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満池谷から北の空を見る


 きのうが彼岸の中日でしたが、都合で、今日、お墓参りに行きました。9時まで会社で仕事して、西宮へ向かいました。ウチのお墓は、西宮は満池谷にあります。
 阪神西宮駅からタクシーに乗りました。ここのタクシー乗り場には、縞模様のタイガースキャブがときどき停まっています。私はここで、3度、タイガースキャブに乗りました。タイガースファンとしてはたいへんにゲンのええことです。そのわりにはタイガースは優勝しません。今回は、残念ながらタイガースキャブは停まってませんでした。
 お墓参りもずいぶん久しぶりです。たいへんに、良いお天気で気持ちが良かったです。この満池谷から北の空を見ると、こんもりと丸いかわいい山が見えます。西宮のシンボル甲山です。
 エビスタでぼたもちを買って帰りました。
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菜の花と卵のあえもの


 春です。春ならではの旬のモノを食べたいですね。春を代表する野菜といえば菜の花ですね。春を過ぎると食べられなくなります。今のうちに食べましょう。
 きょうのおかずは、春らしい菜の花畑のようにしあげました。卵と菜の花です。卵はぜいたくに黄身だけを使って、炒り卵にしました。
 菜の花は塩をいれたたっぷりのお湯でゆでます。ゆで具合は菜の花がいいます。長年、料理していると、素材が語りかけてきます。この場合も菜の花が「もう、いいですよ」といいます。
 ゆでた菜の花は水気を絞ります。少しの醤油とごま油で味をつけます。炒り卵とあわせてできあがりです。春らんまんです。
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住吉駕籠の料理


 上方落語に「住吉駕籠」ちゅう噺がおまんねん。住吉街道におる駕籠屋の噺や。駕籠屋ちゅうとクモ助とかいわれたり、あんまりええイメージちゃうけど、住吉街道みたいなとこにおった駕籠屋はおとなしい駕籠屋やった。
 この噺、その駕籠屋にいろんな人がからむ噺や。駕籠屋、道行く人に駕籠をすすめるとる。
「へー、かご。へー、かご」
「うしろへ回れ」
「へ、」
「いま、ちょうど出かかってるねん」
「だれが屁かご、ゆうてまんねん」
「いま、お前屁かごゆうたやないか」
 これ、そこの茶店のおやじ。ちりとり持ったおやじに駕籠をすすめとる。そうこうしとるうちに酔っ払いにからまれとる。
「知ってるか。おそでや」
「知りまへん」
「顔にそばかすのある。いそ屋裏に住んでた、河内の狭山の治右衛門さんの孫。ちーと見んまにべっぴんになったな」
「三文字屋へ上がって、銚子18本。ごちそうならべて、勘定がポチも入れて二分一朱や」
「ほれ、三文字屋の料理や。竹の皮に包んである。エビの鬼瓦焼き、卵の巻き焼き、イカの鹿の子焼き」

 で、その三文字屋の料理を再現したで。左からエビの鬼瓦焼き、卵の巻き焼き、イカの鹿の子焼きや。料理そのものはそんなに難しいもんやない。卵の巻き焼きはいつものワシのダシ巻きや。
 エビとイカに高こうついた。安いブラックタイガーやスルメイカやったら、うまいこと焼けへんし見場が悪い。エビは車エビ。イカはモンゴイカを使こうた。スルメイカなんかやったら薄い身やから鹿の子にならへん。
 エビは串を打って、醬油味醂酒のタレを塗って魚焼きグリルで焼いた。イカは胴だけ使う。足はジャガイモといっしょに炊いた。イカジャガや。これはこれでおいしかったで。で、イカの胴をはすかいに包丁を入れて、タレをつけてフライパンで焼いた。
 酒はいつもの桜正宗、呉春、道灌といったワシの酒ローテーションから、ちょっと浮気して天狗舞や。
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とつぜん対談 第87回 うぐいすとの対談

 きょうの朝、今年初めてこの方の鳴き声を聞きました。奈良のお水取りも終わりました。イカナゴの新仔も食べました。目で、口で、そして耳で春を感じたしだいです。もう、すっかり春です。
 きょうの対談相手は春を告げる鳥、春告鳥、うぐいすさんです。

雫石
 こんにちは。

うぐいす
 ケキョケキョ。

雫石
 今朝、今年初めて、あなたの声を聞きました。

うぐいす
 ケキョケキョ。

雫石
 まだ「ホーホケキョ」と上手に鳴いてませんでしたね。

うぐいす
 ケキョケキョケキョケキョ。

雫石
 はあ、なるほど。うぐいすも鳴き声の練習が必要なんですね。

うぐいす
 ケキョ。

雫石
 はいはい。もうちょっとしたら上手に鳴けるって。

うぐいす
 ケキョ。

雫石
 ちょっと鳴いてくださいよ。

うぐいす
 ケキョケキョ。

雫石
 そんなこといわずに頼みます。

うぐいす
 ホーホケキョ

雫石
 うわあ。上手。いい声。パチパチパチ。もうひと声。

うぐいす
 ホーホケキョ。ホーホケキョ。

雫石 
 さすが。ところで、こないだ梅見にいったんですが。あなたが梅の木にいましたね。梅にうぐいすとはよくいったものですね。

うぐいす
 ケキョケキョ。ホーホケキョ。

雫石
 ええ、あれはあなたではないんですか。

うぐいす
 ケキョケキョケキョケキョ。

雫石
 あの時分はあなたは藪の中にいたんですか。でも、うぐいす色のかわいい小鳥がいましたよ。

うぐいす
 ケキョ。ホーホケキョ。ホーホケキョ。

雫石
 ええ、あれはメジロなんですか。そういえばあなたはうぐいす色ではなく、地味な色の鳥ですね。

うぐいす
 ケキョーーーーーーーーー!

雫石
 わっわっ。怒った。すみません。

うぐいす
 ケキョケキョ。ホーホケキョ。ケキョ。

雫石
 でも、梅にうぐいすというし、うぐいす色というと、うぐいす餅のような鮮やかな緑色なんじゃないですか。

うぐいす
 ケキョー。ケキョ。ケー。

雫石
 はあ。なるほど。メジロとうぐいすをごっちゃにして、メジロの色をうぐいすの色だと思ったんですね。

うぐいす
 ケケケケ。ケキョケキョケキョ。

雫石
 はいはい判りました。メジロといっしょにするなって。

うぐいす
 ケキョーケキョー。

雫石
 たしかに色はあっちの方がきれいだけれど、声はこっちの方が上だって。確かにそうですね。うぐいす嬢っているけどメジロ嬢っていませんもんね。

メジロ
 チーチー。

雫石 
 わ、びっくりした。メジロさん、どうしたんです。

メジロ
 チーチーチー。

雫石
 はいはい、あなたも声がきれいですね。

うぐいす
 ホーホケキョ、ホーホケキョ、ホーホケキョ。 

雫石
 やっぱり声はうぐいすさんですね。

メジロ
 チーチーチー。

うぐいす
 ケキョケキョケキョケキョ。

雫石
 うわあ。うぐいすとメジロがとっくみあいはじめた。
 

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2016年の阪神タイガースはどうかな?

 さてさて、あと少しで開幕。また、今年も阪神タイガースを応援する日々がはじまる。楽しみなことじゃわいな。
 そういうわけで、ファンとして、阪神の優勝、日本一を祈願しなくてはならないのだが、小生、ことしの阪神優勝を望まない。ことしはBクラスでもいいと思っている。いささかパラドックスめいた話になるが、阪神ファンの人一倍強い優勝願望が、近年、阪神を優勝から遠ざけている要因ではないか。どこの球団のファンもひいきチームの優勝を願うが、阪神の場合、これが特に強い。また、関西のスポーツマスコミも阪神タイガースの一挙手一投足、ハシの上げ下ろしまで針小棒大に報道し、ひとつ勝てば優勝と大さわぎするため、ファンもそれにのせられて希望を持ったり絶望したり。いそがしいことである。
 そのため目先の一勝にこだわざるをえない。冒険できない。そうなると、ある程度計算できるベテランに頼る。若手の育成を怠るわけだ。例えばキャッチャー。去年1年棒にふってもいい。梅野を使い続けるべきだった。1年や2年下位に低迷したとしても、一人前の正捕手が育てれば安いものではないか。
 さて、今年の阪神タイガースだが、一番変わった点、これは、もう、監督。和田監督から金本監督に代わった。和田さんは長いコーチ経験を経て監督に就任した。一方、金本監督はコーチ経験を経ずに監督に就任した。その点が不安ではあるが、和田さんは選手時代から阪神を出たことのない人、いろんな方面に気をつかわなければならなかっただろう。その点、金本監督は功労者であるが、外様である。自分の信念、考え、戦略に忠実に野球ができる。だから、今年の阪神タイガースは金本色の強くでたチームとなるであろう。ゆえに「超変革」というスローガンは正鵠を得たものといえよう。
 さて、マートン、オ・スンファンが去った。新戦力は何人かの外国人選手と、そして藤川球児が復帰した。メンバー表だけをみれば、昨年に比べて戦力が増強したようには見えぬ。で、現有戦力のかさ上げができたのか?これはできたと見る。金本監督と掛布2軍監督の指導のたまものか、待望の若手が伸びてきたのではないか。
 攻撃面はマートンが抜けた穴は大きい。新外国人ヘイグがどこまで役に立つかわからない。それに今の阪神の打撃陣を見ると、ホームランバッターが少ない。ゴメス20本、福留20本、鳥谷15本。確実に計算できるのはこの55本ぐらいだろう。一昨年のバレンティン一人より少ない。しかし、小生はホームランは、チームの常勝には寄与しないと思う。ホームランが出ればその試合は勝てるだろう。しかしホームランに頼っていれば連勝は難しい。ヒットを連ねてタイムリーで点を取れるチームが強いのではないか。と、なると、ゴメス、鳥谷、福留といった主役もさることながら、上本、大和、西岡、今成といった脇役、狩野、坂、新井といった代打陣が大切なのでは。
 投手陣は、こと先発に関しては攻撃面より安心している。4本柱に加えて、岩崎が成長するだろうし、藤川が計算できる先発ではないか。ところが後ろが少々心配。いつまでも福原安藤に頼っていられない。藤川がまだ火の玉ストレートであれば昔とったキネヅカで、すんなりオ・スンファンの代わりに9回に収まるが藤川はもう火の玉ではないだろう。外国人のマテオが守護神有力候補らしいが、これだけは始まってみないと判らない。松田、歳内、秋山、岩貞たちの奮起を望む。

2016年阪神タイガース予想オーダー

1番 ショート 鳥谷
2番 2塁   上本
3番 ライト  福留
4番 1塁   ゴメス
5番 サード  ヘイグ
6番 センター 江越
7番 レフト  高山
8番 捕手   梅野

先発ローテーション
メッセンジャー
能見
藤浪
岩田
岩崎
藤川

2016年セリーグ順位予想
1位 ヤクルト
2位 巨人
3位 中日
4位 阪神
5位 DeNA
6位 広島  
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SFマガジン2016年4月号


SFマガジン2016年4月号 №714

雫石鉄也ひとり人気カウンター

1位 スティクニー備蓄基地  谷甲州
2位 突撃、Eチーム     草上仁
3位 烏蘇里羆        ケン・リュウ 古沢嘉通訳
4位 熱帯夜         パオロ・バチガルピ 中原尚哉訳
5位 二本の足で       倉田タカシ
6位 やせっぽちの真白き公爵の帰還 ニール・ゲイマン 小川隆訳
7位 七色覚         グレッグ・イーガン 山岸真訳
8位 電波の武者       牧野修
9位 overdrive        円城塔

連載

幻視百景(新連載)      酉島伝法
小角の城(第37回)     夢枕獏
椎名誠のニュートラルコーナー(第50回)
世の中はい爺さんと悪い爺さんでつくられていた 椎名誠
マルドゥック・アノニマス(第8回) 冲方丁
青い海の宇宙港(第8回)   川端裕人
ウルトラマンF(第3回)   小林泰三
近代日本奇想小説史[大正・昭和篇](第26回)  横田順彌
SFのある文学誌(第45回)  長山靖生
にゅうもん!西田藍の海外SF再入門 西田藍
アニメもんのSF散歩(第9回)   藤津亮太
現代日本演劇のSF的諸相(第18回) 山崎健太

「スター・ウォーズ」と現代のスペース・オペラ映画(後篇) 添野知生
ランキングで振り返るSF出版70年 高橋良平×塩澤快浩(本誌編集長) 

デヴィッド・ボウイ追悼特集 変わり続けた男の物語

 今月号は読み切り短篇が9編。だから、いちおう「読む」ことはできた。で、楽しめたかというと微妙。上記の人気カウンター4位までは楽しめた。ところがそれ以下の5作は面白くなかった。
「スティクニー備蓄基地」フォボスのスティクニー備蓄基地が、不思議な「攻撃」を受ける。どうも「生物兵器」が使われたらしい。この作品未完。続きは8月号。なぜ一挙掲載しない。アホみたいな企画記事を削ってでも一挙掲載すべき。
「突撃、Eチーム」そのチームは超能力者のチーム。それぞれ「うそつき」「どろぼう」「暴力」の超能力を持っている。人に、うそをつく、人のものを盗む、人に暴力をふるう、こんなこと超能力者にしかできない。
「烏蘇里羆」親を殺し、自分の右腕を奪ったの巨大な羆に復讐するため、機械の馬に乗って追跡。陸上版白鯨。ケン・リュウ、吉村昭に挑戦。恐縮ながら小生も機械で羆と戦う話を書いている。
「熱帯夜」「神の水」のスピンオフ。小生は「神の水」は未読だが、この作品だけでも楽しめた。暑いコロラド。廃品回収業の母。取材する女。
 と、いうわけで、上位4作だけに言及する。
 早川から送られてきた封筒を開けてびっくり。デヴィッド・ボウイが表紙におる。間違って音楽雑誌が送って来たか?今まで50年近くSFマガジンを購読してきたが、音楽関係者が表紙になったのは初めて。(初音ミクは音楽関係者かな?)確かに、デヴィッド・ボウイはSFが好きだったらしいが、日本でゆいいつのSF専門誌たるSFマガジンが表紙に採用するのは違和感を感じる。表紙だけではなく、追悼特集までやっている。SFは文芸だ。SFマガジンはSF専門誌だ。こういうことは音楽雑誌に任せておけ。
「ランキングで振り返るSF出版70年」これ、日本SFにとっての重要なことではなく、早川書房にとっての重要なこと。こんなこと読者に知らしめてなんの意味がある。長年SFもんをやっている人は、人それぞれ自分にとってのSF関連重要なことがある。小生にもある。そのことは「とつぜんSFノート」でときおり触れている。かようなことは、まったく極私的なものだろう。出版社が有料の雑誌でやるべきことではない。したければ、無料のPR誌でやるべし。こんなアホみたいなことに頁を費やすのなら、谷甲州の作品を一挙掲載すべすべし。
 編集後記を読むと、「お詫びと訂正」が2件、まったく、2ヶ月も時間を取っているのに、まともな仕事ができんのか。



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ハクモクレンの木


 会社の近くのハクモクレンの木です。昨年の3月15日は、まだ固いつぼみでした。それに咲いても半分ほどしか花が開きませんでした。今年は、ご覧のようにだいぶん、つぼみがほころびております。もう少しすると白い清楚な花が咲きます。
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秋刀魚の味


監督 小津安二郎
出演 笠智衆、岩下志麻、佐田啓二、東野英治郎、岡田茉莉子、岸田今日子

 小津安二郎である。原節子はでてないが、笠智衆は出てる。ローアングルである。たした事件はおきないのである。どんでんもないのである。もちろん、アクションだのたちまわりだのといったガサツなものもないのである。それでも退屈せずに最後まで観られる。いやいや、いつまでも観ていたいのである。小津安二郎はクセになるのである。笠智衆のちょっと棒読みなセリフが実に心地よいのである。
 平山は初老の会社員。会社では、個室で秘書がいるから重役と思われる。妻には先立たれている。子供は3人。長男幸一、次男和夫、長女路子。この路子、24歳結婚適齢期。ところが本人も父平山の結婚なんかまったく考えてない。まわりが路子の結婚についてなんだかんだと世話をやく。
 平山の中学のクラス会でも、もっぱら話題は娘の結婚のこと。と、いう具合に、娘の結婚と父親の想いを軸に映画すすむ。と、まあ、これだけの映画であるが、ついつい見せられてしまう。
 しかし、よく酒を飲む映画である。なにかというとおっさんたちが集まって酒を酌み交わしている。かくいう小生もおっさんだが、友だちと合って、ちょっと一杯なしで別れることは100パーセントない。
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ホワイトデーのマドレーヌ


 ことしもバレンタインに彼女からレオニダスのチョコレートをいただきました。で、あしたは3月14日ホワイトデーです。
 そういうわけで、わたしのホワイトデーは毎年マドレーヌを贈ることにしてます。マドレーヌはわたしの手作りです。
 きょうの午前は会社へ行ってました。日曜の午後、マドレーヌを焼いておりました。

 星群の会ホームページ連載の「SFマガジン思い出帳」が更新されました。どうぞ、ご覧になってください。
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神戸の春の使者 イカナゴの新仔


 今年もイカナゴのクギ煮をたくことができました。うちのはクギ煮とはいっても、ずいぶんやわらかいです。砂糖と醤油は少ないめです。クギ煮というよりイカナゴの新仔の佃煮です。
 今年は漁の解禁日が例年より遅くなりました。毎年は2月の終わりごろなんですが、今年は3月に入って、3月7日に解禁になりました。
 値段も高いです。昔は1キロ1000円以下だったのが、昨年は1000円、今年は倍の2000円を超えてました。こうなるとクギ煮は庶民のものとはいえませんね。
 なにはともあれ、こうして今年もイカナゴの新仔が食べられます。神戸に春がやってきました。
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笑顔の男

「37番のカードをお持ちの方、6番窓口へどうぞ」
 37番?腰を浮かせる。自分のカードを見る。39番だ。このハローワークはいつもは比較的すいているのだが、きょうは混んでいる。もう、かれこれ2時間近く待っている。
 浮かしかけた腰を下ろす。まだまだ待たなければならない。昼の1時に近い。腹が減った。なにか食べてから来たら良かったかな。いいかげんイヤになってきた。きょうは帰って、あす出直そうか。
「あのう」
 隣に座った男が話しかけてきた。私と同年配の中年男だ。丸顔で八の字眉毛。団子のような鼻で、大きな耳。鼻の横とあごの先に黒いひげ、顔全体で愛想良さを表している。
「はい」
「よろしければカードを替えてあげます」
 男が見せたカードは37番だ。
「え、いいんですか」
「いいんです」
「でも、どうして?」
「あ、早く行かないと窓口の人が待ってますよ」
 37番と私の39番を交換して、6番の窓口へ行った。ハローワークの職員に37番のカードとプリントアウトした求人票を渡す。
「ちょっとお待ちください」
 職員は求人票を見ながら電話する。
「こちら西戸ハローワークですが、いま、新山さんとおっしゃる54歳男性の方が窓口にお見えですが。はい。はいはい。はあ。わかりました」
 職員は受話器を置いて気の毒そうな顔でいった。
「残念ですが、この案件、たったいま、決まったそうです」
 ハローワークを出てJRの駅に向かう。きょうもボウズだ。これで2週間ボウズが続いた。先月の月末に電機会社に面接にいったのが最後だ。やはり50を超してる年齢がネックだろう。
 駅の切符を買おうと、財布を出した時、ポンと肩をたたかれた。振り向くと、丸顔、八の字、団子鼻、大耳があった。満面の笑みを見せている。実にフレンドリーだ。
「や、また、お会いしましたね」
「あ、どうもありがとうございます」
「いえ。ちょっと休んでいきませんか」
 駅前の喫茶店を指さした。時間はある。できたら家に帰りたくない。「どうでした」と妻が聞く。「ダメだった」この時の妻の落胆した顔。その顔を見るのがイヤなのだ。家に帰らないわけにはいかない。その妻の顔を見るのをできるだけ先に延ばしたい。
「いいですよ」
 二人で喫茶店に入った。二人ともコーヒーを頼んだ。
「どうでした。面接ですか」
「ダメでした。もう決まったそうです」
「そうですか。それは残念ですね」
「50過ぎると再就職は難しいですね」
「そうですね。ところが相談なんですが、これを持って私の代わりに面接に行きませんか」
 男が丸い指で取り出したのは封筒だ。中身はハローワークの紹介状だった。
「尼川の電子部品の商社なんですが、私は急に面接に行けなくなりました。電子部品の在庫管理の仕事ですが、あなたと私は同年輩ですね。先方に電話したらあなたに面接してもいいということです」
「願ってもないことですが、あなたはいいんですか」
「ああ、私、私はどうとでもなります」
「どうして、そんなに私に親切なんですか」
「そで振り合うも他生の縁というではありませんか。ハローワークの待合室で隣り合って座ったのも何かの縁です」
「どうもありがとうございます」
「では、私は行くところがありますから」
 伝票を持って立ち上がった。
「あ、私がもちます」
「いいです。いいです」
 うむをいわさずレジに行った。店の外に出た。
「では私はバイクですので、ここで」
「あ、ありがとうございました」
「いえいえ。うまく採用されるといいですね」
 男は満面の笑みを浮かべて、駅前の駐輪場に行った。小型バイクに乗って南の方へ走って行った。背中に釣竿を背負っている。釣りにでも行くのだろうか。

 その尼川の電子部品の商社に採用されて三ヶ月が過ぎた。年が明けて1月の10日。西戸神社に向かう。ここは福の神の総本社。毎年1月10日は大きなお祭がある。西戸生まれの私は毎年1月10日のお参りを欠かしたことがない。屋台が並ぶ参道を歩くと赤い門がある。この門をくぐると本殿がある。
「おかげさんで再就職できた。今年のお賽銭は多めにしよう」
「そうね。賛成」
 妻と私、1000円づつお賽銭を入れた。拝殿を出て、福笹を売っている店がある。この神社のご神体の神様のイラストがついた大きな福笹がある。
「あれも買おうか」
「うん」
 イラストを見る。丸顔、八の字、団子鼻、大耳だ。その笑顔の神様がウィンクした。 



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エピローグ


 円城塔      早川書房

 この本を読んで最もうれしかったのは、最後の1行を読み終えた時だ。あ~、やっとこの苦行から解放される。
 苦痛であった。日本語で書いてあるから文章は読める。しかし、その文章を連ねてなにが書いてあるのかさっぱり判らない。それでも、小生は読み進んだ。読みはじめた本は必ず最後まで読了することにしているから、がまんして最後まで読んだ。こんな読書体験は「ディスコ探偵水曜日」を読んだ時以来だ。
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とつぜんコラム №175 どのあたりの灰色で見極めるか

小生の本業は購買仕入れ。製造業の現場で必要なモノを買っている。もちろん小生のカネで買うのではなく、会社のカネで買う。いろんなモノを買う。溶接用の液化炭酸ガスも小生の購入しているモノのひとつ。炭酸ガスはアーク溶接用のシールドガスとして使う。この炭酸ガス、噴出する圧力が低いと作業がしにくく、溶接作業している現場のおじさんたちが不満をいう。それではと、圧力を高めてやると、今度はガス使用量が増えて、月末の支払いが増え、経理が文句をいう。現場と経理、双方を満足させることは不可能。それでも、不満だが、小生に文句をいうほどではない、双方だまっているという、見極め点=スウィートスポットというものがある。CEタンクの圧力調整レバーを微妙に操作して、どのあたりに落ち着かせるかが小生の腕の見せ所である。
これ、政治にもあてはるのではないか。産業振興、国防、国土開発といった分野に予算をつぎこむか、社会福祉、医療、教育といったことに予算を使うか、もちろん、あらゆることに、潤沢に予算を使えば、だれも文句をいわない。しかし、国の予算の原資には限りがある。どこかを手厚くすれば、どこかを薄くしなければならない。それのどこあたりで線を引くかが、為政者の腕の見せどころではないか。これと真逆の極限が独裁ということだろう。北の某国のように、軍事に山盛りに盛って、国民は飢えている。こういう為政は簡単だ。国のトップは頭を悩ませる必要がない。サジ加減に心をくだかなくてもいいからだ。トップの取り巻きも頭を使わなくてもいい。機嫌をそこねたら命が危ういが、トップのいうとおりすればいいのだから、ある意味楽である。
かような独裁国は論外として、いまどき世界のほとんどの国は、国のトップが思うがままに動かせる国はないだろう。中国のような社会主義国でも国家主席の習近平といえども、好き勝手はできないだろう。それが民主主義の国ならいわずもながらである。
日本はご存知のように民主主義国家である。だから為政者は、国民の意向にそう政治をしなくてはならない。それに逆らえば、次の選挙で落選して為政者にはなれない。選挙は多数決である。だから、多数派の有権者に受けの良い為政を行おうとする。100人有権者がいれば51人が喜ぶことを、行う/行うふりをする/行う約束をする、わけだが、49人の意向が為政に反映されないことが多い。
2005年の解散総選挙は郵政解散と呼ばれる。当時の首相小泉純一郎は国民にYESかNOかを迫った。郵政民営化賛成か反対かということ。結果はご存知の通り与党小泉自民党は大勝して、郵政は民営化された。そのあと、なんでも民営、官から民、規制緩和という路線をつっぱしり現在の格差拡大社会となったのではないか。本来ならば官がしっかり規制しておかなければならないモノまで、緩和して好きかってさせておくものだから、ひずみや不具合が頻発しているのである。先般の軽井沢のバス事故もその犠牲ではないのか。今になってバス事業を規制しようとしている。15人もの犠牲者がでないとできないのか。
なにごともYESかNOか。白か黒か。賛成か反対か。敵か味方か。二者択一で行うのは容易い。かようなことを迫る為政者は思考停止におちいっているといわれてもしかたがないだろう。真に有能な為政者は灰色を認める為政者だと思う。確かに白黒為政者は歯切れが良く、見てくれはいいだろう。灰色為政者はどっちつかずでパットしないように見える。しかし、真に有能な為政者は白と黒の間の目盛りのどのあたりに針を置くか見極めのできる人ではないだろうか。 
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休暇をとって神戸どうぶつ王国へ行ってきました


 きょう、ものすごく久しぶりに有給休暇をとりました。わたし、土日も出勤しているうえ、めったに休みませんので休暇が40日以上たまっています。たまには休まなくてはいけません。現役時代の金本監督じゃないんですから。
 以前から行きたいと思っていた「神戸どうぶつ王国」へ行ってきました。三宮からポートライナーに乗って、「京コンピュータ前」で降りたら、すぐそこです。
 中へ入って、しばらくしたら、やたら毛並みのきれいな動物のぬいぐるみがスタッフのおねえさんに連れられて歩いてきました。よく見ると、ぬいぐるみではありません。生きた動物です。アルパカでした。
 園内でコーヒーとケーキをいただいて、ひととおり歩きました。どこも花がいっぱいできれいにしてあります。
 ウサギやカモが足元をちょこちょこ歩いています。道を歩いていると、カンガルーとぱったり出会いました。まるで友人と出会ったようです。ごく普通に横を通って行きました。カンガルーとすれ違ったのは生まれて初めてです。
 感心したのは魚です。花、鳥、獣といった目立つモノはもちろん本物ですが、目立たない下の池にいる魚も本物でした。コイやフナもいましたが、アフリカのゾーンにはちゃんとアフリカの魚がいました。日本の淡水魚ではありません。なんだろうと思ってよく見るとアフリカン・シクリッドでした。
 存在感たっぷりの鳥がいました。ハシビロコウです。写真の鳥がそうです。たいへんな貫禄です。
 ここの動物はたいへんに大切にされています。どの鳥も獣も、羽や毛がきれいです。それに人をおそれません。人なつっこいです。
 たのしい時間を過ごすことができました。三宮までもどって、新装なったさんちかに新しくオープンした親子丼専門店「鶏三和」で名古屋コーチン親子丼をいただきました。鶏肉がおいしかったです。
 楽しい休暇を過ごしました。あしたからまた働きましょう。
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ナイル殺人事件


監督 ジョン・ギラーミン
出演 ピーター・ユスチノフ、ロイス・チャイルズ、ミア・ファロー、ジョージ・ケネディ、オリヴィア・ハッセー、デビッド・ニーブン

 豪華な映画である。冒頭、いきなりイギリスの大きなお屋敷に馬車が着くシーン。大勢の召使いが出迎えるなか、馬車から降りてきたのは若いべっぴん。このべっぴんリネットが新しいこのお屋敷の主人。莫大な遺産の相続人。大金持ち。彼女は天から金と美貌を授かったわけ。
 このリネットを頼って親友のジャクリーンが婚約者サイモンを連れてやってくる。場面が変わると、リネットとサイモンが結婚している。リネットはジャクリーンから婚約者を奪い取ったわけ。
 新婚さんはエジプトへ新婚旅行。豪華な遊覧船でナイル川を川くだり。この遊覧船に名探偵エルキュール・ポアロが乗っている。また、客はなぜかリネットに因縁のある者ばかり。リネットは金持ちでべっぴんだが/だから、敵がおおいのだ。そして、この船にはリネット最大の敵が乗っていた。婚約者を奪われたジャクリーンがストーカーと化してリネットをつけねらう。そして、とうとうリネットが・・・。
 ミア・ファロー、ジョージ・ケネディ、デビット・ニーブンといった主役を張れる役者たち、それに当時のアイドル、オリヴィア・ハッセー、これらの人たちが脇を固めるといった豪華配役。お金持ち上流階級が舞台だからハイソな雰囲気、ピラミッド、スフィンクスといった有名なエジプトの観光地をめぐる観光映画としても楽しめる。観て目に楽しい映画である。
 最後は、ポアロが関係者を一堂に集めて、謎ときと犯人あてをするのは決め事だが、最後の最後にいちばん大きな悲劇が。 
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