ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「こんにちは、母さん」

2023-08-04 11:03:29 | 芝居
7月27日くすのきホールで、永井愛作「こんにちは、母さん」を見た(演出:磯村純)。



家業の足袋職人を継がず会社人間として生きてきた神崎昭夫(加藤義宗)は、人事総務部のリストラ対策部長になっていた。
人生に迷っていた昭夫がたどり着いたのは、母の福江(一柳みる)が一人で住む東京・下町の実家。
しかし、家の中はすっかり変わっていた。
見知らぬ中国人の女の子(張平)が家の中を駆け回り、福江はボランティアに精を出しとても楽しそうだ。
しかも福江には恋人らしき荻生直文(山崎清介)の存在が。
「今」を精一杯に生きようとする母とその恋人、二人の生き方に戸惑いと発見を繰り返しながら、自分自身を見つめ直す息子。
そして、この三人の奇妙な共同生活が始まる。
福江、直文、昭夫と彼らを取り巻く下町の元気な人々の生活を通し、「人生を正直に生き直そう」とする人々の姿が、
生と死を深く交錯させた笑いと涙の中に描かれていきます(チラシより)。

劇中、息子の声が父親の声と似てきた、というセリフがあったが、まさにこの日、初めて気がついたことがあった。
加藤義宗は、父・加藤健一に声がそっくり!特に、張りのある大声を出した時など。

福江によると、夫は5年間病気で寝込んでいて彼女が看病した。
そして、嫁のともみさんが4年前突然家に来た。
「その時お父さんはいなかった」
これって、どう考えても矛盾してますよね!?
寝込んでいる病人が、一人でどこかへ行くわけがないでしょう。

昭夫の同僚・木部(伊原農)がリストラされ失意の内に昭夫の実家を訪問し、福江に近づき、膝枕して頭を撫でてくれ、と言って甘えるシーンが、とにかくキモい。

福江は直文に連れられて、直文が長男一家と住む家を訪問する。
そこで彼女は、長男夫婦もその息子も大学卒なのに自分は小学校しか出ていないということに気がつく。
テーブルマナーで失敗し、他にもいろいろ恥をかき、この人たちと自分とは世界が違うと感じる。
しかも彼女は、直文が、そんな自分のことを恥ずかしいと感じている、と気がつく・・。
このように、知的格差を描くというのは昔の少女漫画に時々あったような気がする。
だが今では時代錯誤だし、第一、見ていて不愉快。しかも全然面白くない。

家出して福江の家に(言わば)押しかけて来た荻生直文が持参した荷物の中にメンコがあり、それを見た昭夫は俄然興味を示し、懐かしがる。
彼はその場でメンコをやり出し、直文の長男の妻(宇田川さや香)も誘い、二人で遊んで打ち解けていく。
そのシーンがほほえましく明るくて、唯一の救いだ。

作者は中国人留学生を登場させて、戦時中の日本の加害の歴史を入れたかったのだろう。
だが「夫は大陸で人を殺した、それも子供を殺したに違いない、だから引き揚げて来た後も、自分の息子を抱いてやることも
一緒に遊ぶこともできなかったんじゃないか・・」という福江の想像と展開には少々無理がある。

留学生が日本語検定試験のために勉強しているので、井上ひさし張りに日本語談義が続く場面もあるが、残念ながら、あまり面白くない。

今回は、残念ながら期待はずれだった。
永井愛の作品にも出来不出来があるということか。
ただ、一柳みるの変わらぬ美貌と演技は見応えがあった。
加藤義宗もセリフ回しが明瞭で、好演。

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