tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2017上期決算好調、企業は?

2017年11月12日 12時05分02秒 | 経営
2017上期決算好調、企業は?
 今年9月期の上場企業の決算が好調のようです。アメリカが金融正常化を目指して金利引き上げに動く一方、日銀は異次元金融緩和を続けるという事で、円安傾向が続くことの効果もあるようです。

 トヨタの決算発表では、上期の純利益が1兆円を超え、来年3月期の年間純利益は2兆2500億円を予想しているようです。決算発表での「これは実力ではありません、予想より円安に振れた結果です」といったコメントが印象的でした。

 2008年、2009年とリーマンショックによって大打撃を受けた日本企業の業績も着実に向上、リーマンショック前、「いざなぎ越え」のピークを回復してきています。
 財務省の「法人企業統計年報」で見ますと全産業(除金融保険)の純利益は

 ・2006年度:28.1兆円 2008年度:7.4兆円 2015年度:41.8兆円
と急激な落ち込みから次第に回復しています。
 その後は速報性のある法人企業統計季報で「経常利益」見ますと
 ・2015年度第4四半期:17.4兆円 2017年度第1四半期:22.4兆円
と29%増加しています。
 純利益も同率で伸びるとは限りませんが、利益の順調な回復の傾向は明らかです。

 以下、法人企業統計年報の確定値で2006年度と2015年度の経営指標を比較してみますと、こんな状況です。
・売上高:1566兆円 ⇒ 1432兆円
・総資本:1390兆円 ⇒ 1592兆円
・自己資本:453兆円 ⇒ 636兆円
・現金預金:147兆円 ⇒ 200兆円
・付加価値:291兆円 ⇒ 294兆円 
・人件費:201兆円 ⇒ 198兆円

 特徴的なのは、売上高は2015年度段階では、リーマン前の水準に回復していないのです。しかし総資本は202兆円増加し、その太宗は自己資本の183兆円の増加です。そして最も流動性の高い現金預金が53兆円増えています。

 リーマンショックで資金繰りの苦労を骨身にしみて味わった企業は、こうしたショック対応に注力したのでしょう。

 しかし、2015年度まででは、付加価値はほとんど増えていません。そして人件費の総額は減っています。異常なまでの企業の防衛志向、その皺寄せを受けた人件費(賃金)といった構図が明らかです。非正規従業員の増加もその結果でしょう。

 こうした極端までの企業のショック対応力強化(企業防衛指向)はいつまで続くのでしょうか。2015年度以降の1年半で、経営数字はさらに改善しているでしょう。

 この所の国際政治情勢を見ていますと、米中始め、アジア太平洋諸国も、勿論ヨーロッパも経済の安定を熱望しているように思われます。アメリカの自国中心は目立ちますが、日本企業の企業防衛指向も、そろそろ落ち着いてくるのではないかと感じるこの所の企業決算です。

 日本企業が、「これ以上防衛的になる必要もないのでは」と考えたとき、日本経済の進み方に、変化が起きるのではないでしょうか。
 何か、そろそろかな、という感じもするのですが、企業心理はどうなのでしょうか。

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