tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本的経営の現実:ROEより健全な成長

2015年05月22日 10時15分31秒 | 政治
日本的経営の現実:ROEより健全な成長
 知の巨人とも言われる経営学の巨匠、P.ドラッカーが日本の企業社会を見、100年も続く企業が如何に多いかに驚嘆し、それが彼の経営学の1つの原点になっているということは何度か書かせて頂きました。

 企業は利益追求のための組織という極めて便宜的な説明が広く罷りとおる中で、企業活動とは人間が人間のためにやっているもので、原点はすべて人間にあるという最も基本的なところにドラッカーが気づいたのも、日本の企業、渋沢栄一など日本の経営者の在り方を見たからといわれます。

 日本では企業というのは基本的に人間集団だという認識が強く、人間が企業を育て、企業が人間を育てるという相互関係の連続で、企業も人間も成長し、個人を越えた人間集団に支えられて企業は永く存続し続けるというのが一般的だったのでしょう。

 私自身は、「企業は、人間が資本を活用して人間のために豊かさと快適さを創造する組織」と勝手に定義していますが、そのためには企業は永続して存続し、その時代・時代に合った「豊かさ」と「快適さ」を社会に提供し続けなければならないと考えています。

 今で言えば、豊かさとは「経済成長のある格差の少ない社会」、快適さとは「自然を破壊せず、自然と共生する社会」といったことになるのではないでしょうか。
 その実現の現場で大きな役割を果すのは企業で、成長しつつ存続し、技術開発と年々増加する付加価値(企業成長・経済成長)によって、豊かさと快適さを創り出さなければなりません。

 サボッたり休んだりしてはいけないようです。倒産などはもってのほかです。企業は人間が自分たちのために創り出したものですから、人間が頑張ってその目的達成のために努力しなければなりません。

 企業は「ゴーイング・コンサーン」といわれます。つまり、文字通り存続しなければならないのです。前回も、ROE論議の中で、リスクを取っても収益を高めた方がいいのかどうかを論じましたが、こうした論議が起きるのも、「企業の目的は利益」と単純化するマアネ―資本主義の影響でしょう。

 企業は人間社会が高度化するために必要な、もっと「多目的」な組織という捉え方をするとき、ROE、ROA論争などの本当の答えが出るのでしょう。