さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

【読書録】沈まぬ太陽(二)アフリカ篇・下

2021-01-25 23:37:38 | 読書録

山崎豊子/新潮文庫

2年までという内規に違反する事実上の懲罰人事で、カラチ→テヘラン→ナイロビと、ハードな海外を盥回しにされる主人公。苦しみ、家族崩壊の危機にさらされながら、組合活動と縁を切れば日本へ帰してやるとの甘い言葉には乗らず、10年近くハードシップ地域で奮闘した。

苦しむ主人公の周りに、気骨ある人物はわずかに存在し、そういう人物の人生も同時並行で語られる。カラチもテヘランもナイロビも、現在はこの本に書かれていることと同じではないとは思うが、独特な商慣習や社会の様子など、大変勉強になる。

さて主人公たちが属する敵対的な組合から人を引き抜き、会社側が御用組合として第二組合を作り、第二組合に移った人を昇進させ、移らない人間を差別するやりかたは実に狡猾かつ露骨であり、山崎氏の筆力が光る。

しかし、そのようなやり方は、同社が連続事故を起こし、多数の人命が犠牲になったことで、表沙汰になる。企業内差別や劣悪なる労働環境が整備不良を引き起こし、大事故を生んだが、トップが責任を取らない企業体質に世間の批判が集まり、主人公の恩地はようやく帰国できる運びとなる。

ということで、二巻読み終わったところで、つかの間のほっとした気分を味わえるのであるが、本作はあと3冊もあるのであり、主人公の幸せな日々はまだ当分来なさそうであるなぁ。


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