小松左京氏が亡くなった。
心の成長期である十代、
SF小説は僕にとって心の糧だった。
忘れもしない中学生1年生の教室で、
同級生の大城君から勧められた1冊の本、
筒井康隆の『将軍が目醒めた時』が、
僕とSF小説との本格的な出会いだった。
それから筒井康隆をはじめ、
日本SF界第一世代、第二世代の作家たちの作品を貪るように読んだ。
その中に小松左京氏の作品もあった。
筒井、小松両氏の小説はすべて読んでいる。
そして現在にいたるまで繰り返し読んだ回数も、
お二人の小説が群を抜いている。
いわば筒井康隆の小説は僕の心の血であり、
小松左京の小説は僕の心の肉だった。
数年前、『日本沈没』の再映画化の折、
小松左京氏にお会いすることがあった。
自分の日々を記録した、
『規則と不規則のあいだ』を読み返したら、
2006年6月30日と同年7月2日のことだった。
放送作家という仕事をやっていてよかった。
心からそう思った出来事の一つだ。
あの時、もし過去に呼びかけることができるなら、
中学生時代の自分の自慢してやりたいと思ったものだ。
「今、小松左京さんと会って一緒に酒を飲んでいるんだぞ」と。
ちなみに7月2日のことは、
小松左京氏の日記『臥猪庵hic』にも書かれていて、
僕も登場する。
なんとも光栄な話である。
小説家への最大の追悼はその作品を読むことだと思う。
今日からしばらく小松左京氏の作品を読み返そう。
さて何から読もうか。