ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「秋のソナタ」

2013-12-02 16:45:32 | 芝居
10月28日東京芸術劇場シアターイーストで、「秋のソナタ」をみた(原作:イングマール・ベルイマン、翻訳・台本:木内宏昌、
演出:熊林弘高)。

国際的ピアニストのシャルロッテ(佐藤オリエ)は長年付き合っていた愛人と死別。その知らせを聞いた娘のエヴァ(満島ひかり)
は自分の家でひとときを過ごさないかと母を誘う。シャルロッテはこの申し出を受け入れ、7年ぶりにエヴァの住む家を訪ねる。
そこには脳性マヒのもう1人の娘ヘレナがいた。エヴァが妹を施設から引き取ったのだ。母シャルロッテと次女ヘレナも久々の再会
だが、母親は正直、再会を喜んではいない。不快な気持ちを押し殺して明るく振舞おうとする母。母親の持つそんな二面性に長女
エヴァは長い間苦しめられてきた。母を告発するエヴァの容赦ない言葉のつぶて。長い長い地獄のようないさかいの幕が、ついに
切って落とされた…。

母国スウェーデンのみならず国際的な名声を確立している映画監督・舞台演出家の巨匠イングマール・ベルイマン。彼が手がけた
1978年の同名映画を、二人芝居のスタイルで日本初演(チラシより)。

ベルイマンの映画を以前テレビで見たことがあるので、筋は知っていた。だがこれは元の映画とはだいぶ印象が違う。

映画にはエヴァの夫も妹ヘレナも登場するが、ここでは(何せ二人芝居なので)役者たちは他の人々が目の前にいるかのように演じる。
中央のテーブルが、時にはピアノになりベッドにもなる。
娘がショパンのプレリュードを弾き、母が模範演奏をしてみせるのもこのテーブルで、音は無い。映画ではちゃんと二人のそれぞれ
の演奏(下手なのと上手なの)が流されたのに、ここでなぜ音楽を流さないのか不思議。

夜中に悪い夢を見てうなされた母の部屋に娘がロウソクを持って入ってきて、長い話になる。子供の頃からの恨みつらみをようやく
吐き出す娘。しまいに激しい言葉を投げつけ、睨みつけ…二人共床に這いつくばり…映画よりずっと生々しくて見ていて辛い。
娘は今の夫との間にできた息子エリックを4歳で亡くした。溺死だった。現在彼女は夫と共に教会の仕事をしてはいるが、可愛い
盛りの息子を失った打撃から立ち直れないでいる。だがもっと若い頃、彼女には別の恋人がいて、妊娠してしまい、二人の結婚に反対
する母に中絶させられ、それを知った恋人はいろいろあった挙句、去っていったのだった(このエピソードは映画にあったのかも
知れないが全く覚えていなかったので驚いた)。とにかく一事が万事、母は彼女を支配していたのだった。「…私のせいだって言う
の?」「ママのせいよ!」
母は自分の両親のことを話し始める。二人共自分をかまってくれなかった、私は人を愛することを知らない、と。どうもそうらしい。
子供たちに対しても、放任するか過度に干渉するかで、適切な関わり方ができない。だがこれはまあ、わりと普遍的な問題だろう。
子供と適切な関係を築ける親なんて、それほどどこにでもいるわけじゃない。

ただ、この母は結局夫と娘たちを捨てて愛人の元に出て行った。そんな、家庭的とは言えない彼女にとって、まして孫など欲しくも
なかっただろう。長女の第一子は中絶させた。次女のたった一度の恋のさなか、その相手を横から奪った…。
こういう女性はかなり特異なので、理解したり感情移入したりするのは難しい。
一方的に責められ続け、尻尾を巻いて逃げ出す母。

ラストは映画と同じく、娘がお詫びの手紙を書いて読み上げ、これを送ると言うが、あそこまで言われたらもう二度と来ないだろう。

途中、娘は客席に向かって「どうです、皆さん?…」と話しかける。

女優二人の力量は素晴らしいが、何しろ重たい芝居だ。
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