演説等では、まだまだその癖が抜けないが、今回のオフショア(沿岸沖合)での石油採掘を含め、現実的にはなってきているので、今後の政策が注目される所である。

「Drill, Baby, Drill」は、2008年共和党のエネルギー方針であり、アラスカ州知事であった Sarah Palin(サラ ペイレン)が良く使っていたので、有名になったフレーズだ。(女性が口にした事で、性的攻撃な風刺もあり、有名になったとも言える。)

環境保護主義者から、オバマも "Drill, Baby, Drill" Club 入りに入ったと痛烈な批判もあるが、この批判こそが、彼の望んでいたものである事を望む。


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