鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

エトピリカ(その3) <em>Fratercula cirrhata</em> 3

2011-12-02 14:30:08 | 海鳥写真・チドリ目
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All Photos by Chishima,J.
(以下すべて エトピリカ 2008年11月26日 北海道目梨郡羅臼町)


 根室海峡には、国後島や択捉島と地理的に近いせいか、繁殖期も含めて本種が時々出現する。知床連山から吹き下ろす風が厳しくなる、初冬の海上で出会った本個体の羽衣はよくわからない。嘴に厚みがあり、その赤みも夏から秋に観察される幼鳥、若鳥より強いように感じられ、目の上方から側頭部にかけて、夏羽では種小名の由来となった「巻き毛」がある部分も明瞭な淡色であることから亜成鳥より上の齢クラスなのかもしれない。喉の下部から胸にかけては、若鳥同様灰白色なようである。


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 角度の関係か嘴の厚みが感じられず、側頭部、後頭部に淡色部はあるものの、短時間の目視ではウトウとの識別が難しい条件である。こうして画像で見ると体躯の質感などはまさにエトピリカのものなのだが、風や波のある状況ではなかなかわからない。疑問を感じたら、やはり撮影しておくのが望ましい。


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 この日は決して時化ではなく、季節的にはむしろ凪の方であったが、少しでも波があると本種のような大型ウミスズメ類であっても、こうして波間から体の一部しか見えないことは珍しくない。嘴先端から下嘴角へ向かってのフォームは、本種特有のものかもしれない。先端から下嘴角への落ち込みが厳しい種にウミオウムがあるが、ウミオウムの下嘴角はずっと前方にあり、半分より基部に近い本種とは異なる。


(2011年12月2日   千嶋 淳)


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