【Jリーグ】スーパーカップから読み解く、今季の鹿島とG大阪
元日の天皇杯で2009年シーズンが終わったと思ったら、早いもので2010年Jリーグ開幕まで1週間となった。その前哨戦となる「富士ゼロックス・スーパーカップ」を27日に東京・国立競技場で取材した。3年連続、J1制覇を成し遂げている鹿島アントラーズと、昨季天皇杯王者のガンバ大阪が激突し、結果的には鹿島がPKで勝利したのだが、新シーズンに向けた両者の変化が非常に興味深かった。
まずは鹿島。主力は大きく変わらないが、ベテランの本山雅志が椎間板ヘルニアで長期離脱を強いられたことが最大の気がかり。加えて、昨季までの重要なバックアップだった増田誓志と田代有三が揃ってモンテディオ山形へ移籍。ダニーロもブラジルへ帰国したことで、控えの選手層も薄くなってしまった。守備陣は李正秀が京都パープルサンガから加入したことで戦力アップが実現したが、攻撃陣の方はややコマ不足の印象があった。
しかし富士ゼロックス・スーパーカップを見る限りだと、本山の穴を埋めるべき新外国人選手のフェリペ・ガブリエルがまずまずの動きを見せていた。まだ前線のマルキーニョスや興梠慎三、同じ2列目の野沢拓也、ボランチの小笠原満男や中田浩二らとの連係はまだ完璧ではなかったが、日本のスピーディーで動き回るサッカーに慣れ始めている様子だ。ダニーロが来日した際は独特のリズムに戸惑い、ボールをゆっくり持とうとすると奪われたり、チームの流れを止めてしまったりしていたが、そういう違和感は感じられなかった。
このフェリぺと後半途中に交代した成長株・遠藤康も持ち味のドリブル突破力を遺憾なく発揮していた。塩釜FCから入団して4年目で、これまでは増田や中後雅喜(現千葉)らの陰に隠れてベンチにも入れない日々が続いた。が、彼らの移籍で今季は一気に出番が増えそうだ。オリヴェイラ監督も「今年は彼が必要となる場面が増える。若手からの脱皮をしてもらいたい」と大きな期待を寄せる。彼ら2人の出来によって、鹿島の序盤戦が大きく変化しそうだ。
もう1つ、鹿島の好材料を挙げるとすれば、中田浩二の完全復活だ。昨季前半まではひざ負傷の影響でコンディションが悪く、本人も痛みを抱えながらのプレーだったが、昨季後半から試合出場時間が伸び、今季もキャンプから飛ばして調整したことがプラスに働いたのだろう。今はすっかりフィレッシュな状態になった。運動量が目に見えて多くなり、動き出しや攻守の切り替えも鋭さを増している。こうしたプラス要素をうまく行かせれば、3~5月のJとACLの連戦も乗り切れるのではないか。
そんな鹿島とは対照的に、G大阪は戦力が揃わず苦しんでいる。富士ゼロックス・スーパーカップも山口智、中沢聡太というセンターバックの柱に加え、キャプテン・明神智和が負傷欠場。山口は2月のグアムキャンプで左ひざ内側じん帯を痛めてまだランニングを始めたばかりで、西野朗監督も「あと1ヶ月はかかるのではないか」と顔を曇らせていた。中沢と明神も来週の開幕に間に合うかどうかは微妙という。
そこで期待されるのが、高木和道と、若い菅沼駿哉の両センターバックだ。彼らは鹿島戦で先発し、相手に流れの中からの得点を与えないという一応の成果を挙げた。しかしリーグ戦になればコンスタントな仕事が求められるので、まだ楽観はできない。幸いにして昨季、一昨季とシーズン序盤に負傷した加地亮が今季はハイペースな仕上がりを見せており、彼ら2人を献身的にサポートするはずだ。山口と中沢が戻ってくるまで彼ら3人がどれだけ踏ん張れるか。それがG大阪の序盤戦を大きく左右しそうだ。
攻撃陣も陣容が変わった。昨季はレアンドロ、山崎雅人(広島)、播戸竜二(C大阪)とFWの選手層が非常に扱った。そのレアンドロがシーズン途中に去り、山崎と播戸も移籍。加えて寺田紳一(横浜FC)、倉田秋(千葉)といったバックアップ勢もいなくなり、計算できる選手がルーカスとチョ・ジェジンだけになってしまった。そこで今季はゼ・カルロスをポルトゲーザから獲得したのだが、コンディションが上がらず、当面は使えそうにない。そこで若い平井将生、宇佐美貴史らの存在が急浮上してきた。
平井はG大阪下部組織上がりの5年目の選手で、スピードを生かした飛び出しがウリ。宇佐美の方はご存知の通り、昨年のU-17ワールドカップ(ナイジェリア)で活躍した日本の未来のエース。17歳とは思えない図太さを持った点取屋だ。「今までのガンバは足元でボールを持てる選手が多かったけど、将生も貴史もスピードでタテにいける選手。彼らが入ることでサッカーがより早くなり、ゴールへの迫力が出る」と橋本英郎も大きな期待を寄せる。鹿島戦では2人とも硬さが目立ったものの、これから試合を重ねていけば特徴が光り、チームに新たなエッセンスをもたらすかもしれない。
変化しつつある両者が今季もJ1優勝争いをリードするのは間違いないだろう。1週間後の開幕が一段と楽しみになる一戦だった。
元川 悦子 03月01日01:05
悦っちゃんのコラムである。
今季も筆が走っておる。
完全勝利と言えた昨年のゼロックス・スーパー杯に比べると、PK戦までもつれ込んだ今年は甲乙付けがたいという記事になっておる。
しかしながら、ユダの完全復活とヤスの成長で序盤の鹿島は盤石と言いたげである。
長年鹿島を見てきた悦っちゃんにとってユダに関する思いは深かろう。
彼が復活したことについては、我が子が如く嬉しいに違いない。
それは我等も同じである。
昨年後半の快進撃の立役者となり、今季最初の公式戦ではも大活躍したこの男無くして2000年代の鹿島は語れぬ。
悪しき歴史の代名詞となり、心ない言葉も吐かれたが、今となっては思い出である。
ユダという愛称も慣れ親しんできたように思える。
地味なポジションではあるが、勝利への飽くなき追求を知っておる男である。
今季は通年に渡ってお世話になることとなろう。
ベテランの域に達した現在は青木、船山、修人の良いお手本となり、鹿島を支えておる。
今季も楽しみである。
ユダと共に栄冠を得る喜びを分かち合おうではないか。