鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

暑かった八月

2007-09-07 01:55:03 | 鳥・夏
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All Photos by Chishima,J.
水浴中のカワラヒワ 2007年8月 北海道十勝郡浦幌町)


 この八月は本当に暑かった。日中野外に出れば汗が噴出し、夜は寝苦しさを少しでも紛らわそうと煽る焼酎のロックのために、毎日氷を買っていた気がする。どれだけ暑かったのだろうと思い、気象庁のホームページで調べてみた。その結果、帯広では最高気温30℃以上の真夏日が10日、最高気温25℃以上の夏日が17日もあった。月の9割が25℃以上で、そのまた3分の1は真夏日だったのだから、暑くない訳がない。当然冷房など無いので非常に過ごしにくかったが、今年12歳になる我が家の老犬は人間以上に辛そうだった。そういえば、野外で出会った鳥たちもこの暑さには閉口しているようだった。

 と書くともっともらしいが、暑い時、鳥は実際には口を閉ざすことなく、むしろ開いている。これは口を開くことによって口中から水分を蒸発させ、体温を下げるためで、汗をかかない鳥にとっては重要な体温調節の手法である。イヌがやはり暑い日に口を開いてハアハアしているのと同じことだ。


暑さに口を開くシマセンニュウ
2007年6月 北海道帯広市
スズメなどでは、北海道の個体は東京の個体よりも、より低い温度で口を開くらしい。暑さに弱いのだろうか?
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                  *
 小さな川が海に流れ込む、その浜辺に数百羽のウミネコとオオセグロカモメが屯していた。カモメたちの多くは浜で休息しているが、そのうちの一部は河口部分にやって来て、水面に飛び込んでは威勢よく水浴びをしている。


カモメ類群れる河口・海岸(ウミネコオオセグロカモメ
2007年8月 北海道十勝郡浦幌町
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 鳥類にとっての生命線ともいえる羽毛を清潔に保つための水浴は、真冬の最高気温が-10℃を切るような日にも決して欠かされることは無く、そうした日の水浴びは見ている方が寒くなるものだが、今日の炎天下での、豪快に水飛沫を上げながらの水浴は羨ましさすら覚える。おそらく、羽毛のメンテナンスに止まらず、体温調節の面でも重要な役割を果たしているのではないだろうか。
しばらく見ていると、河口部で水と戯れているのは一部個体のように見えても、実は入れ替わり立ち代り、多くの個体が訪れていることがわかる。(8月13日14時 帯広の最高気温33.9℃)


豪快な水浴び(ウミネコ
2007年8月 北海道十勝郡浦幌町
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                  *
 今日も暑くなりそうだ。午前8時前だというのに、アオサギの幼鳥が河原で翼を開いて日光浴をしている事実がそれを物語っている。あと2、3時間したら、暑すぎて日光浴どころではなくなるに違いない。


日光浴(アオサギ
2007年8月 北海道中川郡幕別町
アオサギのほか、カワウやトビ等がこの姿勢での日光浴(と思われる行動)を行うのを見たことがある。
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 川岸の崖にあるショウドウツバメのコロニーを、半月ぶりに訪れた。7月半ばから始まった巣立ちも、いまやかなりの巣で済んで集合住宅は空きが多いが、まだ子育て中の巣では雛が巣の縁に顔を出し、口を開けて喘いでいる。きっと土中の巣は外界以上の暑さなのだろう。


ショウドウツバメのコロニー
2007年6月 北海道十勝管内
崖の上部に開いた多数の穴が彼らのマイホーム。川岸のほか石切り場や土取り場にもコロニーを作ることがある。
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 一足先に巣立った幼鳥たちが、コロニーに面した河原に群れている。乾燥した砂や礫から成る河原とその周囲は、午前9時の今で既に30℃を超えているだろう。灼熱という言葉がこれほど似合う景色も無い。それが証拠に幼鳥たちは皆、大きな口を開けて暑さを凌ごうとしている。


灼熱の中で(ショウドウツバメ
2007年8月 北海道十勝管内
河原で休む一群の上を、別の群れが通り過ぎる。
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 この猛暑をやり過ごしたら、南への旅立ちも近い。その旅路は、幼鳥たちにはあまりに過酷なものとなるだろう。群馬にいた頃、田んぼの畔で1羽のショウドウツバメの幼鳥を拾ったことがある。まだ生きていたが、私が拾い上げても抵抗する力も無く、ものの10分ほどでこと切れた。外傷は無く、胸の竜骨突起が露骨にわかるくらいだったから、今にして思えば餓死だったのだろう。そんな過酷な旅を2回、無事に切り抜けてきたもののみが、来年ここで繁殖することになる。(8月22日 帯広の最高気温32.8℃)


ショウドウツバメの幼鳥
2007年8月 北海道十勝管内
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                  *
 9月に入って残暑がしばらく続くのかと思いきや、3日前は最高気温が15℃程度の肌寒い一日で、久しぶりに焼酎の飲み方をロックからお湯割りに変えた。かと思うと翌日は30℃に手が届きそうな猛暑で、シギの姿を求めて出かけた海岸をふらふらになりながら歩いていた。こんなことを繰り返しながら、徐々に秋が深まってゆくのだろう。今日、海岸からヒシクイ初飛来の報が届いた。


トウネンの小群
2007年9月 北海道十勝郡浦幌町
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(2007年9月6日   千嶋 淳)