tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

円安なのに輸出が増えない、貿易赤字が心配?

2014年12月10日 14時55分10秒 | 経済
円安なのに輸出が増えない、貿易赤字が心配?
 3つ目の問題は、円安になれば輸出が増えるはずなのに、思うように輸出が増えないではないか、貿易赤字は二十数か月連続赤字、円安で輸出がどんどん伸びるような気配は全くない、輸出企業は円安で利益が増えても、円安が止まれば為替差益はなくなる。これからの景気回復はどうなるか心配、といったことでしょうか。

 確かにこんなに貿易赤字が続くのは予想外かもしれません。原因として指摘されているのは、原発停止によるLNG、原油の輸入増加と価格の高騰、輸出企業は、これまでの円高で海外に生産拠点を移し海外生産に切り替えている。スマホなどアジア製品の性能向上、などでしょう。

 原発問題は、日本のエネルギー源の転換問題で、長期の対応が必要でしょう。
 生産拠点の海外展開の問題は、20年も続いた円高に日本企業が必死で対応した結果ですから、国内生産化を含む新環境への対応には時間がかかるでしょう。企業としては、また円高時代が来たら、という不安感も払拭できないということもあります。
 アジア諸国との競合は、今後もいろいろな面で起きるでしょう。

 これらは失われた20年のGDPが縮小する中で、人材開発、技術革新、新規投資への支出を削らなければならなかった日本経済が、どん底から再起し、新たに世界市場に向かって挑戦すべき課題です。
 アベノミクスで円安にしたからすぐ解決するような問題ではありません。「3本の矢ですぐに解決」などと国民に思わせたのが、そもそも安易に過ぎたようです。

 しかし有難いことに、今の日本経済にも救いがあります。それは、貿易収支は赤字でも経常収支は黒字だということです。一口で言えば、海外展開した日本企業の収益が、貿易赤字を超える大きさで、国際的には日本は健全な黒字国ということです。
 因みに、この10月の経常収支は8000億円の黒、このペースで行けば年間10兆円の黒字国です。

 冗談「半分」で言えば、この上、貿易収支も黒字だったら、日本は超大幅黒字国で、またプラザ同意やリーマンンショックのように、円高に押し込められるかもしれません。

 20年の円高不況は日本経済に大きな爪痕を残しました。非正規社員の著増、格差社会化。教育訓練・人材育成費用削減による現場力の低下、単純ミスの増加、メンタルヘルス問題の多発。無職者の犯罪の増加、技術革新の遅れ、対外援助予算の削減、などなど。

 マネー資本主義跋扈の中で、円高を避けつつ、日本経済の再活性化を実現し、科学技術開発で世界をリードし、経済行動、社会活動における人間の在り方としても世界の規範となるような日本を再び目指すために、企業も、働く人たちも、それらを含めて日本全体が、改めて本格的な取り組みを始めたのが「今」というところではないでしょうか。

 先は長いのです。選挙の論戦も結構ですが、問題の本質を、人気取りや政争中心ではなく、日本の現状を客観的、論理的に分析確認し、進むべき最適な道の探求のために国民みんなで本格的に取り組まなければならない時なのではないでしょうか。



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