浅田次郎/講談社
「蒼穹の昴」1〜4巻、「珍妃の井戸」「中元の虹(1)」を通じて、大きな存在感を放っていた偉大なる西太后が本巻でついに没する。映画ラストエンペラーの最初の場面を思い出しながらも、巨星の最後をじっと見守っている気分で読んだ。
著者は西太后を、中国三大悪女などとは思っていない。もし彼女の存在がなかったら、清はもっと早くに滅びてしまっていたであろう。それを頑張ってながらえさせたのだ・・という立場を取る。
また悲劇の皇帝として知られる光緒帝については、そもそもその改革が性急すぎたことが失敗だったとしている。
だから光緒帝=善:西太后=悪の図式で考えてしまうと、この小説を理解できないことになる。
では西太后の死に際し、幽閉されていた光緒帝は解放されることなく、彼が西太后の死の直前に死んでしまったのはなぜか。
こちらも西太后による毒殺説ではなく、自死説をとる。(実際、ヒ素で亡くなったことは証明されているが、犯人はわかっていない。)
秦建国時の話と、滅亡に瀕する時の話、はたまた張作霖の野望と子に託す夢を被らせながら描いており、袁世凱がとってもちっぽけに見える。