tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

科学技術立国は問題含みの日本

2023年05月23日 14時25分01秒 | 科学技術
岸田内閣のスローガンの1つに「科学技術立国」があったと思います。

もともと人間以外に殆ど資源のない日本は、人間が頭を働かせ体を動かして付加価値(GDP)を稼ぎ出さなければならない、人間の働きに頼らなければ成り立たない国という事になっているのです。

そしてこれから必要な人間の働きというおは、「ものづくり」から「高度技術の開発」に進んで行かなければならない時代に入っています。

その日本で今、残念な現実が起きていると今朝の朝日新聞が心配しています。
事は「働き方改革」にも関係しますが、大学や研究機関などの研究者の雇用について10年という期間雇用を定め、期間雇用で10年勤めたら「無期雇用」にしなければならないという雇用制度(2013年4月、改正労働契約法)についてです。

これは10年研究を続けていれば、無期雇用にしなければならないと「雇用の安定」を推進するための法制度のはずです。
然し、これを逆用、10年の手前で雇用打ち切れば、無期雇用にしないで済ますという動きが起き、文科省の調査では全国の大学や研究機関で数千人が対象という状況とのことです。

なぜこんなことが起きるのでしょうか。
大学や研究機関も一種の企業体ですから無期雇用(正規社員に相当)にすると人件費がかさむ、研究開発という仕事は、何時成果が出るか解らない事も当然多いので、固定費を増やしたくないという経営上の都合からというのがまず考えられるところです。

この問題に関しては、大学や研究機関がひどいという見方も在るでしょう。また、研究開発が進まなければ仕方ないという意見もあるでしょう。

然し、成果がいつ出るか解らない研究開発という問題の性格を考えれば、問題の本質は、もう少し違った所にあると考えるのが妥当ではないでしょうか。
  
それは、研究開発立国を掲げる国が、研究会発にどれだけの予算を組んでいるかという、「研究開発にはカネがかかる」という基本問題を考えなければならないという視点です。

総務省の「科学技術研究調査」(2021年度)を見ますと、「科学技術研究費の総額は2年ぶりに増加、GDPに占める比率は前年度比0.01%の上昇」と研究開発費そのものの不足という実態を垣間見るような説明が書かれています。

日本のGDPもリーマンショック以来ほとんど伸びていませんが、GDPに占める科学技術研究費の割合は2008年度3.64%、2021年度3.59%で、下がっているのです。
  
結局、研究者の雇用問題の本質は、雇用する大学や研究機関の財政難で、その結果、研究という長い時間を掛けなければ成果が解らない仕事の性格と雇用契約の関係が、単純に当面のコスト問題に切り替っているので上手く行かないという事のようです。

これに対しては、成果が出るかでないか解らないものにカネをつぎ込むのは不適切という意見もあるかもしれませんが、コロナが禍が来て、日本がワクチン研究後進国だと解ったように、科学技術立国日本の研究開発は軽視されて来ているのです。

科学技術研究への手抜きは、こんなところにも影響が出ていますと今朝の朝日新聞では、この分野ではよく指摘される「引用数の多い研究論文のランキング」を出しています。

それによりますと、上位国と日本の順位は、
1998-2000年 ①米 ②英 ③独 ④日
2008-2010年 ①米 ②中 ③英 ④独 ⑤仏 ⑥日
2018-2020年 ①中 ②米 ③英 ⑤独 ⑥伊 ・・・⑪ 韓 ⑫日
となっています。
こんなところに結果が出ているというのは、何か情けないですね。
  

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