tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「消費より貯蓄」の心理学

2022年01月24日 14時42分23秒 | 文化社会
日本人は縄文時代の昔から、自然に対して強い畏敬の念を持っていたようです。

地学的、気候的などの諸条件から、日本列島の自然はそこに住む人たちに豊かな自然の恵みをもたらしてくれるのと同時に、台風や地震といった人間生活に壊滅的にな破壊をもたらすこともあると理解し、それに対応する生活の在り方を創ってきたのでしょう。

その中で、日本人が学んで来たことは、豊かな自然によってもたらされる収穫物を、予期の出来ない自然災害に備えて備蓄することの重要性の認識だったのでしょう。

そして豊穣に感謝すると同時に、自然が穏やかであってくれることを願って自然を神とあがめ、自然への感謝と願いとを「祭り」で表して来ていたのではないでしょうか。

一万有余年の縄文の文化は、今の言葉でいえば、家族や集落の「SDGs」をいかに確実にするかという意味で、備蓄(貯蓄)の重要性を日本人に植え付けたのでしょう。

ところで、江戸時代には「江戸っ子は宵越しのカネは持たねえ」(つまり貯蓄ゼロ)などという言葉が流行ったようです。
気風(きっぷ)の良さを自慢したもので、「カネは腕に仕込んである」などと職人の技能の自慢に使われたのでしょう。

確かに「火事と喧嘩は江戸の花」だったそうですから、腕の良い職人はいつでも仕事には事欠かなかったのかもしれません。

しかし、これにはしっかり反論もあって「大工殺すにゃ 刃物は要らぬ 雨の三日も 降ればよい」と、これは都々逸です。

こんな日本の伝統文化の片鱗からも、日本人が、「今の生活」と「将来の生活」のバランスを伝統的に確り考えて来たことが知られるように思われます。

ところで話は現代に飛びますが、この所、日本経済は消費不振で悩んでいます。
老いも若きも、「宵越しの金は持たない」どころか、出来るだけカネは使わずに、将来のために貯蓄しましょうという事のようです。

先日書きましたようにこの2~3年で日本の個人貯蓄は200兆円(日本のGDPは550兆円)ぐらい増えたようですが、個人消費は落ち込むばかりです。

この異常な貯蓄志向を上述の話から分析しますと、もともと「今苦労しても、将来が良ければ」という性格が強い日本人が「将来が今より良くなることはなさそうだ」という環境に置かれた場合の行動パターン」ということがはっきり見えてくるのではないでしょうか
例えば今は、若い人達でも「雇用の安定に不安」「雇用があっても賃金が増えない不安」「退職後の社会保障や年金が不安」・・・と不安がいっぱいです。

多くの人が、日本経済の将来について「期待できない」という意識を持ち、「それならばどうするか」と考え、結論は「自助努力で何とかしよう」「将来不安、老後のために貯蓄」という心理状態になっているのでしょう。

「個人貯蓄は著増、個人消費支出は低迷」という日本経済の現状の背後にある多くの日本人の心理状態を、かつての日本のように「将来は明るい」に変えていくのには何が必要か。
これが今の日本のリーダーたちに与えられた最大の課題でしょう。

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