鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

ウミスズメ(その1) <em>Synthliboramphus antiquus</em> 1

2011-12-01 21:20:35 | 海鳥写真・チドリ目
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All Photos by Chishima,J.
(以下1点(比較画像のカンムリウミスズメ)除きすべて ウミスズメ 2011年5月20日 北海道十勝郡浦幌町)


昨日の記事でウミスズメ生殖羽(夏羽)の眼後方の白いラインは糸状であり、カンムリウミスズメのような房状にはならないと書いたが、その舌の根も乾かぬ内に、「房状」にも見えるウミスズメの写真が、整理中の画像から出てきたので掲載する。船の舳先で潜水直前のため、体はかなり沈んで、翼は開きかけている。この日は多数のウミスズメが観察され、夏羽も少なくなかったが、ここまで眼後方の白色部が大きい鳥は少なかったか、この個体だけかもしれない。老齢な成鳥なのだろうか?
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後ろ姿。眼の後方から後頭部に向けて白い羽毛が房状に伸びている。ウミスズメがこのような羽衣の時期にカンムリウミスズメも出現しうる本州東方海上などでは、注意が必要だろう。


Photo


2種の後方からの比較画像。カンムリの撮影データについては、画像中に記した。本記事で取り上げたウミスズメの白い羽毛が「房状」とはいっても、カンムリに比べたらはるかに細いのがわかる。以前、2種の生殖羽の標本写真を見せてもらったことがあるが、カンムリウミスズメでは白い羽毛は眼の前方から後頭部にかけて広がりを増しながら、後頭部の中央を除く全体を覆うように生えており、額からの黒い冠羽がそこに乗っかっているのが印象的だった。それに比べると、ウミスズメの白い羽毛は太さに個体(?)差はあれ、黒い羽毛の上から線状に生えているにすぎない。


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潜水の瞬間。翼を広げて、これから水中を「飛翔」する姿が想像できる。
本種は、道東ではごく少数が繁殖する可能性がある以外は旅鳥、冬鳥として多く渡来するが、春の渡りは遅いようで5月中旬に北海道の太平洋岸海上では多数観察される。秋の渡りは10月下旬から11月にかけて活発で、一部はそのまま越冬するが厳冬期には少なくなる。


(2011年12月1日   千嶋 淳)

*一連の写真は、日本財団の助成による十勝沖海鳥調査での撮影。


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