tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

金融システム劣化の一面:リスクは誰が

2016年07月15日 10時15分07秒 | 国際関係
金融システム劣化の一面:リスクは誰が
 少し前までは年金システムというのは確定給付型が当たり前でした。いくらいくら何年積み立てれば、毎月何円「定額」(何年間、あるいは終身)でもらえる(確定給付)というのが年金だと誰もが思っていました。
 
 ところが「確定拠出型」という言葉が聞かれるようになりました。そして今までのは「確定給付型」です、という説明になりました。
 確定拠出型は、拠出する金額は決まっているというのです。受け取りの方は?と聞けば、「それは運用次第です、給付の額は確定していません」ということで「だから確定拠出です」ということです。何か変ですね。

 それなら、拠出金額など決めないで、自分で出来る金額を適宜貯金すればいいでしょうということで、「じゃ、自分で貯金するのと同じじゃないですか」と言えば、「このシステムに乗せれば、税金の優遇があります」という返事が返ってきます。
 税金は政府が負けてくれるので、金融機関の方は、「運用は専門家がやります、その結果のリスクはお客様に取って頂きます」ということです。

 このところ、貯蓄商品の金融リスクは、だんだんと国や金融機関が取ってくれなくなり「頑張りますが、リスクはあなたが取ってください」ということになってきています( GPIFもそうですね)。
 ペイオフ制度で貯金は1000万円までしか保証しませんという国の方針から始まり年金の確定拠出型導入まで、貯蓄のリスクは国や金融機関から貯蓄する当人の方に移転してきます。「 確定利付きへの郷愁」を感じる方も多いでしょう。

 こうした形で、貯金をしても損するかもしれないということになると、一般家計、消費者はどうしても防衛的になります。利息もつかないのなら使ってしまえという人は少なく、リスクも考慮し、少しでも多く貯蓄を(タンス預金が一番安全?)ということになるのでしょう。結果は、 消費性向の低下、消費不振、経済成長鈍化です。

 こうした傾向はもともと金融システムが マネー資本主義化を進め、ギャンブル性を強め、実体経済を担う産業・企業の活動の支援という本来の役割から離れていったことにその端を発した面が大きいでしょう。

 ならば、金融システムが今一度、実体経済の成長支援にベースを置いた着実、堅実な経営に着目し、そうした産業(実業)の発展とともに、金融機関も発展していくという本来の在り方に回帰するところに、初めて将来展望が開けるということになるのではないでしょうか。

 実体経済の スムーズな活動の潤滑油という本来の役割を忘れ、道に迷った金融システム・金融機関が、実体経済と表裏一体、実体経済の発展に役立つものに回帰していくことから、健全な資本主義経済が取り戻されていく可能性が見えてくるように思うですが如何でしょうか。

 リーマンショック以来、マネー資本主義化への反省は徐々に進みつつあるように思います。産業や地域に密着し、リテール金融に徹することがベストという見方も復活しつつあるようです。
 カネでカネを稼ぐ派手な活動から、産業や地域経済にに密着した金融へ、金融機関、金融システムの見直しが必要でしょう。以下次回