tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

不安感と格差社会化の中では消費は伸びない

2015年11月06日 09時35分22秒 | 経済
不安感と格差社会化の中では消費は伸びない
 円安で日本への観光客は急激に増えています。そして、観光客は一様に日本はいい国だ、人々は礼儀正しく、親切で、どこに行っても清潔、観光資源は豊富だし、商品の質は高く値段も高くない、日本食は美味しいと言います。

 これなら、Far east(東のはすれ=極東)でも行ってみたくなるのでしょうか。
 近隣のアジア諸国からは、まさに「買い物ツアー」、爆買いが日本の消費を支えるという構図が見えます。
 
 しかし日本人の消費は伸びません。先に述べましたように1980年代には可処分所得の79パーセントほどを消費していた日本人が、今は73パーセントしか使わず残りは貯蓄です。消費不振の原因は明らかです。

 「失われた20年」という長かった不況のせいで日本人の生活が過度に防衛的になったということはあるかもしれませんが、日銀の政策変更で景気が改善してそろそろ3年です。

 最近の職安業務統計では有効求人倍率はこの9月、1.24倍(季節調整済み)になり23年8ヶ月ぶりの高水準だそうです。
 雇用の安定が消費につながることは経験的にも知られていますから、求人倍率上昇=雇用安定で消費が増えるかと思いますが、国民の財布の紐はなかなか緩みません。

 何か今回は違うようです。何が違うのか考えてみますと、前回書きました政府への不信からくる将来への不安もあるのかもしれませんが、有効求人倍率の高さが雇用の安定に必ずしも繋がっていないのではいかという点に気が付きます。

 というのは正規社員の有効求人倍率は大幅に低くて0.77倍です。求人倍率を押し上げているのは非正規の求人が圧倒的に多いためという実態があります。結果的に、いつもこのブログが望んでいる雇用の中での正規社員の比率の上昇は未だに見られないのが実態です。

 企業が正社員を増やしたくないというのも、経済の先行きへの不安感からでしょうか。かつての日本企業は従業員の身分差別をなくし、全員を「社員」とすることから戦後の日本経済の復興と高度成長を実現しています。

 何れ長くは勤められない非正規社員、正社員より大幅に低い賃金水準、これでは「雇用の安定」とは言えないようです。
 こうして、単に求人倍率の数字だけでは示されない雇用問題があるのでしょう。
 さらに言えば、かつては雇用の安定を第一義と考えていた大企業でも、雇用の削減は日常茶飯、「大企業に就職したから安心などと思うなよ」と言われる時代です。

 正社員でも雇用が不安定、さらに正規、非正規の格差があれば、日本経済を支える勤労者世帯の中でも、不安感や格差化が進みます。まずは消費よりも貯蓄でしょう。
 これでは消費支出を支える「分厚い中間層」などという政府の口癖は実現しそうもありません。


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