ふくろたか

札幌と福岡に思いを馳せるジム一家の東京暮らし

東京ミステリ25年/期待のホープ編

2021年09月29日 | 東京ミステリ25年
本題の前に、石水勲氏の逝去を悼む。
コンサドーレの誕生は、この人と今井春雄氏の「蛮勇」なくしては
ありえなかった。おかげで良くも悪くも「人生変わった」という
道民は多いのではないか。むろんワタシもそのひとりである。
逝去当日の広島戦、勝っておきたかったな・・・

さて本題。9月も残り1日となったので、
「東京人」東京ミステリ特集の読み比べ企画を締めくくることに。
それぞれの号が推す有望株の書き手たちを紹介してラストにする。
秋の読書の参考にでもなれば幸いだ<カッコ内は注目作品

【96年版/この新人作家に注目!】(文・前島純子)
  • 京極夏彦(姑獲鳥の夏)
  • 真保裕一(ホワイトアウト)
  • 打海文三(時には懺悔を)※2007年没
  • 中嶋博行(違法弁護)
  • 柴田よしき(聖母の深き淵)
  • 服部真澄(龍の契り)
  • 北森鴻(狂乱廿四考)※2010年没
  • 瀬名秀明(パラサイト・イヴ)
すでに2氏が故人となったことは残念だが、
25年の時を経て、もはや中堅を通り越して
大御所クラスとなった書き手もちらほら見える。

対して、21年版は次世代の個性豊かな探偵たちを
生み出した書き手たちを紹介している。

【21年版/令和の探偵像。】(文・村上貴史)
  • 斜線堂有紀(キネマ探偵カレイドミステリー)
  • 阿津川辰海(紅蓮館の殺人/蒼海館の殺人)
  • 福田和代(S&S探偵事務所 いつか夜は明けても)
  • 早坂吝(ドローン探偵と世界の終わりの館)
  • 青崎有吾(ノッキンオン・ロックドドア2)
  • 西村健(バスへ誘う男)
  • 東川篤哉(谷根千ミステリ散歩)
  • 川瀬七緒(ヴィンテージガール)
すでに有名作家となった名前も見える。
25年後にどんな書き手になっているのか楽しみだ。
まあ、ワタシ自身はそれを見届けられるか、
自信が持てない年齢になってしまったけれど・・・(おわり)

  • ホークス
西武に5対2の先勝。貯金1をつくり、3位楽天に0.5ゲーム差。
そして、一昨年から勝てなかった天敵・高橋光にやっと黒星をつけた
2回のデスパイネ&甲斐の2ラン2発による4点が最後まで効いた。
投げては先発・千賀が7回途中まで2失点の粘投で今季7勝目を挙げた。

東京ミステリ25年/対談編

2021年09月15日 | 東京ミステリ25年
昨夜のTBS「マツコの知らない世界」
「飛翔天女」豊田真奈美を地上波で久々におがめた
数々の「岩下の新生姜」レシピの登場に、岩下食品社長も好反応で何より。
ただ、現役時代のベストバウトが94年11月のアジャ戦@東京ドーム
というチョイスにはプオタとして納得しかねる。
アジャ戦だったら、95年3月にWWWAの「赤いベルト」を奪った
横浜アリーナの一戦だろう。いや、それよりも92年8月の
山田敏代との壮絶な敗者髪切り戦@後楽園をなぜ【以下割愛】

さて本題。9月も半ばに入ったので「東京人」東京ミステリ特集の
読み比べ企画に手を付ける。
ラスマエになる予定の今回は、双方の対談企画を比較する。

まず96年版の浅田次郎・鈴木光司・若竹七海の3氏の鼎談から、
東京をめぐる印象的な言葉を抜き出した。

【舞台としての東京~司会・新保博久】
浅田「新宿の副都心のビルの上に立つと創作欲を刺激される」
「表面を一枚ぺろっと剝ぐと過去の東京があるって感じ」
「江戸東京博物館に行くと、すでにその地層が展示してある」<これは本当
鈴木「妙なものが妙なところにある」
「住んでいるマンションの屋上に女性もののバッグが落ちていた」
「中には女性用のセパレートの水着が」<「仄暗い水の底から」の原体験
若竹「アパートの隣人はひとつのテーマ」
「定住者とぶらっと寄った人の区別がつかない。誰が異邦人か分からない」
新保「何があっても不思議じゃない場所で不思議な話を書くのはキツイかも」

ミステリが多種多様になっていく中で、
何が起きても不思議ではない東京は便利な舞台だが、
そこで紡がれる物語には相応の水準が求められる、と結論づけている。

一方で、21年版はその物語の水準の土台となる「資料作り」がテーマ。
逢坂剛氏が川本三郎氏との対談で明かした「流儀」をいくつか紹介する。

【手製の資料ノートがすごかった】
「小説の執筆は資料作り半分、書くのが半分。一種の執筆儀式かも」
「B4用紙を二つ折りにして外から表紙でくるんで製本している」
「カラー地図をあえてモノクロでコピーして自分で色づけする」
「インターネットはあくまでも参考程度」
「ウィキペディアは絶対に裏を取らなきゃダメ」
「勉強してから書こうとしたら一生書けない。書きながら勉強する」
<時代考証をめぐる藤沢周平氏の助言
「頭で想像して書いても、表現がお粗末になるし、必ずミスを犯す」
「物語を作ってから資料を集める。資料を見て物語が浮かぶ。両方ある」
「資料作りは20年以上前から。手製のノートは千冊以上はある」

一流の書き手によるアナログだが周到な下準備に、ただ舌を巻くばかり。
なお、この手製の資料ノートは荒川区の図書館「ゆいの森あらかわ」が
引き取ることになったとか。散逸が防がれるのは後世のために喜ばしい。

  • ACL
ラウンド16の2戦は、名古屋4対2大邱 蔚山0(3PK2)0川崎
名古屋はシュヴィルツォクのハットなどで逆転勝ち。
ミンテも2失点に絡んだもののCBとしてフル出場を遂げた。
J1王者の川崎は今季もアジアの頂点には届かなかった。
  • J2
長崎5対1山形 天皇杯で札幌を沈めた植中がJ2初得点初ハット
山口4対1金沢 山口が金沢を降格圏19位に置き去りにする勝ち点3
  • ホークス
首位ロッテとの3連戦の初戦を1対3で落とし、自力優勝が再び消滅。
3位楽天ともゲーム差2.5に開き、CS進出にも暗雲が漂う。
得点が牧原の初回先頭打者初球本塁打のみではさすがに勝てない。
8回まで毎回の14奪三振の力投を見せた先発・千賀を見殺しにした。

東京ミステリ25年/総論編

2021年09月04日 | 東京ミステリ25年
きょう4日はパラ五輪のカヌー女子の準決勝・決勝がある。
このエントリーが出るころには結果が判明しているだろうが、
「4号の先輩」瀬立モニカ選手の健闘を祈ってやまない。

さて本題。8月中に終えるつもりが、9月にずれ込んだのは想定外。
めげずに「東京人」東京ミステリ特集の読み比べ企画を続ける。
きょうは96年版と21年版の総論を比較する。

まず96年版の総論。こちらは東京を舞台にした秀作25編を列挙。
その25編は以下の通り。
  • 傑作ミステリ25選(文・日下三蔵)
蜘蛛男(江戸川乱歩)新宿少年探偵団(太田忠司)
「新宿鮫」シリーズ(大沢在昌)新宿のありふれた夜(佐々木譲)
下町探偵局(半村良)
魔術はささやく/今夜は眠れない/東京下町殺人暮色(宮部みゆき)
向島物語(小杉健治)
殺人現場へ二十八歩毎日が13日の金曜日/東京夢幻図絵(都筑道夫)
マイナス・ゼロ/エロス(広瀬正)
東亰異聞(小野不由美)火刑都市(島田荘司)
虚無への供物(中井英夫)からくり富(泡坂妻夫)
魔都(久生十蘭)魔都(栗本薫)
明治断頭台(山田風太郎)ハイカラ右京探偵暦(日影丈吉)
蒼ざめた街(藤田宜永)行きずりの街(志水辰夫)
古本屋探偵の事件簿(紀田順一郎)

続いて21年版。こちらの総論は、
  1. 江戸を舞台にした捕物帳
  2. 戦前から昭和30年代の探偵小説
  3. 「清張」以後の推理小説
という三部構成で、作品の舞台の切絵図・古地図・古写真を
ふんだんに盛り込んでいる。紹介作品は以下の通り。
  • 切絵図で歩く江戸の探偵(文・末國善己)
半七捕物帳(岡本綺堂)人形佐七捕物帳(横溝正史)
ぼんくら(宮部みゆき)彫師伊之助捕物覚え(藤沢周平)
鬼平犯科帳(池波正太郎)明治断頭台(山田風太郎)
  • 名探偵たちが闊歩した帝都東京→戦後東京(文・日下三蔵)
D坂の殺人事件(江戸川乱歩)聖アレキセイ寺院の惨劇(小栗虫太郎)
奇蹟のボレロ(角田喜久雄)貸しボート十三号(横溝正史)
刺青殺人事件(高木彬光)十三角関係(山田風太郎)
猫は知っていた(仁木悦子)
  • ミステリで読む都市東京(文・川本三郎)
張込み/砂の器(松本清張)
火刑都市(島田荘司)理由(宮部みゆき)
凍える牙(乃南アサ)新宿のありふれた夜(佐々木譲)

太字は双方の総論に登場した作品。
赤字は96年版の総論&21年版のエリア論に登場した作品。
96年版が紹介した作品を、21年版がかなり下敷きにしたことが
うかがえる。いずれにしても、太字赤字の作品は、秀作の中でも
四半世紀の年月に耐えた読み継ぐべき「東京ミステリ」と言えるのでは。
当ブログも取り扱った「火刑都市」が双方の総論に登場していて少しうれしい

  • ホークス
首位オリックス3連戦の初戦を1対2で落とす。6ゲーム差再び。
マルティノスが7回1失点・被安打2。山本が8回1失点・被安打3。
両先発が息詰まる投手戦を展開したが、
9回にまたも救援陣が崩れて致命的な1点を失った。

東京ミステリ25年/エリア編

2021年08月18日 | 東京ミステリ25年
夏の甲子園:大阪桐蔭7対4東海大菅生(8回途中降雨コールド)
東西強豪校対決に無情の雨。試合開始の判断に非難の雨も降り注いだ。

さて本日は「東京人」東京ミステリ特集の読み比べ企画。
96年版と21年版がチョイスした都内のエリアの差異を語る。
まず96年版のエリアと作品。
  • 新宿(文・川本三郎)大沢在昌「新宿鮫」シリーズ
  • 浅草(文・高橋康雄)江戸川乱歩「押絵と旅する男」「一寸法師」
  • 銀座(文・阿刀田高)松本清張「彩り河」ほか
  • 深川・飛鳥山・両国(文・西上心太)
宮部みゆき「パーフェクト・ブルー」「夢にも思わない」
島田荘司「展望塔の殺人」小杉健治「土俵を走る殺意」
  • 東京駅(文・香山二三郎)
松本清張「点と線」西村京太郎「東京駅殺人事件」ほか

続いて21年版のエリアと作品。
  • 銀座(文・松坂健)
久生十蘭「魔都」広瀬正「マイナス・ゼロ」
戸板康二「車引殺人事件」日影丈吉「女の家」ほか
  • 浅草(文・松坂健)
中井英夫「虚無への供物」
都筑道夫「泡姫シルビア」「ホテル・ディック」各シリーズ
  • 西東京(文・新保博久)
若竹七海「さよならの手口」岡崎琢磨「下北沢インディーズ」
北森鴻「花の下にて春死なむ」東川篤哉「謎解きはディナーのあとで」
  • 新宿・中野・池袋(文・新保博久)
都筑道夫「やぶにらみの時計」佐々木譲「新宿のありふれた夜」
大藪春彦「野獣死すべし」京極夏彦「姑獲鳥の夏」ほか
  • 神田・神保町(文・松坂健)
紀田順一郎「古本屋探偵の事件簿」
逢坂剛「クリヴィツキー症候群」「おれたちの街」
  • 東京下町(文・新保博久)
東野圭吾「新参者」宮部みゆき「東京殺人暮色」
小杉健治「灰の男」半村良「下町探偵局」ほか

各エリアへの双方のアプローチは大きく異なる。
端的に言えば、96年版は「直球」(悪く言えばベタ)。
21年版はかなりの「変化球」にチャレンジしている。

それが顕著なのが「浅草」だろう。
「浅草=乱歩」の視点は96年の時点で
松山巌の名著「乱歩と東京」(84年初版)や
島田荘司の評論「江戸人乱歩の解読」(89年初出)が世に出ていた。
前世紀末の時点で「切っても切り離せぬ」とされた視点とも言える。
対して21年版は吉原(千束)を絡めてまでも乱歩の「ら」も出していない。

この「~を絡めて」という手法は21年版の特色だ。
中野・池袋を絡めた「新宿」以外にも、
「銀座」には歌舞伎座がある東銀座の界隈を、
「下町」には宮部みゆきのホームグラウンドである深川のほかに
人形町などを絡めて、エリアに広がりを持たせている。
96年版になかった西東京(吉祥寺・下北沢・三軒茶屋・国立など)や
「東京人」の読者を意識した神保町を盛り込んだこともその現れだろう。
この四半世紀の作品の舞台の広がりを示すとともに、
前回も言及したが、より広いエリアを読者に歩いてもらう意図を感じる。
「点」に過ぎない東京駅を21年版でスルーしたこともその意図の現れか。

ただ、96年版は96年版で捨て難い味がそこかしこにある。
街の古本屋でこの号を見つけた乱歩好きには絶対に入手してほしい。
上に記した「浅草」の項の挿絵が石原豪人なのだ
乱歩の著書以外にも学習雑誌からゲイ雑誌の挿絵までこなした
この怪人画家は98年に亡くなった。
この号に寄せた3ページの総天然色の挿絵
晩年の作品とは思えないほどに奇妙なエネルギーにあふれている。

次回は後回しにしていた96年版と21年版の総論の差異を語る。

東京ミステリ25年/構成編

2021年08月06日 | 東京ミステリ25年
「五輪のどさくさ」に、結婚やら離婚やら入院制限やら
後を絶たないが、NHKもやりやがった(ほめ言葉)

5日夜のBSプレミアム「ダークサイド・ミステリー」夢野久作特集

まさか「瓶詰地獄」丸尾末広氏の漫画(エンターブレイン社刊)を交えて
ネタバレ上等で紹介するとは・・・<アヤ子の全裸もそのまんま
何よりも「夢野作品を語る丸尾氏の映像」がすごく新鮮だったわ。

刺激を受けたままに「東京人」東京ミステリ特集の読み比べ企画を再び。
本日はそれぞれの柱立てを比べる・・・と言っても、
  1. 東京をテーマにした総論
  2. 東京のエリア別の各論
  3. 作家・評論家による懇談
  4. 作品舞台の地図
  5. その他
という構成は、25年前も現在も大きくは変わらない。
それぞれの構成は以下の通り。

【96年版】
  1. 傑作ミステリ25選(文・日下三蔵)
  2. 描かれた街角(5エリア)
  3. 浅田次郎&鈴木光司&若竹七海&新保博久(題・舞台としての東京)
  4. 私立探偵5人・半七親分・怪人二十面相
  5. この新人作家に注目!(文・前島純子)
【21年版】
  1. 江戸/帝都東京&戦後東京/現代東京の3評論
  2. エリア別探偵散歩(6エリア)
  3. 逢坂剛&川本三郎
  4. 1・2・3に多くのカラー地図
  5. 令和の探偵像・・・などなど
読み物の色が濃い96年版に対して、21年版はガイド本の色が濃い。
印刷技術の発達を背景に、江戸・帝都・昭和の戦後といった各時代の
切絵図・古地図をカラーでふんだんに紹介している
「地図と写真で旅する」「探偵エリアMAPつき」とも表紙でうたっている。
江戸の切絵図を載せて捕物帳・時代小説好きにもアピール。
コロナ下で遠出ができない読者の街歩きの手助けに。
そんな意図も感じ取れる。もっとも、最近の感染拡大で、
21年版が紹介している地域も、都民ですら
おいそれと足を運べなくなっている現状が残念だが・・・

一方で、各号が最も力を入れ、かつ特色が浮き彫りになったのは、
1の総論ではなく、2の各論ではあるまいかと考える。
次回は総論を後回しにして、各論の部分を比べて語る。