tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

マネー市場の活動に追いつかない経済政策

2024年06月25日 15時11分04秒 | 経済

このブログではこのところ、アメリカの金利政策のおかげで苦労する日本経済の姿に触れてきています。今回は少しはっきりとさせてみようと思います。

アメリカが賃金インフレを起こし、インフレの進行を懸念したFRBが政策金利の引き上げを行いました。政策金利を引き上げますと、マネーは金利の高い所に動きますからドルが買われ、ゼロ金利の日本ではドル債などの投資が増えて、円は売られ円安になります。

アメリカは、これは金融政策の結果で、「為替介入ではない」という立場で、円安は日本の事情と意に介しません。

日本では、輸出産業は円安差益で利益が増えますからいいですし、今まで海外に売れなかったものも競争力がついて、海外に売れるようになるというメリットもありますが、日本は無資源国ですから海外から買う資源や穀物などの値段が上がって、それが消費者物価指数を押し上げます。  

折しも日本では賃金上昇率が低いので、消費者物価指数が上がると国民生活が苦しくなるという事で、政府も国民も心配します。

政府は、ゼロ金利で国債残高には無神経ですから、国債を原資にして、輸入産業には補助金、国民には生活援助金と相変わらずのバラマキ政策で人気取りに走ります。今の日本はこんな状態で、これではでは将来が案じられるという所でしょう。

ここで問題になることが大きく2つあるように思います。①円高差益と円高差損が同時に起きますが、この問題の合理的解決策がない、②基軸通貨国が政策金利を動かしたとき、それによる為替レートの変動を受けた場合どう対処するか政策がない、の2つです。

  • の円レートが変動した場合に、輸出産業と輸入産業で、逆の立場で差益と差損が出るという問題は、企業努力は全く関係がなく、基軸通貨国の都合で起きるのですが、アメリカに文句を言うことはできないでしょうから、国内で解決しなければなりません。

プラザ合意で円高になったときは、政府はバブルを起こして景気を保とうとし、一時的に成功しましたが、バブル崩壊で馬脚が現れ、利益の出ない輸出産業は海外に移転するなど、その調整に30年かかった(30年不況)のが実態でしょう。

  • の実例はリーマンショックでのアメリカのゼロ金利政策で日本の円高($1=80円)と今回のインフレ対応の金利引き上げによる円安($1=160円)でしょう。

リーマンショックの円高では数年遅れて、日本もゼロ金利政策をとって脱出しました。遅れたっ数年間、日本経済は瀕死の状態でした。

今回のアメリカの政策金利引き上げによる急激な円安に対しては、二回ほど為替介入してイエレン財務長官にやんわりと注意されています。日銀はゼロ金利をやめれば即効性があるという事は解っているのでしょうが、借金まみれの政府は金利引き上げにはマッタでしょう。労使にも動きはありません。

第一次石油危機の時は、政府はさておき、労使が立ち上がってインフレからスタグフレーションへの道を遮断し、欧米主要国に先駆けて安定成長路線を確保し、ジャパンアズナンバーワンの名をほしいままにした実績がありますが、誰かが立ち上がらなければならないのではないでしょうか。

客観的に見れば日銀でしょうか。思い切って金利を引き上げれば、円安は止まり、輸入物価の上昇も止まり、物価は安定し実質賃金は上昇に転じ、国民の貯蓄には金利がつくという効果まで期待できます。

輸出部門の円安差益は消えても、輸出産業は頑張っていくでしょう。借金まみれの政府は困るかもしれませんが、バラマキも必要なくなるでしょう。(影の声:バブル崩壊の後に比べれば何てことないですね)

多分日本の労使は、新しい環境に早期に適応し、家計は環境変化を喜ぶでしょう。

本当の「骨太の政策」が必要な時が来ているような気がするところです。


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