鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

霧多布沖の海鳥・海獣⑳ケイマフリ(6月26日)

2014-01-23 19:21:22 | ゼニガタアザラシ・海獣
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All Photos by Chishima,J.
ケイマフリ夏羽 以下すべて 2013年6月 北海道厚岸郡浜中町)


NPO法人エトピリカ基金会報「うみどり通信」第7号(2013年10月発行)掲載の「2013年度霧多布沖合調査(その1)」を分割して掲載、写真を追加 一部を加筆・訂正)


 若手調査員は皆都合が付かず、いつものオジサン達で沖を目指します。海上はこの時期特有のジリで見通しが利かず、水滴が髪や顔に纏わり付き、なかなか厳しい調査となりました。帆掛岩のゼニガタアザラシも深い霧に霞んでいましたが、巨大なオスたちの中には首や後ろ足に生々しい傷を負ったものがいました。次々と子離れが進むこの時期、発情したメスと交尾すべく水面下で熾烈な争いが繰り広げられていることを匂わせています。そんな彼らのバトルを見てみたいような、そうでもないような…。
 6月の沖合はサケ・マスの流し網が入って航行しづらいので、コースは通常と違って沿岸寄りになります。そのコースで去年は成鳥を含む3羽のエトピリカを確認しましたが、今年も5羽前後のウトウと一緒に飛ぶ成鳥のエトピリカを観察できました。繁殖に適した場所を探して彷徨っている鳥は、沖合に多い若鳥とは異なり、意外と沿岸域に分布する可能性が見えてきました。視界も回復してきた後半、2羽のケイマフリ成鳥が舳先をかすめるように飛んで行きました。沿岸性の強い本種は、特に繁殖期は岸近くでギンポやカジカを捕えていることが多く、岬調査や沿岸調査では記録されても、最も近い陸地から5,6km地点での確認は比較的珍しいといえます。この時期に2羽で行動していたということは今年は繁殖せず(もしくは失敗して)、より良い場所を探していたのかもしれません。エトピリカやケイマフリのような、繁殖地が衰退もしくは消滅した種類では、繁殖地での誘致やモニタリングと同時に周辺海域への飛来状況を把握しながら保護対策を進めることが必要で、沖合調査の意義の一つはそこにあります。


ウトウ(夏羽)の飛翔
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霧の中のゼニガタアザラシ・オス成獣
後肢の新鮮な傷から出血している。
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(2013年8月   千嶋 淳)


*本調査は地球環境基金の助成を得て、NPO法人エトピリカ基金が実施しているもの



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