tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経済安全保暲と国内生産、人材活用

2022年05月11日 15時24分12秒 | 科学技術
経済安全保暲法案は今日、成立の予定だそうです。

コロなというパンデミック、米中経済摩擦、そしてロシアの暴挙で対ロシア経済制裁と世界経済が混乱する中で、世界の平和と安定を前提に進行していた経済活動の国際分業、具体的にはサプライチェーンの国際化が、あちこちで不具合を生じています。

日本の場合も、安価な労働力や、自前の技術開発の手間を省こうなどなど、より安いコストと安易な経済運営を狙ったサプライチェーンの海外展開は、一転して生産の停滞を引き起こす事になったのです。

こうして状況変化により、出来るだけ国内で生産が完結するように心掛けようというのが経済安全保障の趣旨でしょう。
サプライチェーン強化、サイバー攻撃防御、官民協力で高度技術、高度な武器の特許非公開が4本柱だそうですが、要するに「自国で出来るだけ」というのが基本精神です。

国際関係が不安定になって、まさに「泥棒を見て縄をなう」ような面もないではないですが、これからの国際関係は益々不安定になると考えれば必要なるのでしょう。

然し、こうした、世界経済の混乱に対処するための「経済安全保障」という側面だけでは
ない、より本質的な見方も同時にしておく必要があるのではないでしょうか。

というのは、この所の日本の産業政策、産業企業の態度は、経済発展の本筋を外れ「コストの安さ」を求めることに重点を置き過ぎたという問題があったからです。

30年に及ぶ円高不況の中で、低コストを求め海外投資、国内空洞化は必然だった面もありますが、2013年以来、円高が解消しても、その惰性が続いていたことは反省に値するでしょう。

これは官民に共通する問題で、政府も企業も研究開発投資より海外展開に力を注いで、国内の技術開発は、韓国や中国に後れを取ってしまったことは明らかです。

これは同時に、国内の熟練した高度技術者の処遇にも関わってきます。賃金が高いというだけで高度熟練の軽視し、賃金カットや早期退職などで熟練技術の使い捨てに走り、熟練技術者の海外流出を招くといった事にもつながったようです。

こういう技術開発や保有する高度熟練技術を大切にしない傾向が技術立国こそが生きる道である日本の国力の低下を齎したことは否定できないでしょう。

今回の産業安全保障法案の成立が、自由圏対独裁国という、新たに生まれつつある地球的対立抗争に備えるためだけのものになるのか、日本の産業経済をその基盤から改めて活性化する役割をも果たし得るのかは、新法の運用次第でしょう。

エネルギーをはじめ資源、食糧についても海外依存が不可避の日本です。基本は世界の平和と安定を目指し、世界人類の進歩のための技術の研究開発において先進的立場を確立し、世界に貢献出来る日本であるための新法の活用を心がけてほしいものです。

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