6月23日吉祥寺シアターで、ジョン・ホッジ作「コラボレーターズ」を見た(演出:伊藤大、劇団青年座公演)。

「白衛軍」の作者ミハイル・ブルガーコフが、死の前年(1939年)、ソビエト連邦最高指導者ヨシフ・スターリンの評伝劇を
書いていたという史実を基に、創作された作品の由。
クレムリンの地下にある密室でコラボレーター(協力者)としてブルガーコフとスターリンそれぞれの役割が入れ替わるという
奇想天外なブラックコメディ。
1930年代後半のソ連。スターリンによる大粛清は、政治家や党員に限らず、学者、芸術家にまで及び、
市民は相互監視と密告に支配されていた。こうして自身だけでなく家族や周りの者たちも危険にさらされる中、
ブルガーコフは反体制的な芸術活動を続けることができるのか、それともスターリンの協力者となってしまうのか・・(チラシより)。
舞台上手中央に簡易な、しかし大きなベッド。その手前に大きなラッパのついた蓄音機。椅子1脚。
赤い枠が奇妙な窓。奥の一段高くなったところに机。コート掛け。
中央に納戸?下手に長いテーブル。椅子4脚。手前に電話。椅子1脚。やはり赤い窓枠(美術:長田佳代子)。
ベッドに誰か寝ている。
ノックの音がしきりにする。ブルガーコフ(久留飛雄己)がベッドから起きると正面の納戸みたいなところ(後で「キッチンのクローゼット」と
説明される)が開き、煙と共にスターリン(横堀悦夫)登場!
驚くブルガーコフ。と、軽快な音楽が流れ出し、二人はいきなり踊り出す。
ベッドに妻エレーナ(松平春香)がいるが、寝ている。
観客の度肝を抜く、冒頭のこのシーンの後、音楽が止み、スターリンは消える。
これはブルガーコフの見た夢だったらしい。
妻が、夢の中でスターリンてどんな人だった?と聞くので答える。
仲間たちが来る。元貴族の老人ワシリーと教師の女性、若い男性作家と女優。
そこにセルゲイという青年が来て、例の「クローゼット」に住まわせることになる。
当時はそうやって、家が狭くても、他人を受け入れて同居しなければならなかったようだ。
ブルガーコフは体調が悪く、医者に診てもらいに行く。
医者はいい加減な奴で、ブルガーコフの診断結果のことよりも、彼が書いた芝居に出ていた女優を紹介してほしい、と
しきりに言う。
ブルガーコフの家に秘密警察のウラジーミル(小豆畑雅一)と部下のステパン(鹿野宗健)が来て、4週間後のスターリンの誕生日に
サプライズで芝居を上演したい、ついてはスターリンの生涯を描いた戯曲を書け、と言う。
ブルガーコフは反体制派だが、意外なことにスターリンは彼の芝居が大好きなのだそうだ。
ブルガーコフが断ると、ウラジーミルは彼の妻を殺すと脅す。
ウラジーミルたちが帰った後、彼が仲間に話すと、みな、その話は断るべきだと言う。
友人の叔母がレニングラードにいて、そこから何とかしてフィンランドに行けば、あとは自由にどの国にも旅行できる、
という話が出て、友人たちはブルガーコフに勧めるが、彼は祖国を離れる気にはなれない。
ウラジーミルは、戯曲を書けば、彼の書いた芝居「モリエール」の上演を許可すると言う。
「モリエール」は公演初日に上演中止になったのだった。
ブルガーコフは悩んだ末に、この仕事を引き受けることにし、ウラジーミルが用意した部屋でタイプの前に座る。
スターリンの一代記なので、彼についての資料をいろいろ読んだが、なかなか筆が進まない。
するとある夜、家にいると知らない男から電話があり、「地下鉄の○○○○から横道に入り、・・・そこで待て」と言う。
彼は妻には言わず、そっと家を出て、言われた通りの部屋に行くと、扉が開いてスターリン登場。
「実はここは私が作らせた秘密の部屋なんだ。ここで二人きりだ」(その部屋はクレムリンの地下にあった)
「私はサプライズが大嫌いだ。私に秘密にするなんてけしからん」
「筆が進まないんだろう?私が協力しようじゃないか。教えるから書いてくれ」
だが始めてしばらくすると、「私がその奴隷のような仕事をしよう」とスターリン自らタイプの前へ。
そしてブルガーコフには代わりに自分の仕事(書類に目を通してサインする)をさせる。
ブルガーコフは始め、それは法律違反だと言って断るが、押し切られて仕方なくスターリンの代わりにサインする。
その後、彼のアパートではお湯が出るようになり、運転手付きの自家用車まであてがわれるようになる。
だがスターリンの代わりに書類に目を通していたブルガーコフは、困難に直面する。
今年は不作だが、農民たちは自分たちの食べる分と来年の作付けの分を取っておかないといけない。
しかし、都市の労働者たちにも食べさせないといけない。
一体どうすればいいのか・・・
「軍を送って例年通りの食料を出させるしかない。国を治めるとはそういうことだ」とスターリンに説得され、彼は迷いつつもサインする。
彼はエリート向けの病院で診てもらえることになる。
なぜかいつもと同じ医者だが、今回は非常に愛想がよく、元女優の看護婦がそばにいる。
カルテを見て「どこも悪くない。奇跡です」
ブルガーコフはかつて医者だったので、「そんなはずはない」と言うと、
「だから奇跡なんです」「以前の診断が誤診だったのかも」
妻エレーナは大喜びし、友人たちを呼んで夫の病気回復を祝う会を開く。
なぜかウラジーミル夫妻も招かれる。
ワインや肉の食事が始まると、ワシリーが口を開く。
元貴族の彼は領地を持っており、「領民たちの元に軍がやって来て(今年は不作なのに)食料をよこせというので
抵抗したら軍隊が発砲し、何人も死んだ。そして奴らは食料を全部持って行った。
今、そこでは男も女も子供も、人間を食っているそうだ」
ブルガーコフは後ろめたさを感じるが、「それは仕方ないんじゃないか」みたいなことを言い出す。
「国を治めるのは大変な仕事なんだ」
彼の意外な発言に、みな驚く。
ワシリー「・・私が間違っていたようだ」
妙な雰囲気になったので、エレーナが蓄音機を回し、「踊りません?」と言って夫と踊り出す。
みんなも踊り出すが、しまいにウラジーミルの部下ステパンが、ウラジーミルの妻エヴァと無理やり踊り出し、
ウラジーミルがやめさせようとすると、ステパンはウラジーミルを殴り倒す。
驚きの展開だが、次の場面では、二人が今まで通り上司と部下として接しているのが変だ。
ブルガーコフは書類の中に、スターリンの親友3名がスターリン暗殺を計画したと告白する文書を見て驚き、
スターリンに報告すると、彼は逆上。
ブルガーコフは激する彼をなだめ、「さらに精査せよ」とか書いてサインする。
つまり、すぐに処刑するのではなく、もっとよく調べてみよ、というつもりだった。
ところが彼の意図とは裏腹に、この時から、周囲の人々が次々と逮捕され、連行され、あるいは行方不明になったりする。
スターリンがブルガーコフの代わりに書いていた芝居は出来上がり、ブルガーコフは、もう彼の代わりの仕事はしたくない、と言う。
スターリンは承知するが、ウラジーミルは、なぜか、あと一回分必要だと言う。
処刑の真似事をして見せるので、ブルガーコフは仕方なく、最後の一回分を書く。
だがエヴァがいなくなり、ウラジーミルもいない。
ステパンが来て、「ウラジーミルは死んだ」「私が彼の代わりになって、最初の仕事がウラジーミルの処刑だった」
「彼の車も妻ももらった」と言う。
最後の原稿を渡すと、彼は読んで「素晴らしい」と言うが、ライターで火をつけて燃やし、靴で踏みつぶす。
この展開は、もはや悪夢と言うしかない。
スターリンがブルガーコフに言う。
「君を転向させるのが目的だったんだよ・・・」(!!)
ブルガーコフは、(たぶん病気が進行して)ベッドに倒れる。
エヴァが来て、彼が死んでいるのに気がつき、愕然となる。
電話が鳴る。
受話器を取ると、「ミハイルが死んだというのは本当かね?」という張りのあるスターリンの声。
エヴァはその声にハッとなって受話器を置く。終。
~~~~~~ ~~~~~~
スターリンがすらすら戯曲を書くが、手記ならともかく戯曲というのは特殊なので、そんなに簡単に書けるわけはない。
などなどツッコミどころはあるが(ブラックコメディだから目くじら立てることはないか)、非常に面白かった。
役者陣が皆さん、うまいっ!
特にスターリン役の横堀悦夫が素晴らしい。
ブルガーコフ役の久留飛雄己も熱演。
エレーナ役の松平春香、ウラジーミル役の小豆畑雅一も印象に残った。
ダンスも面白くて見応えがあった(振付:中村蓉)。

「白衛軍」の作者ミハイル・ブルガーコフが、死の前年(1939年)、ソビエト連邦最高指導者ヨシフ・スターリンの評伝劇を
書いていたという史実を基に、創作された作品の由。
クレムリンの地下にある密室でコラボレーター(協力者)としてブルガーコフとスターリンそれぞれの役割が入れ替わるという
奇想天外なブラックコメディ。
1930年代後半のソ連。スターリンによる大粛清は、政治家や党員に限らず、学者、芸術家にまで及び、
市民は相互監視と密告に支配されていた。こうして自身だけでなく家族や周りの者たちも危険にさらされる中、
ブルガーコフは反体制的な芸術活動を続けることができるのか、それともスターリンの協力者となってしまうのか・・(チラシより)。
舞台上手中央に簡易な、しかし大きなベッド。その手前に大きなラッパのついた蓄音機。椅子1脚。
赤い枠が奇妙な窓。奥の一段高くなったところに机。コート掛け。
中央に納戸?下手に長いテーブル。椅子4脚。手前に電話。椅子1脚。やはり赤い窓枠(美術:長田佳代子)。
ベッドに誰か寝ている。
ノックの音がしきりにする。ブルガーコフ(久留飛雄己)がベッドから起きると正面の納戸みたいなところ(後で「キッチンのクローゼット」と
説明される)が開き、煙と共にスターリン(横堀悦夫)登場!
驚くブルガーコフ。と、軽快な音楽が流れ出し、二人はいきなり踊り出す。
ベッドに妻エレーナ(松平春香)がいるが、寝ている。
観客の度肝を抜く、冒頭のこのシーンの後、音楽が止み、スターリンは消える。
これはブルガーコフの見た夢だったらしい。
妻が、夢の中でスターリンてどんな人だった?と聞くので答える。
仲間たちが来る。元貴族の老人ワシリーと教師の女性、若い男性作家と女優。
そこにセルゲイという青年が来て、例の「クローゼット」に住まわせることになる。
当時はそうやって、家が狭くても、他人を受け入れて同居しなければならなかったようだ。
ブルガーコフは体調が悪く、医者に診てもらいに行く。
医者はいい加減な奴で、ブルガーコフの診断結果のことよりも、彼が書いた芝居に出ていた女優を紹介してほしい、と
しきりに言う。
ブルガーコフの家に秘密警察のウラジーミル(小豆畑雅一)と部下のステパン(鹿野宗健)が来て、4週間後のスターリンの誕生日に
サプライズで芝居を上演したい、ついてはスターリンの生涯を描いた戯曲を書け、と言う。
ブルガーコフは反体制派だが、意外なことにスターリンは彼の芝居が大好きなのだそうだ。
ブルガーコフが断ると、ウラジーミルは彼の妻を殺すと脅す。
ウラジーミルたちが帰った後、彼が仲間に話すと、みな、その話は断るべきだと言う。
友人の叔母がレニングラードにいて、そこから何とかしてフィンランドに行けば、あとは自由にどの国にも旅行できる、
という話が出て、友人たちはブルガーコフに勧めるが、彼は祖国を離れる気にはなれない。
ウラジーミルは、戯曲を書けば、彼の書いた芝居「モリエール」の上演を許可すると言う。
「モリエール」は公演初日に上演中止になったのだった。
ブルガーコフは悩んだ末に、この仕事を引き受けることにし、ウラジーミルが用意した部屋でタイプの前に座る。
スターリンの一代記なので、彼についての資料をいろいろ読んだが、なかなか筆が進まない。
するとある夜、家にいると知らない男から電話があり、「地下鉄の○○○○から横道に入り、・・・そこで待て」と言う。
彼は妻には言わず、そっと家を出て、言われた通りの部屋に行くと、扉が開いてスターリン登場。
「実はここは私が作らせた秘密の部屋なんだ。ここで二人きりだ」(その部屋はクレムリンの地下にあった)
「私はサプライズが大嫌いだ。私に秘密にするなんてけしからん」
「筆が進まないんだろう?私が協力しようじゃないか。教えるから書いてくれ」
だが始めてしばらくすると、「私がその奴隷のような仕事をしよう」とスターリン自らタイプの前へ。
そしてブルガーコフには代わりに自分の仕事(書類に目を通してサインする)をさせる。
ブルガーコフは始め、それは法律違反だと言って断るが、押し切られて仕方なくスターリンの代わりにサインする。
その後、彼のアパートではお湯が出るようになり、運転手付きの自家用車まであてがわれるようになる。
だがスターリンの代わりに書類に目を通していたブルガーコフは、困難に直面する。
今年は不作だが、農民たちは自分たちの食べる分と来年の作付けの分を取っておかないといけない。
しかし、都市の労働者たちにも食べさせないといけない。
一体どうすればいいのか・・・
「軍を送って例年通りの食料を出させるしかない。国を治めるとはそういうことだ」とスターリンに説得され、彼は迷いつつもサインする。
彼はエリート向けの病院で診てもらえることになる。
なぜかいつもと同じ医者だが、今回は非常に愛想がよく、元女優の看護婦がそばにいる。
カルテを見て「どこも悪くない。奇跡です」
ブルガーコフはかつて医者だったので、「そんなはずはない」と言うと、
「だから奇跡なんです」「以前の診断が誤診だったのかも」
妻エレーナは大喜びし、友人たちを呼んで夫の病気回復を祝う会を開く。
なぜかウラジーミル夫妻も招かれる。
ワインや肉の食事が始まると、ワシリーが口を開く。
元貴族の彼は領地を持っており、「領民たちの元に軍がやって来て(今年は不作なのに)食料をよこせというので
抵抗したら軍隊が発砲し、何人も死んだ。そして奴らは食料を全部持って行った。
今、そこでは男も女も子供も、人間を食っているそうだ」
ブルガーコフは後ろめたさを感じるが、「それは仕方ないんじゃないか」みたいなことを言い出す。
「国を治めるのは大変な仕事なんだ」
彼の意外な発言に、みな驚く。
ワシリー「・・私が間違っていたようだ」
妙な雰囲気になったので、エレーナが蓄音機を回し、「踊りません?」と言って夫と踊り出す。
みんなも踊り出すが、しまいにウラジーミルの部下ステパンが、ウラジーミルの妻エヴァと無理やり踊り出し、
ウラジーミルがやめさせようとすると、ステパンはウラジーミルを殴り倒す。
驚きの展開だが、次の場面では、二人が今まで通り上司と部下として接しているのが変だ。
ブルガーコフは書類の中に、スターリンの親友3名がスターリン暗殺を計画したと告白する文書を見て驚き、
スターリンに報告すると、彼は逆上。
ブルガーコフは激する彼をなだめ、「さらに精査せよ」とか書いてサインする。
つまり、すぐに処刑するのではなく、もっとよく調べてみよ、というつもりだった。
ところが彼の意図とは裏腹に、この時から、周囲の人々が次々と逮捕され、連行され、あるいは行方不明になったりする。
スターリンがブルガーコフの代わりに書いていた芝居は出来上がり、ブルガーコフは、もう彼の代わりの仕事はしたくない、と言う。
スターリンは承知するが、ウラジーミルは、なぜか、あと一回分必要だと言う。
処刑の真似事をして見せるので、ブルガーコフは仕方なく、最後の一回分を書く。
だがエヴァがいなくなり、ウラジーミルもいない。
ステパンが来て、「ウラジーミルは死んだ」「私が彼の代わりになって、最初の仕事がウラジーミルの処刑だった」
「彼の車も妻ももらった」と言う。
最後の原稿を渡すと、彼は読んで「素晴らしい」と言うが、ライターで火をつけて燃やし、靴で踏みつぶす。
この展開は、もはや悪夢と言うしかない。
スターリンがブルガーコフに言う。
「君を転向させるのが目的だったんだよ・・・」(!!)
ブルガーコフは、(たぶん病気が進行して)ベッドに倒れる。
エヴァが来て、彼が死んでいるのに気がつき、愕然となる。
電話が鳴る。
受話器を取ると、「ミハイルが死んだというのは本当かね?」という張りのあるスターリンの声。
エヴァはその声にハッとなって受話器を置く。終。
~~~~~~ ~~~~~~
スターリンがすらすら戯曲を書くが、手記ならともかく戯曲というのは特殊なので、そんなに簡単に書けるわけはない。
などなどツッコミどころはあるが(ブラックコメディだから目くじら立てることはないか)、非常に面白かった。
役者陣が皆さん、うまいっ!
特にスターリン役の横堀悦夫が素晴らしい。
ブルガーコフ役の久留飛雄己も熱演。
エレーナ役の松平春香、ウラジーミル役の小豆畑雅一も印象に残った。
ダンスも面白くて見応えがあった(振付:中村蓉)。
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