お苦手なもの

2021年03月29日 11時34分04秒 | コメディのかけら
「お苦手なものやアレルギーはございますか」

コースやおまかせで料理を頼んだ時、そう尋ねられることがある。
ありがたい気遣いだが、僕はいつも答えに窮してしまう。

「お苦手なもの」が多いからである。

寿司屋であれば、まだ気は楽だ。
苦手なのは生の貝類とイクラなどの魚卵。これは答えやすい。

しかしこれが、割烹やフレンチ、イタリアンなどになると、答えるのが難しくなる。

僕の「お苦手なもの」は、魚介類以外だと、野菜はブロッコリー、カリフラワー、茄子、オクラ。
肉はレバー。納豆もダメである。

アレルギーならば堂々と断ることができるが、どう見ても単なる好き嫌いだとわかるラインナップである。
そもそも、これらの食材が今日の料理に使われるかどうかもわからないわけだし。

結局いつも「ありません」と答えてしまう。
するとたいてい、一つか二つ「お苦手なもの」が出てくる。
苦手なものはないと言ったにも関わらず残すのは失礼だと思い、そういう時は、なるべく噛まずに飲み物で流し込むようにして食べる。

実はこの程度のことは、さして苦でもない。
辛いのは好意で出してくれた時である。

以前、近所の寿司屋に一人で入った時のことだ。店主と話すうちに、僕と同じ高校出身であることがわかった。
彼の方が年上だった。
だから後輩の僕にサービスしてやろうと思ったのだろう。

「これよかったら」

目の前に小鉢が出された。
そこには山盛りの茄子の漬物があった。
鮮やかな紫の茄子。お好きな人にはたまらない色合いだろう。
だが、苦手な茄子の料理の中でも、僕がもっとも苦手なのが漬物なのだ。

なぜ高校の話なんかしてしまったのだろうか。

十数分前の自分を悔いながら、茄子を口に入れる。
ビールで流し込む。
茄子。ビール。茄子。ビール。茄子。ビール。

なんとかすべて茄子を食べ終えた時には、もうお腹はいっぱいだった。
その後、ほとんど寿司は食べずに帰った気がする。

すだちそば

2021年03月27日 17時29分35秒 | その他のかけら
冷たいすだちそば、
今日はじめて食べた。
前から食べてみたかったので、
念願がかなった。

それにしてもこれは、
どうやって食べるのが正しいのか。

薄切りのすだちをそのまま浮かせて、
酸味がつゆに滲み出るのを待つのか。

すだちを箸でつついたり絞ったりして、
酸味を出すものなのか。

すだちは食べるものなのか。
残すものなのか。

ご存知の方、教えて下さい。

新宿駅の奇妙な静寂

2021年03月25日 15時03分06秒 | コメディのかけら
小田急線が新宿駅に到着した。

車内の乗客が左右のドアに集まる。

しかし…ドアが開かない。

10秒…20秒…
奇妙な静寂が車内に充満する。

その時、ようやく車内アナウンスが流れる。

「停車位置を直すため、
 もうしばらくお待ちください」

停車位置を直す?
新宿駅のホームは行き止まりだ。
それなのに間違えたのか?

さらに30秒ほどして、電車が動く。
その距離30センチか40センチぐらい。

よくぞそんな微妙な間違いに気づいたものだし、
そもそもよくぞそんな微妙な間違え方をしたものだ。

最初の位置ではどんな不都合があったのだろうか。

インターシップの落し穴

2021年03月22日 09時02分05秒 | アイデアのかけら
知り合いの大学生が、
ある企業の長期インターシップで、
なかなかのひどい目にあった。

どんな目にあったのかは、
ここでは省くが、
その話を聞いて思ったことは、
急成長しているベンチャー企業の中には、
社内の環境整備にまで手が回っていない、
意識が向いていないところも多いのではないか、
ということである。

一般の社会常識ではなく、
自分たちの価値観だけで社内常識が形成されている、
そんなケースも多い気がする。

事業こそ今どきの内容だけど、
組織としては旧態依然としている、
要は「同種族」会社である、
そんなふうに感じた。

この手の企業の「見た目」に、
大学生は惹かれやすいのはわかるが、
だからこそ慎重にいった方がいいぞ、
と思った次第。

機長の思い

2021年03月20日 07時23分49秒 | コメディのかけら
現在、国際線の旅客機はあまり飛んでいないが、
貨物機は、以前よりたくさん飛んでいる。
そのため、ふだんは旅客機のパイロットも、
貨物機や貨物のみを運ぶ便に乗っているという。

知り合いのCAから聞いた話だ。
彼女がひさびさに国際線に搭乗した時、
顔見知りのパイロット曰く、

「ひさびさに人を乗せて飛ぶと神経を使う。
 このところずっと貨物を運んでいたからね。
 貨物はちょっとやそっと揺れても大丈夫。
 でも人間の場合、そうはいかない」

なるほど。

リークの事情

2021年03月19日 08時49分27秒 | アイデアのかけら
聞いた話だ。

ある大手企業の醜聞が、週刊誌に出た。
情報をリークしたのは、その企業の社員だ。

なぜそんなことをしたのか、
事情を知る人の話によると、
情報をリークした社員は、
このご時世の影響で給与をカットされてしまい、
その分を補填するために、
情報を週刊誌に「売った」のだという。

この話をどう受け止めるかは、
人ぞれぞれだと思う。

最近のある週刊誌の記事に関して、
「悪いのは情報をリークした人である」と断罪していたSNSを見かけたが、
リークする側にも事情はある。
そしてその中には切実な事情だってあるはずだ。
そこまで考えずに断罪することは、僕は浅はかだと思うのだ。

2020年3月別府

2021年03月16日 08時30分14秒 | 旅のかけら
昨年の3月上旬に別府に行った。
その頃すでに、別府は閑散としていた。
前年秋より韓国からの旅行者が激減している中、
新型コロナの影響で中国からの旅行者もストップしたせいだった。

それでも当時はまだ国内旅行自粛のムードはさほどなく、
観光名所には卒業旅行と思しき若者がたくさんいた。
ただ、大型観光バスの駐車場はどこも空いていたけれど。

当然のことながら夜の街も閑散としていた。
当日予約は難しいと言われている人気店の予約も、
夕方の電話ですんなり取ることができた。
店に向かうタクシーの運転手によると、
ここ数日、地元の人間も飲み歩くのを控えているという。

その数日前、大分市のラウンジで
県内で初めての感染者が出たからだ。

別府は観光地である。
感染者が出たら大変なことになる。
だから市民は自主的に夜の街に出ることを控えたのだ。

大分市と別府市は確かに隣り合った市ではあるが、
そこで感染者が一人出ただけで行動を自粛するというのは、
現在の感覚からすると、いささか過敏な気がするが、
一年前の今頃は、それが観光地の住民にとっては自然な考えだったのだろう。

当時のあの緊張感を今も保つべきだとは思わない。
COVID-19については、いろいろなことがわかってきたからだ。

ただ1年前の空気をふと思い出したので、記録しておきます。

ふしぎな値段設定

2021年03月13日 15時00分53秒 | コメディのかけら
「1010円です」
「え、いくらですか」

意外な値段だったので、
聞き間違いだと思い、
聞き返してしまった。

国籍不明の店員がレジを指し、

「1010円です」

と繰り返した。

2種のカレーのランチセット1010円。
値段が高い安いという話ではない。
10円だよ、10円、気になるのは。

小銭を持ち合わせていない時の、
この10円は、なかなか面倒だ。
そして、この時、僕は小銭を持っていなかった。
家を出る時にいつも、財布の小銭は出してしまうからだ。

1000円札2枚出して、
990円、お釣りをもらう。
財布が小銭で重くなる。

帰りがけ、
店頭に出されているランチの看板を見た。

918円(税抜)

こんな値段設定をするならば、
税込みで1000円にすることはできなかったかなあ。





フグ毒人間

2021年03月10日 08時13分42秒 | コメディのかけら
フグの毒は自ら作っているものではない。
毒を持つカニや藻類などを捕食することで体内に毒が取り込まれ、
それが肝臓などに蓄積することで、猛毒をもつ危険な魚となる。

ある種の人間に関しても同じようなことが言えるのではないか。
毒を持つSNSの書き込みやネット記事を読むことで体内に毒が取り込まれ、
それが脳に蓄積することで、あのような猛毒をもつ危険な人物となる。

景気の悪い話ちょっとイイ話

2021年03月04日 08時54分27秒 | 業界のかけら

番組予算が大幅に減額になるので、
4月から構成料を減額させて欲しいと、
番組プロデューサーから連絡があった。

ついにきたか。

レギュラー番組の構成料というのは、
最初に決めた金額から変わらない。
10年続いても上がることはないし、
(若手の頃は立場が変わって上がることはあるけど)
逆に下がることもない。
リーマンショックの時も、
番組の制作費はかなり減ったはずだが、
それ以前から継続している番組に関して、
構成料を下げられることはなかった。

しかし今回、ついにきた。

民放は企業の宣伝広告費で番組を作っている。
数年前からその金の多くがネットに流れている。
昨年はオリンピックに向け従来よりも宣伝広告費を抑えた企業も多い。
そして、この新型コロナ禍だ。

4月から構成料を減額させてほしいという申し出は2つあった。
某番組はスタッフを縮小するため、僕も降板することになった。

状況を鑑みれば、まあ、仕方ない。
今まで恵まれ過ぎていたのだ。

そんな中、ちょっとだけ心温かくなる話があった。
TBSの『この差って何ですか?』という番組も、
詳細は省くが、テレビ業界の変化の影響で終了となった。
立ち上げから深く関わっていて番組なので、
いまだに釈然としない思いが残るのだが、
その最終回のオンエアがあった日、
ADさんたちが番組も歩みをまとめたフォトブックを作り、
プロデューサーたちに贈ったと聞いた。
出演者に記念品を贈るという話はあるが、
ADからプロデューサーに記念品を贈るなんて話、
初めて聞いた。
おそらくみんな、寝る時間を削って作ったのだろう。

紆余曲折いろいろあったけど、
最終的にいいチームになったんだなあ。
この話を知ったとき、素直にそう思った。

縁があったら、また一緒に番組を作りましょう。