会計スキル・USCPA

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カーライル プライベイトエクイティ

2008-05-19 22:42:56 | 金融
いやあ、1年半前はこんな記事がでていたんでござんすよ

ブームはいつかすたれる、うーん、一年後、プライベイトエクイティの世界も厳しくなったもんですな。ブラックストンは上場したものの短期間で株価が半分に、いやー苦しい苦しい。

今日は、カーライルのハナシです。そのブラックストン、KKRと並んで三大プライベイトエクイティと呼ばれているんだそうです。

カーライルと言えば、一般には微妙な名前なんじゃないでしょうか。

こんな具合ですな。  私はと言えば、やはり911の後にマイケルムーアの『華氏911』でブッシュがどう、ビンラディンがどう、と告発されていたのを軽く覚えておりますな。カーライルの名前も出てたような気が・・・。

まあ、私がどうこう言うことではないし、ブッシュさん(お父さん)も、もうお辞めになっておられるようでしてね。

で、この本です。

カーライル ― 世界最大級プライベート・エクイティ投資会社の日本戦略

結構面白い本でして、カーライルの、主にカーライルジャパンの活躍と米国の幹部のインタビューを交えながら紹介しています。最終章の目線が高くて、日本の経営者が獲得すべき新たな戦略的思考とありますな。

全体的にちょっとホメ過ぎやろ、という感じがしないでもありません。

何が面白いか、ということなんですが、プライベイトエクイティによって何が可能になるのか、あるいはその機能は何かということです。

本書では具体的な事例で説明しています。東芝の上場子会社が大規模投資をしようと思っても親会社の事情もあって投資ができない。増資も株式の希釈を招くので無理。そこで経営陣はMBOを決意。カーライルが登場します。

カーライルの支援と銀行の協調融資もあって、TOB資金に加えて設備投資資金も調達できて、めでたしめでたし。

『資金調達がボトルネックになって成長の可能性を摘み取られそうになっていた企業がMBOという手段によって成長軌道へと進むことができた』ということなんですな。

他にも,キトーの例も上がっていまして、これもMBOなんですが、カーライル出資後の事業の一部売却、無能な米国現法の経営陣交代、中国現法の主導権奪回について、描かれています。カーライルのスキルを使って次々に経営課題を解決。当社も、問題としては認識していましたが、解決できる問題とは捉えていませんでした。米国現法の幹部のクビを切るにしても訴訟が怖くて踏み切れない。それをカーライルは外部の弁護士を使って段取りよく処理してしまう。キトーはその後、ボトルネックが解決された結果ぐいぐい成長してゆきます。

株主として、利害関係者として企業価値向上に向けて積極的に関与してくるところがコンサルとの違いです。

それは良いとして,改めて感じ入るところがありまして、それは,こういう金融機能の役割ということですね。カーライルの資金によってできなかったことが可能になる、生かしきれなかった企業の潜在力が顕在化すると言ってもかまいません、未稼働の能力が稼動するといいますか、難しくいう必要はありませんね、新しい価値を生み出す助けになるという機能です。

カーライルのことを読みながらグラミン銀のことを考えてしまいました。これはまた別の機会に。

以下オマケです。

オマケ1

Pearlstine Leaves Private Equity for Bloomberg LP

After less than two years in the buyout business, Norman Pearlstine, the former editor in chief of Time Inc., is moving on.

Timeを辞めて、まだカーライルに入ったばかりなんですが、Norman Pearlstine氏が辞めるそうですな。政治家を幹部に招くのをやめて、事業家を入れているわけで、

When he announced his move to Carlyle in the summer of 2006, Mr. Pearlstine was expected to help the firm find media deals.

メディア企業の買収を助けるはずが、

But in the summer of 2007, the boom in leveraged buyouts collapsed, in large part because the easy credit that fueled these deals all but disappeared.

ディールそのものが・・・。うーんいろいろありまんな。動き早いです。


オマケ2

Carlyle Co-Founder Defends Private Equity

David Rubenstein氏はカーライルの創業者の一人で、本書によれば元カーター政権の次席補佐官だったんだそうで、政界の大物を引っ張ってきたのはこの人の人脈なんですな。カーターは民主党ですけどね。

In terms of tactics that private-equity firms might want to employ now, he said buying back loans made by banks at the top of the boom times, when lending standards were much looser, might be a good idea.

プライベイトエクイティとしての戦術について。

Because the terms of legacy loans were often so inferior to those made currently, banks needed to mark them down substantially, thus weakening their own balance sheets. Thus, there is often a desire to get the original borrower to pay back the loan immediately, even if it means taking a substantial loss.

銀行ローンが安くなったところを買い叩のが良いかも。多分証券化されたヤツのことなんでしょうが。さっすが、言うことが違います。

"In five years, the 10 largest private-equity firms will all be public," he said -- but he was careful to add that he wasn't committing Carlyle to any such action.

いずれ大手プライベートエクイティは上場するだろう。そうですか。

遠い将来ですが、カーライルがもっともっとメジャーになって、カーライルの創業者のインタビュー記事をリアルタイムで読んだんだぞ、と昔話をしたりして。