ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「アラベッラ」

2010-10-24 18:10:57 | オペラ
10月5日新国立劇場オペラパレスで、リヒャルト・シュトラウス作曲のオペラ「アラベッラ」を観た(指揮:ウルフ・シルマー、演出・美術・照明:フィリップ・アルロー)。

鮮やかな青を基調とする思い切ったデザインの舞台が面白い。壁にはクリムトの絵が何枚か掛かっている。そう、ここはウィーン。窓の外は粉雪が舞っている。

男として育てられている次女ズデンカは、姉アラベッラの求婚者の一人マッテオを密かに慕っている。彼を喜ばせるために、姉からの手紙と偽って自分で手紙を書いて彼に渡しているらしい。それをちょっとした短いシーンで観客に分からせる演出が巧み。ちょうど「十二夜」のヴァイオラ(セザーリオ)のように、心ならずも恋の取り持ち役をやっているわけだ。
アラベッラには何人もの求婚者がいるが、彼女はそのうちの誰にもピンと来ないでいる。

第2幕、幕が開くと舞台の美しさに息を呑んだ。正面にゆるやかな大階段、左右奥に丸テーブルと椅子、背景上方には夜空にきらめく星々。実に美しい。このまま絵本にしたい位。写真を撮りたかった。

舞踏会で、アラベッラと彼女の肖像画に惹かれてはるばる旅してきたマンドリカとが初めて言葉を交わす時、紗幕がそのすべてを覆う。そうこなくちゃ。ここで二人は恋に落ちるのだから。
男は言う、「うちのそばを流れるドナウ川が貴女に出会わせてくれた」。彼はクロアチアからここウィーンにやって来たのだった。
アラベッラに相手にされず絶望したマッテオは自殺すると口走る。ズデンカは姉から渡すよう頼まれた姉の部屋の鍵だと言って、驚くマッテオに(自分の部屋の)鍵を渡す。彼は言う、「女心は分からない」。これには笑ってしまった。そりゃそうだ。今までずっとつれなくされてきたのだから。
しかしそこをマンドリカに見られていた。言葉通りに取って怒り狂うマンドリカ・・・。

第3幕、同じ青が基調のホテルのフロントとゆるやかな階段。しかしモダン過ぎて今度はいささか食傷気味。それに3幕共ブルーではやはり飽きてしまう。
空は少し明るくなっていて、雪がしきりに降り続いている。

ところでアラベッラは一晩中どこにいたのだろう?みんな探していたのに。

「尺には尺を」を思い出す筋書き。(闇に紛れて男は愛する人を抱いていると思い込んでいるが・・・)
オペラにしてはドラマがしっかりできている。
歌う必然性のないところでは節がない!!これは R.シュトラウスでは実に珍しいことだが、我々現代人にはありがたい。歌ってなんかいられない気分だってあるのだ。例えば、婚約したばかりのアラベッラに裏切られたと思い込んだマンドリカが苦々しげに吐くセリフなど。それだけ胸に迫ってくる。

アラベッラは身に覚えのないことで婚約者に疑われ、暴言を吐かれて答える、「許していただく必要のあることなどしていません。むしろ私の方こそ貴方の言葉、貴方のその言い方を許す側です、それができればの話ですけど」。この毅然としたセリフに拍手。何というかっこよさ。

ホテルに一家で住むとは奇妙だと思ったが、鍵の一件でやっと訳が分かった。ホテルの部屋の鍵なら部屋の番号が書いてあるから、簡単にどの部屋か分かるわけだ。普通のお屋敷だとそうはいかないし、第一勝手に泊めてもらうわけにはいくまい。

そもそもの設定が不自然ではあるが、音楽がとにかく素晴らしい。私にとっては初めてのアラベッラ体験だった。

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