tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

新たなデフレ不況の入口に

2010年08月26日 18時01分15秒 | 経済
新たなデフレ不況の入口に
 円レートは、85円を割り込むのが常態になってしまったようです。総理が「90円台半ばが居心地がいい」といったのはなんだったのでしょうか。その後は何の意思表示もありません。
 一方、国際投機資本も、マーケットのあまりに急な動きに内心ビビッたのでしょうか、今は84円台に戻しています。
 
 政府、日銀の動きはと言いますと、結局は「注視する」という事に尽きるようです。かつて宮沢総理 が、回顧録の中で。プラザ合意後の円高について「あの時は毎日のように大幅な円高で大変困りました」と書いている「だけ」なのを思いだしてしまいます。

 今の日本産業の置かれている状況を見てみれば、「日本製は品質は高く信頼性は抜群だけれど、如何にせん、ちょっと値段が高すぎて」というのが実態でしょう。例えば、いよいよ輸出に本腰を入れ始めた「新幹線システム」などはその好例ではないでしょうか。
 
 今となっては「いざなぎ越え」の頃の$1=¥110~120なら、なんとでも出来たのに、と考える方も多いでしょう。再建に苦しんでいる日本航空などはその典型ではないでしょうか。

 今の85円前後は120円に比べれば40パーセント、110円に比べても29パーセントの円高です。ユーロは2008年には160円もしていましたからユーロ対比ではさらに大幅な円高です。

 円高になった分だけ、日本の国内コストは(物価も)上がったわけです。プラザ合意後の「失われた10年」の経験のように、この内外価格差が解消するまで日本はデフレ になります。
 日本が毎年1パーセントのデフレで、海外が平均で4パーセントのインフレとしても1年で格差縮小は5パーセント、30パーセントの内外価格差解消には6年かかります。

 これが、日本経済はこれから、デフレ不況が多少長期化すると考える理由です。日本経済の最大のコストである人件費中心のコストカットと企業の海外脱出が進まざるを得ないでしょう。

 しかしさらに問題があります。6年かけて内外価格差を解消できたとして、そのとき、「矢張り日本経済は強かった」ということで、$1=¥70になったら・・・・・。
 85円でも、経常黒字を出し続ける日本だったら、$1=¥70円になっても頑張って消費を切り詰め貯蓄をして経常黒字を出し続ける可能性はあります。そしてそのためには、企業は更なる海外脱出を進め、人件費を中心に、コストの切下げをするしかありません。

 そしてまたデフレ不況・・・・・。 日本人は、日本企業は、どこまで頑張ればいいのでしょうか。そこまでは行かないだろうという見方があれば、是非ご教示をいただきたいと思っています。