ふくろたか

札幌と福岡に思いを馳せるジム一家の東京暮らし

映画【機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島】(ネタバレあり)

2022年06月15日 | 漫画・アニメ・特撮
キリン杯:日本0対3チュニジア
ミラーゲームでCB2人がお見合いしていたら負けるわ(呆)
これではスペイン・ドイツはおろかコスタリカに勝つのも難しい
<コスタリカは大陸間POでNZをウノゼロで下してW杯出場決定

さて本題。ルヴァン杯敗退の気晴らしに、12日に見てきた映画を語る。



ファースト・ガンダムのテレビ版第15話に、
安彦良和氏のガンダム・コミック「ORIGIN」の要素を加味して、
安彦氏自身が監督した劇場版アニメである。

アニメのテレビシリーズを劇場版にリメイクする際には、
メーンストーリーと無関係のエピソードが省かれることがままある。
マニアは得てして、そんな「愛されなかった回」にこそ愛着を抱きがちだ。
かく言うワタシも、例えば「ヤマト」第16話のビーメラ星の回が好きだ
<ヤマトよりも999寄りのテイストだったので、カットやむなしとは思うが

本作もかつての劇場版3部作から省かれたエピソードのひとつ。
3日の公開から3日間で動員約20万人・興収約4億円という
数字を見ると、そんなマニア心理を突いた狙いはまずは成功したか。
ただ、逆に言えば、本作は一見さんにはハードルが高い
ファーストのテレビ版も「ORIGIN」も、
ともにある程度の「予習」をしないと、理解不可と考える(注1)。

では「予習」済みのワタシが楽しめたかと言えば、うーん・・・

ファースト直撃世代は見てもよいと思うが

メカアニメとしても人間ドラマとしても中途半端な印象を受けた

メカアニメとしてはMSの戦闘シーンが少ない
  • 残置諜者(注2)掃討に来たジム対ドアン・ザクのオープニング
  • 続いて掃討に来たガンダム対ドアン・ザク
  • ドアンがかつて隊長を務めたサザンクロス隊のカサブランカ市街戦
  • サザンクロス隊対ドアン・ザク(&ガンダム)のクライマックス
4回ではもの足りないというガノタも多いと察する。

人間ドラマとしてはキャラの掘り下げが足りない

上記したサザンクロス隊の使い方がもったいない。
カサブランカ市街戦では手練れぞろいの無双ぶりで
「ここの前線は彼らでもっている」と畏怖されていたのに、
島に上陸した途端にかませ犬と化してしまう。
特に、セルマというブロンド美女の隊員は、
ドアンの名前を聞くたびに複雑な表情を浮かべるワケありキャラだが、
特に種明かしも無く、ワケありキャラのままでドアンに倒されて終わる。
彼女はいったい何だったのか・・・(注3)

さらに、本作はいくつかの点でリアルさとはかけ離れており、
むしろ第15話よりも作りもの感が強くなっている
  • 火山島に21人
テレビ版第15話は、緑が生い茂って川も滝もある島に5人暮らし。
本作は、荒涼とした直径5キロの火山島に21人暮らし。
水源は地下深くの井戸1基と島を見舞うスコールのみ
灯台も備えるので、ある程度の物資が残っている可能性はあるが、
それにしても・・・ 火山島を舞台にしたのはクライマックスの伏線だろうが
加えて、メスのヤギ1頭も飼育 この水源で乳を出す家畜を養えるとでも?
馬そりが身近だった道産子の安彦氏が知らないとは言わせはせん言わせはせんぞ
  • あちこちにMSの残骸
島にも周囲の海中にも散見。MSの動力源って、
核爆発を起こすタイプの核融合炉なのだが・・・死の島間違いなし。
  • 制御不能のホワイトベース隊
アムロ救出のためとはいえ、大反攻作戦直前の出発遅延と勝手な出撃が
おとがめなしとはあまりにも不自然。しかも、その出撃の代償として、
ガンキャノン2機・ジム1機・コアブースター1機の貴重な戦力が大破したのに
何ごとも無かったように再出発していたエンディングが解せない。

まあ、ファーストへのオマージュがそこかしこに見えたことはうれしかった。
古谷徹ボイスのアムロにも古川登志夫ボイスのカイにも再会できたし。
サイド7の初陣からのアムロの必殺技である「コクピット串刺し」も再登場したし。
また、ガンダムとドアン・ザクの戦闘では、ガンダムがビームサーベルを
下からなぎ払うようなシーンがあり、第19話の以下のシーンが重なった。



グフは両腕を失ったが、ドアン・ザクは無傷で回避
つまり、MSパイロットとしてドアンがランバ・ラルを上回る手練れだ
ということを印象づける効果があったと考える。
繰り返しになるが、このようにファーストの予備知識がある人は、
それぞれ独自の楽しみ方を見つけられる作品ではないかと思う。

(注1)テレビ版とORIGINは展開が異なる。
テレビ版は第15話の後に、ユーラシアでラル隊と交戦(=リュウ戦死)→
大反攻作戦→ベルファストから大西洋南下→南米ジャブローから再び宇宙へ
という流れだが、ORIGINは北米でラル隊と交戦(=リュウ戦死)→
ジャブローに南下→大西洋を北上(本作はこの部分)という流れになっている。
よって、第15話に登場するリュウは本作に登場せず、
代わりにジャブローで合流したスレッガーが登場する。

(注2)自軍が撤退して敵軍の勢力圏になった地域にとどまり、
諜報・破壊活動を実行する工作員。分かりやすい実例は
フィリピン・ルバング島で終戦後に見つかった小野田寛郎・陸軍少尉
ただし、ドアンがジオンの残置諜者とは考えにくく、
何らかの手段で正規の残置諜者と入れ替わったと推察される。

(注3)小説版には詳細な人物描写があるらしい。買ってまで読む気はしないが。