tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「適正賃金」(第4回)、GDPの2大要素「消費支出」と「企業設備」

2024年03月29日 15時45分42秒 | 経済

経済成長の予測や計画には本格的に言えば、日本経済のマクロモデルが必要なのでしょう。しかし現実の世界ではGDPの大部分を占める「民間最終消費費支出」と「民間企業設備」を見ていけば、経済成長の予想や計画はおおむね見当がつくという事のようです。

その他民間需要では民間住宅があり、高度成長の頃はこれが経済成長の指標のようだったこともありますが、今は湾岸にマンションが沢山出来てもそれほどの影響はないようです。

民間以外は「政府支出」(政府がどのくらい金を使ってくれるか)と「純輸出」(輸出-輸入)ですが、政府の支出は財源が限られていますし、輸出入は外国の事情で動きますから日本だけで計画するわけにはいきません。

結局、日本経済の計画を立てるとすれば、民間の消費支出と企業設備をどうするかという事が決定的な要素になってくるという事でしょう。

<民間消費支出>

これは決定的に賃金決定の影響を受けるものです。年金や生活補助、地代・家賃・利息・配当などのいわゆる不労所得は日本では少額ですし、GDPに影響するような変化はありません。

最近は株価上昇でキャピタルゲインが増えていますが、株式は売らなければカネは使えないし、売り時を間違えれば株価は下がります。

つまり、年々の賃金上昇がどのくらいあるかで、民間消費支出は枠が決まります。しかし賃金上昇はそのまま消費支出にはつながりません。これは日本特有なのかもしれませんが、「平均消費性向」が曲者なのです。

平均消費性向は長期には低下傾向ですが、コロナ禍で大きく下げ、2022年度の実質経済成長率マイナス3.9%の元凶になっています。その後回復上昇中ですので、その勢いを利用すれば、賃金上昇がより効果的に経済成長を支えるでしょう。

平均消費性向が趨勢的に下がって来ているのは、年金財政問題からの老後不安、賃金が上がらない事から若年層にまで波及した将来不安に備える貯蓄指向の高まりでしょう。今後は年々賃金が上がるという情況が生れれば低下は止まり上昇の可能性も出て来るのではないかというのが過去のトレンドから推定されます。

<民間企業設備>

紙数が限られるので民間企業設備については、これから日本は本格的に頑張るだろうという所にとどめますが、企業の投資資金は賃金上昇との裏腹の関係です。幸い今年の場合は賃上げで投資資金に支障がないから「満額回答」が続出したのでしょう。今後は適正な賃金上昇と企業の設備投資資金の充実の関係は、労使間の最大の問題になるでしょう。

これからの賃金決定の規範は、労使が共に望む経済成長率(数値目標)の実現に最適な労使の分配関係、望ましい経済成長率(目標)実現を可能にする労使のwin=winの関係に立つ春闘の「適正賃金」決定でしょう。

政府は必要に応じて補完の役割を果すことが重要です。そのための国家予算を、不要不急なものに無駄遣いしない事を願うところです。

今回では終わりになりませんでしたので、賃金決定とインフレの関係、さらに為替レートの変化と賃金決定の関係を整理して終わりたいと思っています。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿