All Photos by Chishima,J.
(シャチ 以下すべて 2012年8月 北海道厚岸郡浜中町)
(NPO法人エトピリカ基金会報「うみどり通信」第5号(2012年10月発行)掲載の「2012年度霧多布沖合調査(その1)」を分割して掲載、写真を追加 一部を加筆・訂正)
前回調査から5日しか経っていないにも関わらず、海鳥の様子は激変していました。フルマカモメやハシボソミズナギドリ、ヒレアシシギ類等が万単位の群れで出現し、甲板は「一体どうやって数えるの~!?」という嬉しい悲鳴に度々包まれました。実は道東沖が夏期の重要生息域なのではと注目しているカンムリウミスズメも、この日は40羽以上が記録されました。
フルマカモメの大群
そして満を持したかのごとく現れたシャチ。ヨットのように大きな背びれを持つオス成獣や、親子を含む8頭前後の群れでした。発見時にはやや遠かったものの、まるで船を偵察するように接近し、潜水・浮上を繰り返して去って行きました。アイヌが「レプンカムイ(沖にいる神)」と呼んで大事にしたこの鯨類に、畏敬の念を感じずにはいられない瞬間でした。近年、知床や釧路沖で頻繁に観察されているシャチは、去年9月に続いて2度目の確認となり、霧多布沖にも定常的に来遊している可能性が出て来ました。群れの周囲にはクロアシアホウドリやミズナギドリ類も多く飛んでいました。南極海ではアホウドリ類がシャチに付き従い、その食べ残しにありついていることが知られています。霧多布でも、もしかしたらそんな光景が繰り広げられているのでしょうか。このように海鳥と海獣は同じ海に生きる高次捕食者であり、切っても切れない関係にあります。それは、調査や保全においても同じことだと思います。本調査では今後とも海鳥と海獣の結び付きを視野に入れながら情報を集積し、将来的な保全に活用してゆきたいと考えています。
親子と思われるシャチ
(2012年8月30日 千嶋 淳)
*本調査は地球環境基金の助成を得て、NPO法人エトピリカ基金が実施しているもの
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