さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

金曜ロードSHOW!『パラサイト 半地下の家族』を見て

2021-01-11 10:49:34 | 映画・番組等、各種鑑賞録

見終わったのは昨日の午前中なのに、感想をどう書くかで逡巡している間に昨日一日が終わってしまった。それぐらい奥深い。

韓国の階級社会の闇を見た思い・・と言えば軽すぎる。あまり映画を観ない、世間知らずの私でも、この歳まで積み上げてきたものがある。それを総動員していろんなことを考える。考えるたびにいろんなことに気づく・・・そういう映画だと思うのだ。

まずは、金曜ロードSHOW!さん、ありがとう、だ。沢山ある情報の中から、自分でピックアップして観る方法だと、人間は好きなモノ、自分の見たい情報しか見ないんだなということをあらためて感じた。この歳にして世間知らずの私が、昨年5月ごろから金曜ロードSHOW!を毎週見ようと決めて、勉強になった。もし自分で映画館に行ったり、DVDを借りたりするのであれば、私はたぶん綺麗なモノや冒険ものや時代劇しか見ないだろうから。

韓国語でのタイトルは기생충。ハングルが読める人であれば、これを キセンチュンと読めるだろう。つまり寄生虫だ。さすがに寄生虫というタイトルでは日本では直接的過ぎてやわらげたんだろうが、まるで貧しい人間が虫けらのように見えてくる映画である。

この映画に出て来るお金持ち、お父さん、お母さん、子供達は純粋無垢でいい人達である。そこに家庭教師役や家政婦、運転手として潜入した家族は彼らのことを「金持ちなのにイイ人達ねぇ」「いや、金持ちだからイイ人達なのよ」という会話を交わす。ここに本質があるような気がしてならない。だれも好き好んで詐欺師にはならない。衣食足りてこそ礼節を知る・・ということなのだ。

だが彼らは最初から貧しかったわけではないと思う。上流家庭に忍び込んで、家庭教師が出来てしまうほどの賢さ。多分、どこかでつまずいたのだ。韓国社会は日本以上に敗者復活が難しい社会だと聞く。父親が台湾カステラの店で失敗・・というくだりがある。多分、以前、起死回生をかけて台湾カステラの店を出したんだと思う。台湾カステラは日本ではあまり話題になってないと思うが、2016年ごろから韓国で大流行し、各地に店舗が次々とオープンしたが、一気にブームは去り、台湾カステラ店は相次いで廃業に追い込まれたんだそうだ。本作には台湾カステラで失敗したキーパーソンがもう一人出て来る。

で、問題の家族は「半地下」に住んでいる。「半地下」とは窓の高さが地面とほぼ同等であり、たとえば家の近くで立ちしょんをする人の様子などがよく観察できる位置にある。韓国ドラマではこれとは別に、建物の屋上に位置する「屋根部屋」というのが出て来るが、屋根部屋も貧しい人が住む部屋である。だが半地下は屋根部屋よりもグレードが下がる。じめじめと湿気ていて、水圧の関係でトイレが一番上にある。大雨が降ると真っ先に浸水し、トイレからは汚物が噴き出して流れ出すようなところである。

私は実は、アメリカにホームステイしていた時、半地下で寝泊まりしていたことがある。アメリカでは半地下に韓国のような意味を込めないが、確かに一度だけ困ったことがある。近くの川が氾濫し、まず私の隣の部屋の一家の長女の部屋が浸水し、次に私の部屋に水が侵入してきた。家族の居間も水浸し。二階に近所の人が集まり、みんなが助けてくれた思い出がある。また水害を受けるとトイレはどうなってしまうのか・・というのも、あそこまでではないが若干経験がある。一昨年の千葉を直撃した台風の翌日に本番があり、小学校の体育館でオペラ勉強会の講師をやったが、本番前にトイレに行ったらトイレが流れないどころかあふれ出して来てしまって真っ青になった思い出がある。その時、付近からまだ水が完全に引いていないからだ・・というような話を聞かされた。水洗トイレは水圧が大事なのだな。だから半地下ではトイレが一番上にあり、水害で浸水すれば逆流してしまうのだ。

金持ちのパク社長や、息子は、運転士や家庭教師、家政婦に共通する匂いに気が付いている。でもそれが何だか正確には分からない。「なんだか地下鉄に乗る人に特有の匂いのような・・」とぼやくパク社長。はいはいごめんなさい。ワタシも地下鉄に乗ってますが・・・・。だが貧しい父は知っていた。「それは半地下の匂いだ」と。よくわからないが、湿気を含んだ生乾きの匂いであろうか。韓国では暮らしぶりが匂いでわかってしまうのか・・・ちょっと絶望的な気分になった。

さてさて、寄生虫家族たち。金持ち家族が外出している間に、我が世の春よと酒盛りをはじめ・・ああやばいぞ・・と思いながら見ていたら、予想もしない形でそのやばさがやって来た。彼らよりさらに上というか、下がいたのだ。北朝鮮が攻めてきた時のシェルターが金持ちの家の地下にあり、建築家から譲り受けた金持ち家族はその存在を知らなかったのだが、実はそこで生きてる人がいたんだね・・・。ま、ネタばれはここまでぐらいにしておこうか。

思えば貧しい父親を演じたソン・ガンポさんを観るのは久しぶりだ。シュリ、JSAの頃は若かったのに、ずいぶんおじさんになったな・・と思ったが、私より若いんだね。しくしく。

 


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