
All Photos by Chishima, J.
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アホウドリ若鳥 以下すべて 2014年6月 北海道十勝沖)
この半月ほど、蝦夷地には無いはずの梅雨のような雨天・曇天続きでしたが、当日は雲間から青空の覗く絶好のコンディションの下、午前6時半に出港しました。例年この時期に多いウトウやハイイロミズナギドリは散見されるものの、やや少なめでした。海水温が高い7月以降に多くなるクロアシアホウドリやマンボウも所々で見られ、春には30年ぶりの低温と言われた道東太平洋の海水温も上がって来たのでしょうか。
そんなことを考えながら水深300m付近で停船すると、1羽また1羽とコアホウドリやクロアシアホウドリ、フルマカモメなどが群がり始めました。これらの海鳥は沖合で操業中の漁船から投棄される雑魚やアラを日常的に食べているため、停船・減速している船があると集まって来るようです。グライダーのような翼を広げ、脚を大きく突き出して着水して来るアホウドリ類の嘴は鮮やかなピンク色。アホウドリです!!顔が少し白くなり始めた若鳥で、クロアシと並ぶと色あいは似ているものの、体や嘴の大きさの違いは歴然。甲板の興奮も最高潮に達しているともう1羽、全身黒色で嘴のみ鮮やかなピンク色の、今年生まれの幼鳥も現れ、本調査では初の複数羽のアホウドリの出現に興奮は熱狂へと変わりました。何しろ、北半球で繁殖するアホウドリ類3種が手の届きそうな距離で一堂に会しているのですから、熱狂するなというのが無理な話です。本調査での出現は2011年11月以来、およそ3年ぶりでしたが霧多布や羅臼など、道東海域での記録は近年増えており、個体数の回復を反映したものでしょう。
アホウドリ類3種
左が
コアホウドリ、右が
アホウドリ幼鳥でその奥が
クロアシアホウドリ)
クロアシアホウドリとアホウドリ
普段大きいはずのクロアシが小さく見える!!
数羽のアホウドリ類が泡のようなものに群がって突いていると思ったら、「泡」の正体は大きなマンボウでした。体表面に付着した寄生虫やゴミを食べていたのでしょうか。このような、なかなか垣間見れない海鳥の生態を目の当たりにできるのも海上調査の魅力の一つです。
複路では、調査に何回も参加している若者たちが舳先での調査を担当してくれました。最初に乗船した時には識別や発見にも苦労していた彼らが、淡々と調査をこなす姿は非常に頼もしいものでした。珍しい鳥や海獣との出会いもさることながら、こうした瞬間に地道な調査を続けて来た嬉しさ・やりがいを感じます。
下船後は例によってホッケフライや煮ツブ、タコ刺などの魚介類を頂きながら歓談し、正午をだいぶ回った頃、解散しました。参加・協力いただいた皆様、どうもありがとうございました。来月にはカンムリウミスズメも十勝沖まで到達していることでしょう。また、前日の20日夕には帯広市の十勝川インフォーメーションセンターにて、これまでの上映会を行い、海鳥や調査風景など100枚ほどの写真を映写させていただきました。こちらにも参加いただいた方々に感謝いたします。
確認種:シノリガモ クロガモ キジバト シロエリオオハム コアホウドリ クロアシアホウドリ アホウドリ フルマカモメ ハイイロミズナギドリ ハシボソミズナギドリ アカアシミズナギドリ ヒメウ カワウ ウミウ アカエリヒレアシシギ ウミネコ オオセグロカモメ ウミガラスsp. ウトウ ヒバリ イワツバメ ハシブトガラス
海獣類その他:イシイルカ マンボウ
(2014年6月22日 千嶋 淳)
*十勝沖調査は、
NPO法人日本野鳥の会十勝支部、
漂着アザラシの会、浦幌野鳥倶楽部が連携して行っているものです。参加を希望される方はメール等でご連絡下さい。