風に吹かれすぎて

今日はどんな風が吹いているのでしょうか

月夜に吼える

2005年03月26日 | 

帰り道、フロントガラスの向こうに大きな月が見えた。
太陽は前へ前へと背中を押すが、
月はいつも含み笑いをしている。

月はまるで猫だ。
無視すれば、見ろと主張するし、見れば見たで、黄色いあばた面をそむける。

あまり、そういう駆け引きは好きではない。
駆け引きが面白い時期は過ぎ去った。
駆け引きは、勝ち負け、敗れた者が傷つく。
傷つく姿を見て面白いわけがない。
他人を勝ち負けの駒にして面白がれるのは、そいつが何かの駒のうちだけ。

月夜に吠える狼は滅びようとしている。
狼は、月に向かって何を叫んでいたのか。
アラスカで、シベリアで、僅かに生き残った狼が今夜も吼える。
この世の嘘が我慢できないのだ。

嘘は狼の足下までひたひたと押し寄せる。
月を見上げ、腹の底から吠えてみる。

月は何も語らない。
すべてが凍りついていく。
凍るなら凍ってしまえ、と狼は思う。




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