Photo by Chishima, J.
(豊北原生花園に咲くハマナス 背後にはトーチカと祠 2015年6月 北海道中川郡豊頃町)
(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年7月1日放送)
豊北原生花園は、十勝川と浦幌十勝川の河口にはさまれた海岸草原です。帯広周辺に本格的な春の訪れる5月。原生花園は一面の枯れ野で、まだまだ冬の雰囲気です。しかし6月。センダイハギが海岸を黄色く染め抜くのを皮切りに、エゾカンゾウ、ハマナス、ツリガネニンジン…と多くの花がそれぞれの季節ごとに原野を彩ります。沖を流れる冷たい親潮の影響で、コケモモやガンコウランといった高山植物が海辺に生育しているのも、特徴的な点です。
こうして種々の花が絢爛に、また可憐に咲き誇った原生花園も9月から10月のエゾリンドウが終わると、所々に残されたハマナスの赤い実をのぞいて枯れ野に戻ります。
ほとんど観光地化されていない穴場ですが、それゆえ高山植物の盗掘や、四駆自動車による植生の踏みつけが目立ちます。高山植物を家庭で育てるのは難しいですし、踏みつけられた植生が回復するには多くの時間を必要とします。野の花は野で愛で、道の天然記念物にも指定されている原生花園を未来へ引き継いでゆきましょう。
帯広からは車で一時間程度。初夏にはワタスゲの白が美しい湿原を抜けて海岸へ出ると、古びたコンクリートの建物が目に入ります。これは太平洋戦争後期に建てられたトーチカ。トーチカとは防御陣地のことで、連合軍の上陸を想定して作られたトーチカが十勝海岸には多数あります。幸い、実戦で使われることはありませんでした。色とりどりの花や鳥の囀り、波の音を楽しむと同時に、トーチカとその前の赤い祠を見て平和への思いを馳せるのはいかがでしょう。
(2015年6月30日 千嶋 淳)
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